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金髪のおねえちゃんしか描かない男、岩本義夫の半生

彼の作品に付けられたタイトルはすべて、
『金髪のおねえちゃん』。

雑誌の外国人モデルの切り抜きなどを見ながらアクリル絵の具を塗り重ねて作られていくそれらの作品は、髪の毛や鼻がボッテリと盛り上がり、まるで油絵のよう。
大きく見開いたグリーンの瞳がこちらをじっと見つめ、ドキッとする。そびえ立つ鼻やうねるブロンドの髪は凛として力強いが、どこかユーモアも感じられる。彼にかかれば、すましたファッションモデルたちも強烈な個性の持ち主となるのだ。

***

今回は『金髪のおねえちゃん』を描かせたら右に出る者はいない、御年70歳の嬉々‼アーティスト、岩本義夫さんに職員Nがインタビューをしてきましたので、その様子をお届けします。
ポップな作品の印象とはもしかしたら違うかもしれない?岩本さんの素顔とは…

職員N:
まずお聞きしたいのは、なぜ『金髪のおねえちゃん』しか描かないのかということなんですが… 

岩本さん:
そんなの好きだからに決まってるじゃねえか。

 職員N:
(笑)。
日本人のおねえちゃんは描かない? 

岩本さん:
黒髪はどうもなあ…。

 職員N:
最初に金髪のおねえちゃんを描いたのはいつでしょう? 

岩本さん:
ここに来てから(前身の施設に来た12年前)だよ。
最初に担当職員がたまたま金髪のモデルさんの切り抜きを渡してくれて、そこから火がついちゃったんだよ。こりゃ描くのおもしれえなあって。 

職員N:
火がついちゃったんだ(笑)。
じゃあ今「ちょっとネコ描いて」とかお願いしてもダメなんですか? 

岩本さん:
ネコじゃつまんねえな。 

職員N:
岩本さんはおねえちゃんを描く時、鼻や髪の毛をモリモリに盛りますよね?それは最初からやっていた? 

岩本さん:
最初はやってなかったよ。途中で思いついて始めたんだ。自分だけの感じを出しちゃおうかなあと思って。外人は鼻がたけえじゃん?だからそうしたんだよ。

(横から見るとより立体感を確認できる)
(こちらは初期の作品。まだ平面的)
(はじめは水彩絵の具を使っていたため乾くとひび割れていた)
(少しずつ髪の毛から絵の具を盛るようになっていく)



職員N:
油絵の具ならわかるけど、アクリル絵の具をこういうふうに盛る人は珍しいですよね。

 岩本:
別に画材はなんでもいいんだよ。たまたま(アクリル絵の具が)ここにあったから使ってるだけ。それしかないんだからしょうがねえよ。これだって加減して使ってるんだよ。もったいねえからよ。こうやってちょっとずつ出して… 

職員N:
一応加減して使ってくれてるんですね(笑)。
乾くのに時間がかかると思うけど、ひとつの作品が完成するのにどれくらいかかります? 

岩本さん:
最低2日はかかるな。1週間ぐらいかかるやつもあるよ。

(作業デスクの前に貼られた沢山の切り抜き)


 
職員N:
じゃあ次は岩本さんの人生について聞いていこうかな。子どもの頃はどんな子でしたか?
 
岩本さん:
内気だったね。あんまり学校も好きじゃなかったな。勉強もできねえしよ。そんで中学出て働きだしたんだよ。それがまたつまんなくってすぐ辞めちゃってよ。他にもいろいろやったけどあんまり覚えてねえな。普通の仕事は3日で辞めちゃったよ。
その後知り合いに誘われて発破屋になったんだよ。
 
職員N:
発破屋ってどんなお仕事ですか?
 
岩本さん:
ドカンドカン爆発させるんだよ。岩盤を。そんでそれをコンクリートにするの。
発破の免許も取って、20年ぐらい続いたな。給料も結構貰えたしな。
 
職員N:
へえ!
じゃあ絵を描き始めたのは施設に来てからなんですかね?
 
岩本さん:
そうだね。50歳過ぎてからだよ。
 
職員N:
絵はもともと好きでした?
 
岩本さん:
別に好きじゃなかったよ。今も好きじゃねえけど。
 
職員N:
え!?今も好きじゃない??
 
岩本さん:
仕事だから描いてんだよ。
 
職員N:
なるほど(笑)。
じゃあ今、どんな仕事してもいいよと言われたら何をしたいですか?
 
岩本さん:
発破の仕事がしたいよ。それが一番好きだったね。ドッカンドッカンやって、それが気持ち良くてよお。
 
職員N:
そっか…、だから発破屋のことはよく覚えてるんですね。
じゃあ、嬉々‼ではこれからどんな絵を描きたいですか?
 
岩本さん:
どんな絵を描きたいのかね。わかんない、俺にも。
 
職員N:
淡々と描き続けるだけ?
 
岩本さん:
淡々とってわけでもないけどよ…
まあだけど…、これが一番楽しいんじゃねえの?

職員N:
なんだ、やっぱり好きなんじゃない!(笑)
 
岩本さん:
「どんな色にしたらいいのかな」とか、自分で考えてよ。やってみたら、「お、なかなかいいんじゃねえか?」とか思ってよ。
 
職員N:
やっぱり楽しんで描いてるんですね。安心しました。
じゃあ最後、ファンの皆さんに一言お願いします!
 
岩本さん:
なんて喋ったらいいかわかんねえな。作品もなかなかこさえるの難しいけど、まぁよろしくお願いしますよ。

(最近は赤髪のお姉ちゃんを描くことも!)

(平塚市美術館で展覧会をした際にポスターになった作品)

一見強面でぶっきらぼうな岩本さんですが、内なる情熱を秘めた人物であることが窺えたのではないでしょうか。様々な人生経験を経たからこそ今の作風が生まれたのかもしれません。

そんな岩本さん、今回同僚のトモヤテンチョと2人展を開催することとなりました。題して【”でんせつの2人” 岩本義夫・高原トモヤ 二人展】!
会期は2023.5.9(火)-6.30(火)。
立体的な金髪のおねえちゃんたちを見ていただくチャンスです。
ぜひ、嬉々!! CREATIVE GALLERY & CAFEまでお越しくださいね。




 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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