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組織の変化対応力を高める「シンプルな指針」を策定する〜レゴ®️シリアスプレイ®️メソッドを使って〜

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのなかには、SGP(simple guiding principle)という概念がある。直訳すると「シンプルな指針」とでもなるだろうか(なかなかしっくりくる訳語がなく、SGPが言いやすいので以下SGPにする)。
 これは、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの中では、予測できない状況のなかで意思を持って行動を選択するために役に立つ指針として位置付けられている。これを組織の構成員が共有することで、さまざまな変化に柔軟に対応することができるようになる。

 このように、企業の生き残りを強力に後押しするSGPというコンセプトなのだが、実践上の制約としては、このSGPの導出には、時間がかかるため標準として2日間ぐらいの時間をあけてもらわねばならない。企業の環境適応力の向上に関わることだけに、十分その価値があるとはいえど、2日間もそのために時間をとるということに抵抗感を示す企業が多いようである。

標準的なSGP抽出プロセス

 標準プログラムの流れををかいつまんで紹介したい。
 企業の価値や可能性を洗い出してモデル化するとともに、企業を取り巻くステークホルダーを洗い出して、企業とステークホルダーとの関係を全てブロックを使ったモデルで表現していく。その後、作成したモデルの中に変化を起こして変化を可視化してシミュレートを行なっていく。その過程で参加者はステークホルダーに対する理解を深め、その関係性に理解を深め、起こりうる環境の変化と自組織への影響についても理解を深めていく。さらに、さまざまな変化のシナリオを用意し、既存の計画や参加者の想定がどこまで通用するか、その有効性を限界を確かめる。Deep Diveという表現がピッタリな深みのある学びの時間がそこに展開される。そして、限界を大きく押し広げ、組織がさまざまな変化に対応するために、組織の構成員がもっておきたい行動の指針を見つけ出していく。その2日間の学びの結果である行動の指針を結晶化したものがSGP(シンプルな指針)となるという仕掛けである。

 2日間でそのような可能性の探究と検証ができるのは大きな価値と意義があると思うが、残念なことに、そのような効果があるにもかかわらず2日間はなかなか諸事情で受け入れられない企業・組織が多い。今の日本の企業経営・組織経営の慣習からいえば、そのこともよく理解できる。

 つまり、SGPは変化に対応するための指針として役に立ちそうだが、抽出のためのプロセスをもっとコンパクトにできないかということになる。

コンパクトにSGPを抽出するためのアイデア

 より短い時間で、SGPを抽出し、組織の構成員で共有するためにはどうすればよいだろうか。

 一つのアプローチとしては、組織の構成員が自らの経験のなかで、組織の発展に寄与する(とその人が感じる)判断基準や行動指針をブロックで表現してもらう方法がある。
 これを集め、整理することでSGPを見つけ出すという方法である。非常に有力だが、その後に組織の構成員の経験がベースなので、後に経営陣を交え、組織全体として共有するものとしてオーソライズすることを忘れてはならない。このアプローチについては実際に行われている事例があることからも、非常に有力なアプローチであると筆者は考えている。

 まだ実施されていない、もう一つのアプローチとして考えられるのは、実際の企業で策定している単年の事業計画や中期経営計画を組織の構成員が読み込んだ上で、その中に埋め込まれているSGPを抽出していくというものである。これらの計画を作るときにどのような判断基準が使われたのかを考えて、参加者がその読み込み作業の中で感じた計画者側の判断や行動の基準をモデルを作って表現して言語化して語ってもらう方法である。
 計画は、誰かが作ったものであり。それを作ったときには理想の「行動指針」をそこに反映して作り込むはずだ。だからこそ、その計画の制作者の考えや判断基準も事業計画や中期経営計画に埋め込まれているはずである、との考えから生じたアイデアである。

 この2つ目のアプローチのメリットは、ワークショップの参加者が会社全体の計画を主体的に読み込み、内容を解釈し、発言する機会を得ることにある。自社の計画をどこか他人事として聞いている社員が多い職場や、経営者の考えの浸透について不満を持っている場合においては、この方法を試すことで戦略の行動への浸透を図る一つのきっかけになるかと考えている。

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