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ぼくは弟がきらいだ。

ぼくは弟がきらいだ。

らんぼうだし。うるさいし。

ぼくがゲームをしていると、すぐやりたいって さわぐ。

今日はたいいくがあったから いつもより つかれてるんだ。

やっとホッとできる時間なのに。さっきはじめたばかりなのに。

弟がぼくの耳のそばで大声を出すから、耳がつぶれそうだ。

それに まだ小さいから なに言ってるのか分からない。


ぼくがムシしてたら、弟がぼくのわきをおしてきた。顔がまっ赤だ。

「ゲームができないよ!!」って言っても、すごい力でおしてくる。

思わず手がキーからはなれて あなにはまってゲームオーバー。


もう、がまんできない!!!

ぼくも弟をおしかえす。顔があつくなってきた。

弟の顔もさっきよりもっと赤い。サルみたいだ。

もう何がなんだか分からない。でもまけたくない。

弟がたたいたから、ぼくもたたきかえしてやった。

たたかれたところと、たたいた手がいたい。

でも また弟がたたいてきたから ぼくもおかえしだ。

ぼくも弟も どっちも引かない。

たたき合いは止まらない。止められない。

いたいし、あついし、つかれる。

もう いやだ。


そう思ったら、なみだが出てきた。

それでも弟はまだ たたいてくる。

ぼくは のどがいたくなるぐらい大きな声を出した。

キーンと耳がいたくなる。でも、そんなの気にしない。

なみだがボロボロこぼれて エンエンないた。

弟がびっくりして たたくのをやめた。

そこへお母さんがとびこんできた。

ぼくはもう なみだとなき声でぐちゃぐちゃだ。

弟がお母さんにくっついて

「お兄ちゃんが...お兄ちゃんが...」って言ってる。

いっつも ぼくのせいにするんだ。

でも、ぼくはぜったい わるくない。

もう頭がぐちゃぐちゃになってきて さっきよりもっと大声でないた。


お母さんはソファーにすわると ぼくに手をのばして引っぱった。

ストンとお母さんのひざの上におちる。

ひさしぶりの かんしょく。

でも、ぼくはもう大きいから 弟みたいにあまえられないんだ。

弟が「ぼくも〜」って すわってこようとした。

ぼくが いつもみたいに立とうとしたら お母さんが ギュッとした。

弟は 「どいて!」って ぼくを押してきた。

ぼくが手を出すより先に お母さんが弟の手をさえぎった。

「それは いたいよ」

お母さんの声は しずかだったけど 弟は びっくりしてなきだした。


お母さんは ぼくをギュッとしたままだ。

なんにも言わないで。ぼくもなんにも言わない。

いつの間にかなみだが止まっていた。体のふるえもおさまってきた。

「お兄ちゃんなのに」とか「お兄ちゃんだから」とか 言われると思った。

弟にはやさしくしろって お父さんにいつも言われるし。

でも、弟がジャマする時は やさしくなんてできないんだ。


弟はねっころがって 手と足をバタバタさせて ないてる。

いつも そうなんだよな。いやなことがあると。

かいものしてる時も こうえんで あそんでる時も

ヤダヤダってねっころがっちゃったら うるさいし、はずかしい。

早く行きたいのに まってなきゃいけない。まつのは つまらない。


でも。。。

ないてる弟は ちょっとかわいそう。


じゃまする弟は好きじゃないけど ないているのを見たら 

ぼくも ちょっとなきそうになる。

ぼくは お母さんのひざの上から立ち上がって 

ねっころがってる弟を上からギュってしたんだ。

弟はずっと ないてたけど ぼくは そのままギュってしてたんだ。


なき声が小さくなってきたから 弟の体をおこして

ぼくのひざの上にのせた。お母さんみたいに。

そしてまた ギューーってハグしたんだ。

そうしたら 前からおかあさんもギューってしてきた。

お母さんは 弟ごと ぼくたちをギュっとしたんだ。

弟がまん中で サンドイッチだ。

ぼくは 弟のせなかに手を回したまま お母さんを見た。

お母さんも ぼくを見た。


「ぷっ」

思わず二人とも わらっちゃった。

なんか弟が はさまれてるのが おかしかったんだ。

きっと お母さんも それで わらったんだと思う。

一回わらったら なんだかよけいにおかしくなって 

わらいが止まらなくなっちゃった。

フフッ ククッ ハハッ

弟をまん中にしたまま ぼくたちはわらった。

弟は もうなき止んでいた。

でも、何がおこってるのか よく分からないみたい。

きょとーんってしてた。

それを見たら、またおかしくなって よけいにわらいが止まらなくなった。

フフフフフフ

クククククク

ハハハハハハ

へへへへへ

弟もたのしくなってきたみたいで わらいだした。

三人で しばらくずっと わらってた。

なんかひさしぶりに みんなでわらった気がした。


「はー、よく笑った。ねえ、プリン食べよっか。」

お母さんは立ち上がって キッチンにむかった。

「プリン? やったーーー!!!」

ぼくと弟も とび上がってお母さんをおいかけた。


おしまい。

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