転職物語②面接官にプロはいない

転職活動のときに越えなければいけない壁は大きく2つです。

一つは書類選考、もう一つは面接です。

転職活動がうまくいかない=この2つの壁のいずれかでうまくいってないということになるかと思います。

しかし、書類選考が通っていないのか、面接が通っていないのかによって課題は異なります。

私自身転職活動を応募側と採用側でそれぞれ経験していますので、どの段階で通らないかについて考えていきたいと思います。

書類選考が通過しない場合

書類選考が通過しない場合、これはシンプルに募集している人材と応募者の経歴やポータブルスキル、年齢や家族構成等の個人情報とマッチングしていないということになります。

採用活動や新人育成には双方にコストがかかります。

そのため一番恐れるのは採用後のミスマッチです。せっかく採用したのに早期に離職をしてしまったら企業側はさらにコストを支払って採用活動、育成をしなければいけませんし、採用された側も短期離職となり、次の転職活動を厳しいものになる可能性があります。

書類選考では、以下の点をチェックしています。

※ここでいう書類とは職務経歴書を指します。転職活動においては履歴書ではなく職務経歴書を重視します。極論を言えば職務経歴書しか見ていません。

これまで、何をしてきたのか
どんな成果を生んだのか
その成果はどのように生まれたのか

これまで何をしてきたのか

これまで何をしてきたのかは職務経歴書に容易に記載できるかと思います。
履歴書と変わらず時系列で事実を表現します。

年齢によって、この「これまで何をしてきたのか」の重要度は変わります。
30代前半までの一般的な転職であれば、これまで何をしてきたのかよりも次の2項目の方が重要です。

しかし30代後半以降の転職だと「これまで何をしてきたのか」と応募先の職種や人材像に乖離があると判断されると書類が通らないということがあります。

未経験だと給与についても前職を考慮するとはいえ大きく割り込む可能性があります。それだけでせっかく採用をしても離職リスクは高くなるのです。

また、育成についても30代後半以降になるとそれだけで扱いづらい人材となります。職場の平均年齢に対してあまりにも年上だと、本人も職場の既存メンバーもいづらい環境を作ることになります。

そのため、シニアの転職では業界にもよりますが異業種ではなく同業他社や職種が同じものを選ぶことをおすすめします。

どんな成果を生んだのか

職務経歴書にはどんな成果を生んだのかということをやはり事実ベースで記載する必要があります。

わかりやすさを考えると、昨年対比、予算対比でどのくらいの成果だったかを記載すべきです。こういった場合に、%を用いるとわかりやすいです。

というのは、仮に業界が同じだとしても売上・利益の絶対値を記載してもその数値がどんな評価を受ける数値なのかがわかりません。

以下のケースで比較するとわかりやすいと思います。

Aさん:年間売上 2千万円(2023年)
Bさん:年間売上 前年対比120% 予算対比110%
      純利益 前年対比130% 予算対比115%
     

Aさんは年間の売上が2千万円です。
これがすごいのかどうか、絶対値では全くわからないのです。

2千万円もなのか、2千万円しかなのか

絶対値で記載をするということは、自身の成果をアピールする方法を知らないということになりますし、管理職であれば、部下の成果を正しく評価できない人という認識になります。

Bさんは相対的な数値です。少なくとも昨年よりも売り上げを2割増しにして利益を3割増しにすることができた、会社が求める予算についても達成できているということがわかります。

相対的な数値で表せるのは自身の成長です。もちろん、前年がうまくいかず今年たまたまうまくいった結果かもしれません。どうやってこの成果が生まれたのか。次の項目で説明する必要があります。

その成果はどのように生まれたのか

成果を出すことは大事ですが、その成果に対するプロセスが理にかなったものになっているかどうか。

この項目を説明することで、この成果は再現性の高いプロセスで生まれたものなのか、偶然の産物なのかを見極めることができます。

成果とはあくまで過去のことです。前職での成果は次の職場での成功を約束するものではありません。

採用担当はこの成果が転職先でも生み出される可能性が高いプロセスを言語化することができているかどうかを見ています。

このように、書類選考においては転職先において活躍できるかどうかを文書ベースで確認し、応募者に時間を割いて会うかどうかの判断をしているのです。

書類選考を通過するということは、総合的に勘案して、採用担当者が会ってみたいと思える人材であるということを示しています。

書類選考が通過できない場合には、職務経歴書の内容と転職先で求められる職務内容やポジションに文書だけで判断できるミスマッチや不足(あるいは充足しすぎてしまっている場合もあります)があったためです。

経歴を盛ることは詐称になりますが、職務経歴書をエントリーする企業によって微調整するというのは、その企業が求める人材に合わせてアピールする項目が異なるためです。

ここを外してしまうと、どれだけ成果をあげてきた人でも書類で通過できないということになるのです。

面接が通過しない場合

書類選考を通過すると面接となります。転職の面接は2~3回行われます。
そしてそれぞれの面接官で選考のポイントは異なっています。

1次面接:現場責任者(課長職級)


現場責任者はずばりこの人材が現場に入った時のことを想定した場合に、どのポジションで働けそうか、組織にいい影響や貢献ができそうかを見ています。

もちろん、職務経歴書に目を通していますが実際のやり取りは初めてですから経歴のほかにも基本的なコミュニケーション力、質問力や受けごたえの仕方、説明をする力などを見ています。

逆に言えばそのくらいしか見ることはできません。そのため、すべての面接で言えることですが公平な見方はされていません。

今いるメンバーとの親和性という、応募者があずかり知らないような要素がとても大事だったりもします。

面接時に質問がありますかと必ず聞かれますが、これも実はコミュニケーション力を見ています。

現場責任者に対しては現場で起こりうる事がらについての確認をするようにします。相手を見て答えられる質問をしていくことが必要です。それを見極められるかどうかも見られていると思ってください。

このように、評価項目は多岐にわたる反面、現場責任者はプロの面接官ではないため、人によって評価しているポイントが違うのです。

1次面接が通過しなかった場合、基本的なコミュニケーション力についてはふり返りをして、すぐに忘れてしまうことです。

聞かれたことに応えられているかどうか
質問の意図を確認し、明確にしようとしているか

 
こういったところは常にふり返りをするようにしてみるといいかと思います。

2次面接:事業部長(部長職級)


企業の多くは2次面接に採用可否の決裁権を持っている役職者が登場します。企業によっては3次面接で担当役員の面接や場合によっては転職活動でも社長面接をという企業もありますが、ある程度の規模以上になると、一般職の転職については事業部長面接で採用の可否が決まります。

ここで見られていることは何か。

もちろん1つではないのですが、企業との親和性や企業の考え方に賛同できるかどうか、それによって今後の未来をどう作っていきたいかといった、現在から未来へのビジョンや企業理念への理解といったことを見ています。

前述しましたが、2次面接では離職しない人材かどうかの見極め、オフェンシブには組織にいい刺激をもたらすことのできる人材かどうか、この人材が活躍できるような土壌があるかどうかということを見極めています。

3次面接で役員面接がある場合、この企業理念に対しての理解や親和性の高さを最終的に見極めるということに終始することが多いようです。

2次面接で採用に至らなかった場合、人材としては素晴らしいスキルがあるものの今の企業に用意できるポジションがなかったり、活躍の場を提供できないと思ったりすれば採用見送りになります。

その人の絶対的な優秀さではなく相対的に見て企業に合う合わないの方が優先される傾向が非常に高いです。

結論


ずばり、面接で通過できない場合、あなたの能力やこれまでの経歴を否定しているわけではありません。

単純に合うか合わないかが重視されています。

近年の新卒採用活動においては、企業で活躍している先輩社員数人に適性検査を課し、企業の欲しい人材像をペルソナとして設定してから、質問項目を面接官で統一するということも試みられています。

ただ転職活動は新卒のポテンシャル採用とは異なりますので、応募者は職務経歴書の充実と、ある程度の企業研究とこれまでの経歴をどうマッチングさせるかといった準備が必要なのです。

転職活動の不採用は人格否定ではなく単なるミスマッチ

そう考えられるようになるといい意味で開き直ることができると思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?