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レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで人々の「行動探求」を支援する(4)行動論理の発達という視点

 ビル・トルバート著『行動探求』をもとに、これまでは個人の行動探求と組織の行動探求の方法をそれぞれ紹介し、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドでどのような支援ができるかを考えてきた。

 ここまでは、行動探求を構成する要素やそれらのつながりを中心に考察が進められてきたが、本書の第4章からは、著者たちは「人間や組織には行動論理の段階がある」という視点を強く打ち出して、各段階の概念化と段階の移行の条件について検討している。

 組織のマネジャーたちが見せる行動論理を整理し、発達のプロセスを明示すると次の7段階となる、と著者は主張する。

  1. 機会獲得型:自分にとって有利な状況を見出し、結果のために手段を択ばない。

  2. 外交官型:周囲の状況や既存の秩序に合わせ、調和を最優先する。

  3. 専門家型:自己の仕事の論理や効率性を重視し、完璧を目指す。

  4. 達成者型:長期的な目標を掲げ、その達成のために他者を巻き込んで行動する。

  5. 再定義型:他者の意見をよく聞き、様々な意見の一貫性を保ちつつ独創性を追求する。

  6. 変容者型:他者の行動論理を理解し、タイミングを重視して短期的な利益と長期的な発達の両方を追求する。

  7. アルケミスト型:絶えず注意を働かせ、行動、戦略、枠組みに関する学習をし続け、全ての人を包摂する世界を作り出し続けようとする。

 このうち、1~4までは在来型のマネジャー像であり、5~7はポスト在来型と呼ぶべき新しいマネジャー像とされる。ちなみに、1~4のマネジャーは全体の93%を占めているという(本書から推測する限り少なくとも20年前以上の調査だと思われるので現在は割合は変わっているかもしれない)。

 ポスト在来型は、人間には行動の裏に「行動論理」があるということを(概念はなくとも)理解しており、それに基づいて行動しようとするという点が特徴的である。
 このことは「行動論理」が違えば見えている世界や評価も違うということにつながり、相手がどのような「行動論理」をもっているのかということを知るためにコミュニケーションを通じて、自己の考えへにもたらされるフィードバックを重視することにつながっていく。
 
 これは裏を返せば、1~4のタイプの在来型のマネジャーたちは、他の人がどのような行動論理を持っているかに無関心な(もしくは行動論理があるということに気づかない)ため、自らの「行動論理」に合わないフィードバックをもらうのを嫌がるという特徴がある。
 4の達成者型においては、そのマネジャーは部下や協力者からのフィードバックを欲しがるが、その場合には行動レベル(どのような行動をしてどういう結果になったか)でのフィードバックにとどまり、相手の「行動論理」およびその変化などは気にしない(その点からの要望や苦情は聞きたくない)のである。

 各タイプの間には差異があるが、特にタイプ4までと、タイプ5以降の間には大きな溝がある。これを乗り越えていくために、マネジャーは「行動探求」および行動論理への理解を深めていく必要があるということになる。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで何ができるか

 「行動探求」および「行動論理」の発展段階は著者たちが長年の研究によって発見してきたコンセプトであるが、「行動論理」の各段階は理念型であるため、人によってその段階のある部分が強く出ていたり、弱く出ていたりと実際は異なっている

 そのため、自分のマネジメント(成功)の流儀や考え方について、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ってモデルを作ってもらい、それについて説明してもらうという方法が考えられる。
 ただし、本書で推奨されている方法は、専用の判定用紙を使い(一部に空白部分のある文章を用意し、穴埋めをしてもらう内容である)、その判定は訓練された専門家が行うというものである。自らの行動論理を厳密に判定しようと思うと相当に難しいということだ。
 この点についてレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使っても、その厳密性を補える保証はない。

 そうなると、自分を含め人には「行動論理」というものがあり、どのタイプとは判定はできないものの、自分とは異なる「行動論理」を踏まえて働きかけるマインドが重要なのであるという意識を持たせることが主な狙いどころとなるであろう。
 このような水準に落とした場合には、同じ問いに対してその人の考えの多様性がまさに見える化されるレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドはうってつけであるといえよう。

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