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嘘つきが教える嘘つきはこういう奴/皮肉屋編

 「お前頭良いな、頭良すぎて話聞きたくないわ」
 これは私が覚えてる一番しょうもない皮肉である。言っている内容が難しいからではなく(相手の方が頭が良かった)単に私の言っている内容が面白くなかったためにそう言われたわけである。
 アメリカ映画などで見るアイロニケーション(皮肉を意味するアイロニーとコミュニケーションを合わせた造語)は傍から見ているから面白いと思えるのだが実際皮肉を言われてみると皮肉が上手ければ上手いほど刺さるものだ。逆に下手で伝わらない皮肉はどうだろう?
 「お前ウーリーモンキーとジャンガリアンハムスター足して二で割ったような賢さだな」
 などと言われたとする。インパクトはあるが意味を置き去りにしている。中身のないたこ焼きみたいなものだ。
 皮肉というのはコミュニケーション能力を磨かないと言えないものでボキャブラリーがあってもその場でガチャガチャと組み立てる技術がないといけない。国語の教科書や広辞苑をしゃぶっているだけじゃ皮肉は上手くならないのだ。そして同時並行で相手に伝わる語彙はどれかを選ばないといけない、二人だけに伝わる身内ネタの皮肉はかなりウケが良い場合が多いから身内ネタはガンガン使う方が良い。
 と、まぁ嘘と一緒で頭を使う。頭を使うのが好きな人が皮肉屋には多く、皮肉という頭の体操をしてからランニングをするように嘘をつくのである。つまり、皮肉屋の嘘というのは皮肉の延長戦上にあるのだ。
 皮肉屋の皮肉は敵意を示すために言う場合もあれば仲間同士のイジりとして言う場合もある。基本的には敵対する人がいつもいるわけがないからイジりやコミュニケーションの一環として使う。嘘も用途は似通っていて信頼関係を崩さないようにすぐばらす嘘が多く、その場で考えたとっさの嘘のようなバレやすい嘘をつく。
 ここで疑問を持つ人がいるかもしれない、バレやすい嘘をついても頭を使わないのではないかと、結論そんなことはない。バレやすい嘘をついてから彼ら彼女らはその嘘をバレそうでバレないギリギリのラインでつき続けるという遊びをするのである。私もよくするがこんなに面白い遊びはない。途中で吹き出してしまってバレることもあるが信頼を傷つけないために自分なりの一線を引いているから遊びで許してもらえる。こういった嘘の楽しさや良さを皮肉屋たちは知っているのである。

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