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【LAD】Shelby Miller に期待できるワケ

どうも、こんにちは。雨宿りです。

今回は、ドジャースが今オフに FA で獲得した Shelby Miller について書いていこうと思います。今オフにドジャースが補強した選手には、 Noah Syndergaard や J. D. Martinez などの名前の知れた選手もいますが、今回はあえて Shelby Miller をピックアップしてみました。その理由は、タイトルにもある通り、Syndergaard や Martinez と同様、もしくはそれ以上に Miller は僕が個人的に期待している選手だからです。

また、それなりに名前の知れた選手について「来季は期待できるぞ」というような記事を書いても面白味に欠けますし、競馬で言う大穴のように無名の選手の活躍を的中できれば、それほど嬉しいことはありません。そんな理由で、今回は Shelby Miller が活躍するぞ!というような記事を書いていきたいと思います。

最近のドジャースはあまりにも明るい話題に欠けているので、少しでもドジャースファンに来季に向けて希望を持ってもらうべく、今回の note は希望的な内容を書ければなと思っています。

Shelby Miller ってどんな選手?

先ほど「無名の選手の活躍を〜」と述べましたが、厳密に言えば Miller は無名ではありません。まあ大半の人が知らない選手だとは思いますが、実は Miller は2013年の新人王投票にて3位にランクインしています。

2013年の新人王投票の結果

また、2015年にはオールスターにも選出されました。ですので、無名選手と括ってしまうのは失礼ですね。2013年に15勝をあげ新人王争いをし、デビューから3年目の2015年にはオールスター選出、輝かしいキャリアがここからスタートするだろうと誰しもが思っていました。しかし蓋を開けてみると、Miller は2016年〜2022年の7シーズンの通算防御率は7.02(65試合)と決してメジャーレベルとは言えないピッチャーとなってしまいました。そして彼はメジャーとマイナーを行き来するうちにリリーフに転向することになりました。2022年シーズンもリリーフとしてメジャーでわずか4試合(我らが二刀流 Hanser Albertoより少ない)に登板し、防御率6.43、WHIP 1.29といまいちパッとしない成績でした。そんな投手をなぜドジャースはメジャー契約で獲ったのでしょうか?そしてなぜ来季の Miller に期待できるのでしょうか?

Shelby Miller に期待できる理由

実は Miller 、2022年のマイナー成績はAAAで53.1回を投げ、防御率2.87、WHIP 1.11、69奪三振とそこそこ良いです。実際にドジャースの現GMである Brandon Gomes もウィンターミーティングで以下のように発言していました。

Miller はAAAで十分な成功を収め、リリーフへと完全に転向できたことを示した。また彼のファストボールとスライダーのコンビネーションは非常に効果的で、来季は平均的な四球率で高い奪三振率を記録できるはずだと我々は感じている。
LAタイムズより

つまり、Miller を獲得したのは単なるブルペンの穴埋めではなく、今季の Evan Phillips や Yency Almonte のようにブルペンの中心を担うリリーバーになってくれると期待してのことだったと言えるでしょう。

【ドジャースのリリーフ魔改造記録】
2022:
Evan Phillips : 64試合 ERA 1.14(2018-2020 48試合 ERA 7.50)
Daniel Hudson : 25試合 ERA 2.22 K/BB 6.0(2020 54試合 ERA 3.31 K/BB 4.7)
Yency Almonte : 33試合 ERA 1.02(2021 48試合 ERA 7.55)
Chris Martin : 26試合 ERA 1.46(2022 CHC在籍時 34試合 ERA 4.31)

2021:
Blake Treinen : 72試合 ERA 1.99(2019 57試合 ERA 4.91)
Jimmy Nelson : 28試合 ERA 1.86(それまでの119試合 ERA 4.22)
Corey Knebel : 27試合 ERA 2.45(それまでの239試合 ERA 3.31)
ドジャースが再生工場と呼ばれる所以

Miller は先発の経験もありますが、GMの発言からも来季はリリーフとして起用されるはずです。またマイナー契約ではなくメジャー契約(しかも11月に)を結んだのも、ドジャースのフロント陣が Miller の来季の活躍に期待している表れでもあると思います。ではここからはもう少し具体的なお話をしていきましょう。

データからわかること

昨シーズンはメジャーでの登板がわずか7試合しかなかったため、127球しかサンプルがありませんが、そこは目を瞑りましょう。

Miller の Statcast 成績(キャリア)

2022年はサンプルは少ないものの、xwOBA .215、K% 46.7%、xERA 1.90はどれもメジャートップレベルです。

2022シーズンのトップリリーバーたち

上のランキングに照らし合わせても xERA 1.90 と xwOBA .215 はいずれも Emmanuel Clase より低くなっています。やっぱりこれを見ると Edwin Diaz の凄さが際立ちますが、Miller も Statcast 上の成績は彼ら(トップリリーバーたち)に劣らないものでした。実際に今季1登板でもした投手の中では、K%、HC%(全投球数における95mph以上の打球を打たれた割合)はメジャー全体2位、xERA、xwOBAは全体3位、CSW%(全投球数における見逃しストライク+空振りの割合)は全体6位でした。

K%、HC%はメジャー全体2位、xERA、xwOBAは全体3位、CSW%は全体6位

登板数が少ないとはいえ、正直これには驚きです。また、Statcast の Percentile Rankings も(登板数が少ないので、3項目しか載っていないが)3つとも赤いです。

Baseball Savant より

Fastball Velocity(直球の球速)はメジャー平均と大して変わりませんが、Fastball Spin はメジャーリーグ上位25%Extension に関しては上位2%にランクインしていることがわかります。Extension とはその投手がどれだけ打者に近いところでボールをリリースして投げているかを示した数値のことです。つまり Extension の値がかなり高い Miller は、球持ちがかなり良い(メジャートップレベル)投手であるということです。やはり Extension が高ければそれだけ打者に近いところからボールを投げられるので、投手に有利に働きます。また Miller はリリースポイントも安定しています。

Miller のリリースポイント(赤点はフォーシーム、黄点はスライダー)

この画像は Miller のリリースポイントを示したものです。ここからもわかる通り、リリースポイントが非常に安定しており、オーバーハンドスローの投手にしてはリリースポイントが 5.28ft とかなり低いです。また球種が異なれど、リリースポイントが安定しているということは、それだけ打者は球種を判別しづらいということです。

こちらは Miller のフォーシームとスライダーのオーバーレイ動画です。途中まで2球種とも軌道がほとんど同じで、そこから分岐している(ピッチトンネルを効果的に使えている)ことがわかります。

Miller がフォーシームで空振りを奪ったコース

こちらは Miller がフォーシームで空振りを奪ったコースを表示した画像です。今季 Miller がフォーシームで空振りを奪ったコースが高めに集中していることがわかります。

つまり Miller の投げるフォーシームには、①MLB上位25%の回転数 ②低いリリースポイント ③優れた Extension ④高いコースで空振りを奪える といった4つの特徴があります。

こちらは加藤豪将選手(現日ハム)の過去のツイートで、打たれにくいファストボールの特徴が4つ挙げられていますが、これら4つとも僕が先ほど列挙した Miller のフォーシームの特徴と見事に一致しています。

Miller のフォーシームの縦の変化量
フォーシームの縦の変化量ランキング

実際 Miller のフォーシームは  Vertical Movement(縦の変化量)の vs AVG が2.6 なので、MLB でも上位5%に入ります(規定投球回数に及ばなかったためランキング外)。MLB平均のフォーシームよりも Miller のフォーシームは2.6インチ(6.6センチ)浮き上がっているように打者が感じるということです。

ストレートの縦変化量が相手打者にどのような影響を与えるのかについて興味のある方は、Namiki さんが書かれているこちらの記事をぜひ読んでみてください。では話を Miller のフォーシームに戻して、彼のフォーシームの Statcast 成績を見てみましょう。

Miller のフォーシームの Statcast 成績

Miller のフォーシームは Statcast の成績からも素晴らしいボールであることがわかります。特にK%は71.4%と脅威的。さらに xBA .083、xwOBA .126 からもわかるように、Miller のフォーシームはメジャートップレベルです。そして RV/100(100球あたりの Run Value)は-2.2です。

フォーシームの Run Value 上位10人

この画像はフォーシームの Run Value トップ10のランキングですが、彼らのRV/100の値を見てみると、 Miller も Statcast 上では十分彼らに引けを取らないフォーシームを持っていると言えるでしょう。その一方で、Miller のスライダーは決して良いとは言えません。

Miller のスライダー

RV/100 も+1.9ですし、xwOBAも.300あります。投げれば投げるほど点を取られるということです。Whiff%も低く、MLBの平均と各指標を比較してみても勝負球として使うには改善すべき点がいくつもありそうです。しかしドジャースにとってはこれはむしろ好都合だと思います。なぜなら Phillips にしても Almonte にしても Treinen にしても、彼らは皆ドジャースのテコ入れによってスライダーを大幅に改善させたという前例があるからです。なので、スライダーの魔改造という部分に関しては過去の実績からもドジャースは信頼に足るでしょう。

さらに最近のLAタイムズの記事では、Miller がすでにドジャースのスタッフと他の球種に取り組んでいることもわかっています。

Miller がドジャースと契約してまだ間もないが、彼はすでにドジャースのアシスタントピッチングコーチングの Connor McGuiness とブルペンセッションをアリゾナで行っており、ピッチングコーチの Mark Prior とも密に連絡をとっている。

彼は現在、89マイル程度のスプリットと80マイル後半のカットボールに取り組んでおり、どちらも「かなり良い」そう。
LAタイムズより

今季はフォーシームとスライダーの2球種しか投げていませんでしたが、記事にもある通り、すでに今オフはスプリットとカットボールに着手しているらしく、コーチ陣からの評判も良さそうです。

来シーズンに向けて

上でも長々と説明しましたが、Miller はメジャートップレベルのフォーシームを持っています。しかしいくら優れたフォーシームを持っていても、やはり球種がスライダーとの2つだけではメジャーレベルでは打たれてしまいます。その対策として、ピッチトンネルを意識した球種を新たに2つ(スプリットとカットボール)覚えようとしているというのは良い報せです。来季は高めのフォーシームと3種類の変化球をうまいこと織り混ぜ、活躍してくれることに期待です。

ということで、ズバり来季の Miller の成績を予想します。

55試合 60回 ERA 2.48 72奪三振 WHIP 1.05 といったところでしょうか。これくらい活躍してくれれば文句のつけようがないです。期待しすぎと思われても仕方ないですが、個人的には Miller にはこれくらいのポテンシャルがあると思っています。一年後にnoteで「Shelby Miller 大当たり」という記事がアップされるか、それとも「Shelby Miller 期待外れ」という記事がアップされるのか、楽しみに待っていただければ幸いです。最後に僕が今季 Miller の投げたフォーシームの中でベストピッチだと思う一球をご覧ください。

では今回はこんなところで失礼します。

【引用画像】
https://www.mlb.com/news/shelby-miller-dodgers-deal

【参考にしたサイト】
https://baseballsavant.mlb.com/
https://www.fangraphs.com/
https://www.pitcherlist.com/
https://www.baseball-reference.com/

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