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「多くの入り口を開けておく」こと〜ブロック遊びの観察から

 昨年末、子供たちのブロック遊びをじっくりと観察する機会があった。

 30人ほど観察できたが、子供たちの遊び方は実に多様だ。

 その中でも多かった遊び方は、ブロックに付随する「組み立て書」を見て作りたいものを選んで作っていくやり方。

 それと並んで多かったのが、「組み立て書」を見ずに、作りたいものを作っていくやり方。

 いずれの遊び方も、時間と共に、遊び方が分岐していく(どこかに研究とかありそう...)。

 どちらの遊び方がいいのだろうか、と見ながら考えていたのだが、それぞれ良さがある。

 「組み立て書」を使う遊びでは平面に描かれた指示を目の前の三次元のブロックに認識を転換して似たような色や形のブロックから当てはまるものを探して置いていく。なかなか見つからないブロックもあるが、忍耐強さを発揮して探す。見つかったときには顔がパアっと明るくなるのがいい。

 自由に作る遊びでは目の前のものから、作りたいもののイメージにふさわしいブロックを選び組み立てていく。イメージ通りにつくれているかときどき確認し、不満なら思い切って崩しながら、ふたたび試行錯誤で組み立て、満足度をあげていく。できあがったものを兄弟や保護者に見せて自慢する顔がいい。

 どちらも違う能力を使って遊んでおり、それぞれに子供にとっての良さがあるなーと見ていた。

 そんな中、自由に作っていた子供の横から、一人の保護者が声をかけた。

 「ほら、ここに組み立て書があるよ。この中から作ったら?」

 その子は「いらない」と小さく言い、再び自分の作業に没頭していた。

 はっとした。

 大事なのはどのような遊び方をするのがいいかではなくて、自分で「今回はどう遊ぶか」を定める、ということだ。自分が獲得したいことを自分で設定することで没頭状態(フロー)に入っていきやすくなる。

 そのためには、いろいろな遊び方の入り口が開いていることが大切だ。もし、一つの遊び方しか許容されなかったら、それをやろうと子供が思わなければ自発的に取り組まないだろう。

 「今から何をするか」を自分で決められるように、多くの入り口をあけておくことを学びの場づくりに組み込んでおければ、もっとそこに関わる参加者の学ぶ力を引き出せるだろう。

 自分の授業で振り返れば、ビジネス・プロジェクトを構想し実行する授業はそれに近いが、まだまだやれることはありそうだ。子供たちのブロック遊びに見られたような、入り口がたくさんあることで没頭につながる授業作りにチャレンジしていきたい。

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