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細野のやってる「ビジネス壁打ち」って何してるの?

フリーになってから「どんなお仕事をしてるんですか?」と聞かれることが増え、その度に「新規ビジネスの立ち上げ支援」とか答えてるのですが、どうもうまくお伝えできてる気がしなくて悶々としていたのですが、ちょっと分解してみたので公開させてください。

ビジネスのフェーズはどこが得意か?

まず、フェーズで言うと間違いなく0→1や0→0.5あたりだと思います。そもそも誰にどういう価値をどうやって届けるのかを一緒に考えることが大好きです。

そのフェーズは更に【着想】と【実現】の2つの構造に分かれます。

【着想】とはビジネスの初期仮説であり、誰にどんなサービスをいくらで届けて、どうやって利益を出し続けるのかの仮説のセットです。

【実現】はその仮説のセットが成立するかどうかを、リスクを最小化した実験を繰り返しながら、検証していくプロセスです。

このフェーズを経て「このビジネスは行ける!利益が出る!」と分かったら、まとまった資金を投入して本格的に立ち上げるようなイメージです。なので「0→1」「0→0.5」と僕は呼んだりしています。

【着想】アイデアの筋はどうやって壁打ちしているか?

とても残酷なことを言うようですが、ここの筋が悪いと、いくら【実現】を頑張っても絶対にビジネスはうまく行きません。もちろん、いい【着想】でも【実現】をうまくやらないと立ち上がらないのは事実ですが、【着想】が悪くて立ち上がるビジネスはありません。立ち上がるビジネスは絶対に【着想】がいいです。もうこれは絶対です。

そしてここからが本題なのですが、これまで一度も新規ビジネスを立ち上げたことがない人が、考える【着想】が一発目でめちゃめちゃ筋がいいことはほぼないんです。天才は別ですが、僕含む凡人はそんなことはあり得ません。

なので、たまたま新規事業コンテストに応募したら選考を通過した、とか、希望して(希望してないけど)新規事業部門に異動した、とかの人の【着想】が十分に筋がいいことなんて滅多にないわけです。(ここでは分かりやすくするために「筋がいい」レベルを「1」としています)

初めての新規ビジネスを考える人の着想レベルはせいぜい「0.5」といったレベルです(超感覚的)。そして、その人に対して僕が壁打ちする時は、「2以上」の力を出して掛け算をして「1以上」に持っていくわけです。

「壁打ち」とは、相手とアイデアを対等にぶつけ合って、あちらのA案とこちらのB案のどちらでもないC案を創造するプロセスのことを指します。

もう少し感覚的な話を解像度高く説明すると、元々の「0.5」というのが曲者で、要はビジネスとしては筋が悪いわけです。ただやりたいサービスは固定されてたりする。なので、そのサービスの原型を活かしながら「1以上」にしていくのってめちゃめちゃ難しい。

本音を言わせてもらうと「何となくやりたいことは分かったから全部最初からビジネス作り直させて」なんですが、それをしてしまうと、そもそも起案者の当事者意識が消えてしまい、後半の【実現】を走りきる気力と体力がなくなってしまいます。

だから、元々のその人の情熱部分は残しながらも、壁打ちのプロセスを通じて「1以上」のアイデアにしていく力量が求められます。これがめちゃめちゃ難しい。

細野の伴走イメージ

本人にとっての最初のアイデアの面白さと
ビジネスとしての儲かり度って反比例しがちなので、トレードオフ線上に乗らないような仕掛けを考えて一緒に実験して、世に生み出すことをしたいのです。

絶対にやる気分岐点を下回っちゃダメだし、やる気をお金とか名誉とかそういう外的な刺激で吊り上げちゃダメ。そのうち枯れる。

そして、これまた残念な事実なのですが【着想】の部分って、簡単には伸びません。生まれてこれまで、どれだけ世の中を普通の人とは違う視点で見る訓練をし、世の中にある「うまい仕組み」に興味を持ち、自然と学んできたか、またそれを毎日頭の中でどれだけ現実世界に適用するシミュレーションをしてきたかの場数がものをいうので、ちょっとやそっとトレーニングしただけでは「1以上」の【着想】をすることは無理です。

よく、「何度も失敗した先に成功する」という話を聞きますが、それは【着想】は「1」以上の人が【実現】フェーズで行ったり来たりしながら、成功する話であって【着想】が「1未満」の人が1000回頑張っても1回も成功しないと思います。

「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」という名言を残したエジソンは別の会見で「私は1%のひらめきがなければ、99%の努力は無駄になると言ったのだ。なのに世間は勝手に美談に仕立て上げ、私を努力の人と美化し、努力の重要性だけを成功の秘訣と勘違いさせている」と発言した、というエピソードがあるそうです。

つまり【着想】はそれだけ大事だということです。そして自分が「1未満」の【着想】力しかないという場合は、迷わずに「2以上」の人に壁打ちをお願いしてください。じゃないといつまで経ってもうまくいくビジネスアイデアが練り上がりません。

【実現】どのように実験支援しているのか?

次に【実現】の部分の壁打ちでやってることを解説します。

【実現】と言っても0→1や0→0.5のフェーズのプロセスにおいて一番重要なのは、そのビジネスがうまく行くかどうかをめちゃめちゃ小さい規模で実験することです。

多くの人は「プロトタイプ」や「ノーコード開発」というカッコいい言葉に踊らされて、すぐに何らかのプロダクトを作ろうとします。もう本当にします。要はただ思いついたものを作りたいだけなんですよね。

その前にやるべきことがあります。

まずは顧客になり得る人に今現在どういう代替手段を使ってるかをヒアリングします。最低3人ぐらいですかね。これをN3デプスインタビューと呼んでいます。インタビューというと、すぐに「こんなサービスがあったら使いたいと思いますか?」とか聞きたくなっちゃうのですが、それは堪えて「今現在こういう困りごとってありますか?その解決のために何をされてますか?」と事実を聞きます。

そこで、ああ、確かにお金を払って解決したいぐらいの課題を抱えてるな、とか、代替手段よりも自分が考えている解決策のほうがいいな、と自信を持てたら次の実験フェーズに移ります。

次は「N1実験」と呼んでいますが、1人の顧客に実際にサービスを無料で提供してみて、想定している価格でリピートしてもらえそうかを実験します。もちろんシステムやプロダクトはないので、自分で手運用で本番と同じかそれよりもリッチな価値を提供します。ここでお金を払ってもらえる手応えがないならば、仕組化したらより価値が下がるので、余計に払ってもらえるはずがないと判断します。(注意:プラットフォームビジネスの場合は売り手と買い手両方が大量にいないと価値を体験できないので、その場合はN1実験は行えません)

このフェーズは、一緒に実験方法を考えて、実験結果を一緒に考察します。ここは、センスは必要なく、とにかく事実に目を向けて高速実験を繰り返すので、経験を積んで力量を伸ばすことができます。

最初は「実験方法の辞典みたいなのありませんか?」とか眠たいことを聞かれるのですが、実験方法はケースバイケース過ぎるので、その時その時にクリエイティブに考えるしかありませんが、実験方法に求められるクリエイティブは、ビジネスそのものの【着想】と比べるとはるかに簡単なので、何度も何度も実験していく中でセンスが磨かれて行きます。

実験方法のバリエーションを知りたい方にはこちらの書籍がおススメです。

結局何が言いたいか?

【着想】が「1未満」の人は「2以上」の人と一緒にビジネスアイデアを考えましょう、ということです。

自分で考えたり「1未満」の何人かでブレストしたりして「1以上」になることはあり得ません。だって0.5×0.5×0.5×0.5=・・・・ですもんね。

だからよく企業内で行われているビジネスコンテストのやり方って根本的に間違えていると思うんです(初めて思い切って言っちゃいます)。

最初のビジネスアイデアを社員から募集して、その後に外部メンターを付けて、【実現】部分を伴走させるビジネスコンテストプログラムが多いのですが、そのやり方だと絶対にうまく行きません。

最初の【着想】部分から「2以上」の実力のメンターを付けて、一緒にビジネスアイデアを考えてもらわないと無理だと思います。そして、更に残念なことに「2以上」の実力を持った人が、生まれて初めてビジネスを考える「0.5」とかの人のビジネス壁打ちを一生懸命やってくれることはありません。外部の支援会社からアサインされるのはせいぜい「1.2」とかの人です。そうすると「0.5×1.2」なので「0.6」にしかなりません。

だから、企業内ビジネスコンテストプログラムで、うまく行った事例って少ないんです。

じゃあどうしたらいいか?

中途半端なメンターを【実現】フェーズからつけるのが一番意味がないとお伝えしました。

じゃあ、逆にすればいい。

「2」とか「3」とか、もっと言うと「10」とかのレベルの人に【着想】の部分から入ってもらって、初期のビジネス仮説を組み立ててもらえばいいんです。もちろん全て丸投げでは、その後の【実現】プロセスを実行する社内の人間がいなくなってしまうので、社内のエース級をアサインして、その人たちと一緒に壁打ちをして初期のビジネスアイデアを組み上げればいいんです。

もちろん【着想】レベルの高い人でも100発100中で当てられるわけではないので、いくつものビジネスアイデアを一緒に生み出して、それを複数同時に社内のエース級で【実現】させる。もちろん【実現】フェーズも伴走してもらってもいいですが【実現】フェーズはある程度学習能力の高いエース級であれば、習得して自分たちで回せるようになります。

というわけで、今後、面白いビジネスが生まれてくるには、世の中にいる【着想】が「2以上」の人々を初期のアイデアづくりのタイミングから巻き込んで壁打ちをしまくるような使い方が大事なんじゃないかという提言でした。

一刻も早く、世の中で行われているビジネスコンテストプログラムの類が、そうシフトしていただけることを願って止みません。審査員として薄謝を支払ってる場合じゃなくて、【着想】フェーズでそういった人材を(価格が高くても)活用する企業が増えて欲しいです。そんな企業さんとご一緒したいです。

最後に告知させてください。

僕が代表理事をさせてもらっている一般社団法人Fukusenでは、まさに今回お話したような壁打ちを企業相手ではなく個人相手に行っています。100発100中とはいかないですが、全力で【着想】を「1以上」にすべく、細野が頑張って壁打ちしていますので、もし自分でスモールグッドビジネスを立ち上げてみたいという方がいらっしゃったら覗いてみてください。


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