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ラストピースマネジメント(外川大由・著)

介護職員の人たちはほんとうに本を読まない。読解力のない人が多すぎることは運営しているSNSの介護グループを見ているとよくわかる。

文字は読めても、言わんとすることがきちんとつかめなく、本質が捉えられない。その代わりに沸き起こる感情を出してくる印象だ。

こういったことは現場を経験している著者はわかっているのだろう。事象を文章であらわすよりも「」をつけた会話形式で書かれているので、感情も情景もつかみやすいゆえ、読解力をさほど必要としない。

著者の外川氏は介護の現場を知り尽くしているからこそ、この「ラストピースマネジメント」が生まれたと思う。強調したいのは、このマネジメントは独特の介護業界向けであること。それも、ラーメン屋や居酒屋から転職してきた経営者、現場職員からいきなりリーダーに抜擢され、右往左往している人にお薦めしたい。

私は医療関係の資格を持つが、在宅介護のみで、現場に入ったことはない。たまたま入ったSNSの介護グループから、だいたいの現場の悲惨な状況は読み取れている。何が問題かが見えることもある。

例えば慢性的な人手不足であること、職員に家庭的な事情のある人が多いこと、またマニュアルがなく個人の考えで指導をすることでトラブルが起きていること、残業をする人が評価され「サビ残」が当然になっていること、などというヤバい状況は本の中でも折り込まれており、対策が示されている。

実例のような小説になっていて、「このようなときはどうしたらよいか」を伝えてくれる会話形式はポイントさえつかめればわかりやすい。

リアルに近い小説ゆえ、ラストは泣ける場面になりますが、これはマネジメント本にはなかなか見られない仕事と家庭を絡めたからだと思います。

業界の中間管理職の人にはリアルに、経営者には中間管理職の苦悩を知るために、また業界外の人には見えない世界を、それぞれ得ることになると思います。