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5年経って反論したい言葉

別に、今さらその発言に反論しようとは思わない。

当時の私は、そういうものか、と分からないままも何となく納得したのは確かだ。
しかし、あれから5年が経った今は、きっぱりと「それは違う」と言うだろうし、理由も山ほどあげることができる。

それは、どんな発言か?
海外移住や転勤を経験したり予定しているなら、もしかしたら言われた経験があるかも知れない。

それは、「子供は慣れるのが早いから、英語はすぐ話すようになるよ」だ。

私はそれを2018年のバンコクで言われた。
発言者はA氏としておこう。
妻子を連れて海外勤務を数年経た会社員だ。

「うちの子はすぐ外国人の子と友達になって、もう英語で一緒に遊んでいるよ」とも。

当時、筆者の娘達は英語力がなさすぎで、インター校に入学できないという渦中であったため、藁にもすがる思いでその発言を信じたかった。
が、どことなく半信半疑だった。

なぜ、「子供はすぐ英語を話す説」を100%信じることができないのか、その時は自分でも理由が分からなかった。
しかし、5年経った今ではすっきりクリアだ。

その理由はこうだ。

当時、A氏の子供は小1男の子で、プライマリのGrade1。
かたや筆者の娘達は、小6と中2でおよそセカンダリ。

英語/日本語といった言語の種類はいったん置いておこう。

重要なことは、何語であっても、小1男子と中学女子では話す内容が全く違うという点だ。

おそらく、当時のA氏の息子は同性の友人達と、「ボールをよこせ」とか「パスをまわせ」などといった会話が主だっただろう。

いっぽう、中学女子の話は複雑だ。

「午後の水泳の授業、生理になりそうだから休みたいんだけど、体育の先生宛のレターは何て書けばいいの?」とか「Bちゃんに話したことを、Cちゃんが知ってるんだけど、BちゃんにCちゃんへしゃべったかどうか聞きにいくからついてきて」など、状況も内容も込み入っている。

よって、年齢やジェンダーなどをいっしょくたにして、「子供はすぐ英語を話す説」を主張することは、難しいだろう。

この会話をしてから向こう2年弱、娘たちはインターナショナルスクールで英語漬けとなり、割とイバラなロードを歩むことになった。

さらにそれから4年を経た現在、学校生活を難なく送り、そこそこの成績も収めていても、本人達はまだまだ英語力は足りないと自覚している。
特に会話に関しては、自分の思いや微妙な表現は、まだまだ使いこなせないそうだ。

外国語の環境にいるだけで、自然とその言語を話せるようになる魔法なんてものはなく、ありていにえば血の滲む努力が必要だ。
日本から出た事がなくても、十分な努力を重ねることで優秀な英語話者になった人も多くいる。

世の中にはびこる「子供はすぐ英語を話す説」に対して、筆者は、すべての子ども英語学習者を代表して、異議を唱えよう。

その無責任で裏付けのない説が、「すぐ英語を話す」ことができない子とその親を、どれほど傷つけるか知れないのだから。



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