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コロナ禍で再燃したサバ缶ブームとは。10年の軌跡を振り返る。

サバ缶がツナ缶を超える存在になっているという話を耳にしたことがある人は多いだろう。サバ缶はここ10年ほどで幾度かのブーム繰り返してているのだ。現在は第3次ブームともいわれ、今や一時的なブームを超えて、人気と需要ともに定着したとも思われる。
特にこの数年は、多くの食品メーカーが様々な商品をリリースしてきた。
今回はそんなサバ缶ブームの流れを追いながら、注目されたサバ缶商品をまとめてみる。

2013年、美容をキーワードに女性がサバ缶に注目

まず、サバ缶の第一ブームといもえるだろうか、2013年に「ダイエット効果が期待できる」とテレビ番組で取り上げられたことで、サバ缶への注目度が急上昇。
サバ缶に入っている成分のひとつ「EPA」に痩せホルモン作用があると話題になり、スーパーマーケットなどでのサバ缶品切れ状態が続出した。

もともとサバ缶は定番の缶詰であったが、サンドイッチやサラダで親しまれていたツナ缶と比べると、男性が好む「お酒のアテ」というイメージもあり、女性はサバ缶よりもツナ缶を好む人が多かったようだ。
しかし、サバ缶にダイエット効果が期待できるとメディアがこぞって特集したことで、今までサバ缶に親しんでこなかった女性たちが手にとるようになる。
さらに同時期には、「オメガ3」と呼ばれる不飽和脂肪酸も美容や健康効果があるされ流行していたので、サバ缶にも多く含まれるオメガ3の「DHA(ドコサヘキサエン酸)」と「EPA(エイコサペンタエン酸)」がさらに人気を押しあげた。

“お洒落サバ缶”ブームの火付け役、「サヴァ缶」

続いて、今度はパッケージがおしゃれになったサバ缶が登場する。
2013年に登場した「サヴァ缶」は、「東日本大震災の被害を受けた三陸から、独自ブランドの加工品をリリースする」というコンセプトで作られた商品。ハーブや白ワインなどを使用した製法で味も支持されたことが人気につながり、現在までのロングセラー商品となっている。


サバの洋食化。鯖サンドが流行

2013年の頃は、サバの産地を中心に「鯖を使った町おこし」が盛り上がっていて、サバそのものにも注目が集まっていた。各地でサバ関連のイベントやグルメ開発が展開されており、東京でもブランド鯖のPRショップやサバ専門店がメディアで取り上げられることも多かった。


さらサバの味わい方に関しても「洋食化」という流行が起きる。
各サバ専門店はパスタ、アヒージョ、グラタン、サラダ、カルパッチョなど、フレンチやイタリアンにアレンジしたメニューが登場。特にトルコ・イスタンブールの名物でもある「鯖サンド」が注目され、それを日本風にアレンジしたものが登場。日本の鯖サンドは、焼き鯖だけでなく、干物、味噌煮、シメ鯖なども“サンド”し、パンも、クロワッサン、トースト、バゲットなど様々で、味付けも和風、エスニック、フレンチなどバリエーション豊か。「日本風鯖サンド」として、多くのメディアで特集されブームとなった。

2016年頃には「ナンバーワン缶詰」に

その後2016年頃には、「サバの美容・健康効果」が、テレビをメインとする多くのメディアで取り上げられ、美肌、ストレスケア、血管のアンチエイジング、脳の活性化効果、生活習慣病のケアなど、「万能健康食品」として扱われるようになってくる。(※サバ缶を食べたからといって必ずこれらの効果が得られるとは限りません)
この後、サバ缶の商品ラインナップも増え、焼き鯖、野菜入り、西京焼き、竜田揚げ、燻製など、多種多様の展開に。

そしてついに2016年のサバ缶の生産量は3万7117トンと過去最高になり、ツナ缶を上回る。長年ナンバーワンだったツナ缶に打ち勝ったという記録は、人気をさらに押し上げることになった。
マルハニチロによると、それまでサバ缶があまり親しまれていなかった西日本でのサバ水煮缶類の売上が、2017年10月からの6か月間で、前年の1.6倍以上にまで伸びたとされている。

バリエーション豊かな進化を果たすサバ缶

2度のブームの波を経て、2020年代までにサバ缶のバリエーションはさらなる進化をみせている。
近年の注目商品をいつくか挙げてみよう。

凍らせて味わう納涼サバ缶「No.38(ナンバー・サーティーエイト)」シリーズ
「アバランチ」は大阪の広告制作企業が扱うサバ缶のシリーズ。調味料を選りすぐり、缶を開封したときのビジュアルまで追求。おしゃれなパッケージが贈り物として人気だ。
「夏に味わいたいさっぱりとした味わい」としてリリースされた「No.38 MILD SOUR MARINÉ/風味爽やか彩りマリネ仕立て」は、なんと「凍らせてから頂く」のがおすすめとのこと。溶けてきてシャリシャリになってから食べると、サイダーのような感覚もあってさらに美味しいそう。
2020年12月には「No.38 MISO GARLIC OIL/味噌と辛味感じるガーリックオイル仕立て」という冬向けの商品がリリース。トウガラシのほどよい辛味と、味噌のコクを活かすことで、深い味わいのある斬新な洋風鯖味噌としてまとまっている。

一品料理レベルのサバ缶 「BISTRO缶 美味しいトマトさば」
千葉県銚子市の「信田缶詰」が2019年10月発売にリリース。鯖の旨味を存分に引き出した、「料理」として作られ、コンセプトは「鯖の旨味を、トマトの風味で引き出すこと」。熱を加えず低温で破砕する手法によって、濃縮したトマトペーストと、奄美諸島産のサトウキビ100%をからつくった「スダキ糖」を入れて、鯖の美味しさを引き出している。メーカーが「料理として成立していますから、手を加えずに食べてみてほしい」とコメントするほど、ナイフとフォークが似合うサバ缶と言えそうだ。


健康効果が倍増!「強健サバ缶」
「強健サバ缶」は、亜麻の種から採取できる「アマニ油」を使ったサバの健康効果を強化した商品。アマニの先駆者である「ニップン」とタッグを組み、アマニ油とサバからそれぞれ「オメガ3」を摂取できるという点が魅力。アマニ油の風味で鯖がまろやかに仕上がっていて、健康効果だけでなく「味」でも高く評価されている。
福井県立若狭高校の生徒がパッケージデザインをしたことも話題で、「サバァマニ男爵」というキャラクターが印象的なサバ缶は、小浜市のふるさと納税返礼品としても親しまれている。


地域活性化のために「八戸サバ缶バー」
青森の人気ブランド鯖である「八戸前沖鯖」を採用。秋の早期からの温度の低い海水で育ったサバは、脂乗りがとても良く「サバの大トロ」とも。
「バーで色々なお酒を楽しむように、様々なサバ缶を味わう」という発想で、ハバネロ、トムヤムクン、アヒージョ、グリーンカレー、柚子胡椒、津軽海峡の塩の6タイプを2018年に発売。バリエーション豊かな味付けとお洒落でカラフルなパッケージも特徴。
2019年には青森県の定番調味料を用いた「スタミナ源たれ」も登場し、累計60万個以上を売り上げた。


郷土料理を缶詰化「百年床のぬか炊き缶」
「鯖のぬか炊き」と呼ばれる郷土料理を缶詰化した「百年床のぬか炊き缶」は、2019年に福岡県北九州市小倉の宇佐美商店から発売。
宇佐美商店は、一世紀もの歴史のあるぬか床を使った鯖のぬか炊きが愛されているお店で、三代目の宇佐美雄介氏は「小倉土産を作りたい」という想いから、贈り物として活用できる缶詰を作り、「店と同じ味を」という発想で試作を繰り返したそうだ。
パッケージデザインは地元のデザイナーが担当。1缶1500円と高額ですが、お土産として人気だ。

サバレンタイン⁈「鯖チョコレート風味(鯖チョコ)」
2021年のバレンタインデーには「スイーツ」としてのサバ缶が登場したのが「鯖チョコレート風味(鯖チョコ)」だ。
この商品を作った「岩手缶詰」は、「サヴァ缶」を手掛けたことで有名。サバのアレンジの広さを生かして、鯖チョコというチャレンジ性のあるものをつくり、『固定概念からの脱却と創造、時代への挑戦』をした」とのこと。
チョコの濃厚さとカカオの香りの相性がウリ。


3缶で1万円!「とろさばプレミアム缶」
とろさばプレミアム缶」は、なんと1缶3000円という超高級サバ缶。
銚子港で秋と冬に水揚げされる鯖のうち、0.05%しかない1kg超えのサバだけを使い、手作業で製造じたのち1年以上熟成させることでようやく完成。
高級料亭で出せるほどのクオリティだとアピールしている。


“味”だけでなく“見た目”もラグジュアリーな「keith缶詰」シリーズ
2019年10月に発売した「keith缶詰」は、釧路で水揚げされた脂質含有量20%以上の鯖だけを使っているサバ缶。
パッケージデザインを手掛けたのは、世界的に有名なラグジュアリーブランドに携わるグラフィックデザイナー美澤修氏。金箔と和紙を使った缶は「日本パッケージデザイン大賞2021」食品部門入選、イギリス「D&AD アワード2020パッケージデザイン部門で「Wood Pencil」を受賞、ドイツ「Red Dot Award」で「Brands & Communication Design 2020」を受賞するなど、非常に高く評価されている。



”サバ”をより身近な魚に。

コロナ禍で自炊機会の増加や健康志向、また備蓄食品としての観点からも、サバ缶の注目がまた上昇中だ。サバ缶の人気定着によって、サバの定番料理、アレンジ料理とが身近になった。
近年の日本国内の水産物消費量は減少傾向であるもの、サバは魚需要を回復させる有力な存在なのではないだろうか。

▼鯖トリビア:ポワソンダブリルとは鯖のこと。


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