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ほぼマレーシアにまつわるショートエッセイ

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ちょっとした時間にサクッと読める、マレーシア生活などにまつわるエッセイ集です。
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#マレーシア生活

キャメロンハイランドの老舗ホテルSmoke House Hotelにて

キャメロンハイランドに、Smoke Houseという名のホテルがある。 おとぎ話に出てきそうな、とんがり屋根に蔦が絡まる洋館。 ピーターラビットがすぐにでも顔を出しそうなイングリッシュガーデンが色を添えている。 ホテルの近隣はゴルフ場しかないため、そこだけ切り取ったように、空間まるごとがイギリスだ。 ヨーロッパのアンティーク好きなら、館内に足を一歩踏み入れると同時に、歓声がもれるだろう。 ビクトリア朝を思わせる家具、市松模様の床、暖炉、バラ柄のファブリック、真鍮製のア

海外生活でわたしを助けてくれる唯一無二のもの

いつもの点心の店で、水晶餃子、粽、鉄観音茶を注文すると彼女が言った。 「結構昔のドラマなんだけど、高校生と女の先生が恋愛するの。えーっと、なんだっけ?」 「日本のドラマ?」 「そうそう、なんとかの条件」 「魔女の条件?」 「それそれ!」 「私あのドラマ好きだった。歌も良かったよね。" You are always gonna be my love〜♩"」 という会話の相手は、中華系マレーシア人の友人だ。 彼女が大学の時、ちょっとした日本ブームが起きた。 日本のアニメのみなら

ソウルの旅が全然楽しくなかった

2023年8月にソウルへ行った。 旅行というより乗り継ぎを利用したトランジットステイだ。 筆者は映画ファンの端くれとして、韓国映画のみならず韓国ドラマにも随分楽しませてもらっている。 むしろ良すぎて、我が国のエンターテイメントの将来を憂うほどだ。 それら映像作品の中でソウルの風景や地名は溢れているし、マレーシア国内でも韓国料理は人気なので、いつしかソウルは親しみやすく好感度の高い同級生的存在になっていた。 また筆者の周りの韓国フリークから、異口同音に賛辞を聞いていたのもあ

金曜の雨の夜とグラブドライバー

待ち合わせの時間まであと5分。 しかし車は渋滞で全く動かない。 友人にGrabの到着予定時刻をWhatappでシェアしてテキストを送信。 「あと15分くらいかかりそう🙇‍♂️」 バイクが車の脇をすり抜ける。 左の車が幅寄せする。 KLのいつものトラフィックジャムがそこここにあった。 少し雨が降り出した。 「時間は大丈夫だけど、設定してる場所間違えてるよ!」 今夜食事する場所はチェーン展開している飲食店で、私は間違えて自宅から近い方の店舗を設定していたようだ。 本来の店との