未来予測にレゴ®︎シリアスプレイ®︎を活用するとしたら(前編)
「未来予測」はなかなかに魅惑的なことばである。
もし何が起こるかを見通せたら、これほど社会で立ち回る上で有利なことはないからだ。
とはいえ、「未来なんて見通せない」という考え方も根強くある。何が正しいのだろう?と思いつつ、未来を予測する技術を教えてくれるという本を手に取って読んでみた。
未来の生まれ方
著者は「未来予測は可能」という立場にたちつつ、それを考えるための基本的な6つのステップをこの本で示している。
その6つのステップの妥当性は「どのようにして未来が生まれてくるか」ということ次第だが、著書ではそこまで明確にされていない。
そこで、ステップの背後にあるであろう「未来の生まれ方」に関する見方を以下のようにまとめておく(注:本の正確な要約ではなく、私なりの論理再構成がかなりはいっている)。
① 未来を予測するのに役立つ要素(ある技術とか思想とか)が現在には必ず存在する(著書では「シグナル」、「想定外のニューフェース」、「糸」などと表現されている)。
② それらの要素は複数、同時的に世界には存在しておりそれぞれが時間の中を流れている。
③ それは大きくなったり小さくなったり(研究、投資、ニーズ、政策、規制)、他のものと合流したり(統合的な新製品の登場)、分化したり(さらなる技術革新や副次的産物としての技術、分派した思想など)しながら時間の中を進んでいく。
④ それらのシグナルを育てるも潰すも、人間次第である。そして創造力をもつ人間が、その人間が欲する方に推し進めながら未来をつくる。
というところである。イメージであらわすと以下のような感じである(なんとなく伝わればいいなと思いつつ,,,)。
実はこのまとめ方は、社会科学(組織理論)の中で、ゴミ箱モデルと呼ばれるものとかなり重なっている。ゴミ箱モデルは、組織内外に関わらずイノベーションの発生を説明するモデルとして、現在でも有力な説明理論であると考えている。
上記のような「未来の生まれ方」を念頭に、著書では未来予測の6つのステップが紹介されている。しかし、その6つを支えている予測のためのコンセプトとフレームワークは紹介されているものの、本を読んだだけではなかなかすぐには使えない(この本の著者をコンサルとして雇え、ということだろうか)。
一方で、使えると感じる部分もある。それは、6つのステップのなかで、開放思考(考えるための材料出し)と集中思考(材料の絞り込み・発想の検証)の繰り返しをするという部分である(これは、いろいろなところで言われている新規アイデア創出のための基本的な考え方でもある。その意味で、新しい発見というより「やっぱりそうだよね」という感覚に近い)。
応用への手がかり(中間まとめ)
未来予測の技術において、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドが貢献できそうな部分はどこだろうか。以下に示すように、メソッドというよりレゴ®︎ブロックを使うことのメリットが前面に出る。
一つは、時間の流れのなかで、複数の要素が合流したり、分化したりするという部分を考える際のイメージを支えてくれる点である。
例えば、VR技術やドローン技術が、教育や宗教と合流するということを考えるとき、おそらく何らかの場面をイメージとして描くに違いない。パソコンが小型化して手のひらに収まる流れを考えるときも視覚的なイメージから思考が入っていくのではないだろうか。
ブロックを使った表現は、技術の使用場面やコンセプトを伝え、喚起させるのに強力な援軍となる。
もう一つは、ブロックで何かを表現するときは、開放思考(材料出し)に向いている。面白いもので、ある作品から、たった1個のブロックを加える・減らす・入れ替えるのでも、意味がかなり変わる印象を受けるからである。
未来の無限ともいえる可能性を掘り起こすためには(その可能性のうちの多くは葬り去られるものの)、ブロックでさまざまな表現の可能性を探る方法が非常に向いている。
今回は、未来予測のなかでレゴ®︎シリアスプレイ®︎がどこで使えるかを探ってきた。
実は、これを書きながら、その萌芽的な試みといえるものを、著者は(たまたま)過去に行っていたと気づいたので後編では、それについて書いてみたい。
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