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日本が壊れる前に~中村淳彦×藤井達夫「貧困」の現場から見えるネオリベの構造

帯にある「衰退途上国で、次に堕ちるのは中年の男たちだ」が衝撃的だったから、その根拠がしっかり知りたかった。

この疑問は読了することで解決し、深く納得がいったのはまさにその年代に自分もいるからだと思う。

学生時代から少し目立つだけで「女子かよ」「女が」という言葉は背に聞こえていた。男子と同じことができても女だから、というだけで称賛どころかわずかに中傷が混じる。自分の周囲の男子たちに今なお中傷するものがいるとすると、この本の中にある「堕ちる中年男性」になっているのではないだろうか。

「ネオリベ(=新自由主義)」という言葉はリケジョな私には理解できていなかった。そもそも新自由主義の中身がさっぱりわからない。どこでそれが使われているのか、どういうところで見えているのか。

中村さんの著書は何冊も読んでいる。都度都度自分の知らないことが多すぎることを実感させられ、知らないエリアを見せてもらっている。社会にある階層、底辺にいる貧困の人たちとその実態、貧困の背景と経緯、ゆがんだ世代差と世代の孤立、ほとんどの世代同士で井の中の蛙状態が起こっていること、などなど。

今回の本では、政治学者である藤井達夫氏との対談で、これらを政治的視点とネオリベ視点で解説が入ったことで視野が広まり、われわれが選挙に行くことの重要さを知ることになる。そして冒頭にある「堕ちる中年男性」がなぜうそうなるかも明確になる。

多くの人が感じているように今の日本はどうしようもないところに来ていると思う。これから何ができるのか、どういう可能性があるのか、今よりも少しでも自分が生き残れるために何をしたらいいのか、を考えるきっかけになり、また何をしたらいいのか、に対する指針になると思う。

もちろん自分もそれはしっかりと考えている。日本が壊れる前に。

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