レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで人々の「行動探求」を支援する(2)話し方としての行動探求

 ビル・トルバート著『行動探求』をもとに、行動しながら探求する(評価し、行動を調整する)ための方法を理解し、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使った支援の方法を考えていく。

 行動探求を行うときには、個人、チーム、組織というレベルがある。そのうち、まず個人が取り組めるものとして「話し方」がある

話し方の構成要素

 ビル・トルバートは「話し方」の構成要素を4つ挙げる。

①枠組み 話をする場の目的は何で、どのような問題に直面していて、どのような前提が共有されていて、どのような前提が共有されていないのかについて明確に述べること。

②主張 ある程度、抽象的に、行動のための選択肢や認識、感情、戦略をはっきりと主張すること。

③説明 主張に加えて具体的なストーリーなどを話し、相手により明確な動機と方向を与えること。

④問いかけ 相手から何かを学ぶために、相手に問いを投げかけること。

 すべての項目に共通するのは相互性を大事にすることである。
 そして、②主張と③説明においては、できるだけ相手にわかりやすく自分の見ていること感じていることを話すという点で相互性を確立する努力が必要であり、①枠組みと④問いかけにおいては、できるだけ創造的に相手の見解を受け入れるという点で相互性を確立する努力することが必要となる。

行動探求の「話し方」を学ぶ

 この「話し方」を利用して行動探求の力をつけるためのポイントは、自分の会話の中から、自分も意識していない①枠組みの要素を見つけ出すことである。

 そのため、行動探求のグループなどを作って会話を分析する方法が本書では推奨されている。
 具体的には、会話の記録をとり、そこで(A)言っていること(B)発言ごとの裏にある感情とそこから生まれる思考も書き出してみるというものである。この(A)と(B)の間に差分があるならば、それを生み出しているのが、「自分も意識できていない①枠組みの要素」ということになる。

 これは「左側の台詞」と呼ばれるワークとして知られている。
 「左側の台詞」のワークについては、組織心理学の権威、クリス・アージリスが積極的に使っていたものである。

 また、ピーター・センゲ『学習する組織』の「メンタル・モデル」の議論の中でも紹介されている。少し詳しく知りたい方のために、山根氏が書かれたNoteの解説記事も貼っておくことにする。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使って「話し方」の「行動探求の力を高めることを支援する

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドは、言葉にしにくい感情や認識をブロックのモデルで可視化して語ることができる点が特徴の一つである。

 それを活かして考えられるのは、「話し方」の4つの構成要素を、より明確に語ることができることを目指すワークである。

 「今、自分が向かい合っている問題やテーマとその前提(①枠組み)」「それに対する自分の主張(②主張)」「自分の主張の正しさを説明するストーリー(③説明)」「相手はどのように振る舞うべきなのか(④問いかけ)」についてのモデルを作ってもらい、その説明をしてみる、というものである。
 作る際には、②~④を先に作り、そこから最も言語化しにくい①について作るというように順番を決めて少しずつ作ってもらう方法もある。

 上記のように、要素ごとに作らず、全体をまとめて一つのモデルを作ってもらった後(「今私がどのような問題にあたっており、それに対してどうふるまっているか」という感じになるだろう)、①~④の各要素を抽出してみる方法もある。

 このような手間をかけず、直接、文章で書き出していく方法も考えられ、そちらの方がより簡便ではないかとの意見もあるかもしれない。
 いきなり書く方法が有効なのは、当事者が問題の全体像、それに対する自分の感情や価値観などを言葉でしっかりと把握できる場合である。その自信がないのであれば、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使う価値はあると思われる。

 一方で「左側の台詞」のように、会話の分析などをする場合には、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドはあまり向かないと考えられる(より正確に言えば、会話の流れをモデルで表現する手法が確立されていない)。

 このレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使った方法について、今回は「考えられる」という表現を使ったのは、この記事を書いている私が実際に上記のことを試したことがないからである。あくまで、こうすればうまく行くのでは?という私のアイデアであることに気を付けてほしい。
 もちろん、これについては、いつか機会を見つけてその効果を試してみたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?