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思考ルーチンとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(21)「綱引き」

 今回はこの本の中で紹介されている「綱引き」という思考ルーチンをとりあげる。

 この思考ルーチンは、複雑な問題や概念を子供たちに考えさせることを狙いとしている。ここでいう複雑な問題とは、例えば「戦争」や「死刑制度」の是非、などが該当する。
 またこの思考ルーチンでは、対立する人たちを想定してその人たちが何について争っているかを扱ってもいい。

 複雑な問題は、さまざまな要因や考え方が絡むため、それを効果的に整理して考えるための枠組みが必要である。そのときに、「綱引き」というメタファーが複雑さを整理するのに役立つというわけである。

 進め方としては以下のような感じである。
(1)取り扱う問題について、人々が対立している点について明確な説明をする。
(2)黒板などに長い綱(太い線)の絵を一本描く。
(3)その綱を引っ張っている人(引き手)をイメージさせ、その人たちの考え方について言葉にさせる。その言葉はカードなどに書かせる。
(4)小グループや全体で、引き手の意見の強さはどれくらいか、カードに書かせた引き手を綱のどこに位置付けるかについて検討させる。意見がまとまったら、その引き手をふさわしい綱の場所に貼る。
(5)引き手の考えについて疑問がでてきたり、ある条件のもとでのみ、引き手の考え方が成り立つかどうかについて考えさせる。疑問や隠れた条件については色の違うカードなどに書いて貼る。
(6)複数グループで行っている場合、お互いのグループの結果を共有する。ここまでのプロセスで気づいたことがあれば意見交換を行う。

 こうしたステップを踏んで作られる図のイメージとしては以下のようになる。

思考ルーチン「綱引き」で作られる「死刑制度」を取り扱った図のイメージ

 なお、引き合う綱は1本でなくても良い(意見の分かれだけ綱を用意することもできる)。ただし、最初はなれるために1本にとどめておいたほうがよいとのことである。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにおける「綱引き」

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのワークにおいて、立場の違いが浮き彫りになりそうな問いについて考えたことを表すモデルを作ってもらい、そのモデルの説明をストーリーとして表明してもらうことは十分考えられるプロセスである。

 最も標準的なワークとしては、参加者がそれぞれ自分が作った意見モデルについて話してもらうというものである。
 そのあと、それぞれの意見がどう違うのかを分析するために、大きめのテーブルを用意して、その上に参加者のモデルを置いたあと、テーブル上で全体の配置を考え表現するという方法がよくとられる。ランドスケ―ピング(風景づくり)といわれるレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの応用技術のひとつである。

 この思考ルーチンの「綱引き」を使うならば、そのモデルの配置を考える際に「綱引き」というメタファーを前提として、意見を配置するということであろう。

 実際にこのランドスケ―ピングのファシリテーションをしていて、参加者がどのようにモデル同士の関係性を考えたらいいのか戸惑うことが多いので(それでも時間をかければ、徐々に関係性を見つけ出していくが)、今回の「綱引き」のような補助線的なメタファーがあれば、より考えやすくなるだろう。
 このような補助線的なメタファーをいくつか持っておくことは、ファシリテーターの支援力を高めることにつながるだろう。

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