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「技術士ハンドブック」を読む(2/n)【#デザレfm:38】

1章 安全工学

では早速、1章の安全工学から読んでいきます。

1-1 概要
まずは言葉の定義ですね。
安全とは何でしょうか。国際規格ISOでは、安全とは受け入れられないリスクからの解放であると定義されています。受け入れられないリスクからの解放。では、リスクとは何か。これはですね、被害の発生確率と被害の大きさの組み合わせ。リスクとは、被害の発生確率と被害の大きさの組み合わせと定義されています。大きな災害、被害はもちろんですけれども、小さな災害でも頻繁に発生すると危ないと感じますので、この定義は受け入れやすいでしょうね。

そして、安全と安心。
安全と安心というのは一緒に語られることが多いですが、これらは別のものです。工学の分野に関して言えば、安全というのはリスクと一緒に数量的に評価できるものです。しかし、安心というのは人それぞれ感じるもので、例えば航空機の事故が起こる確率というのはとても小さいですね。なので、航空機に安心して乗ることができる人もいれば、そんなことを言われても高いところでしょうというところで不安に感じる人もいる。ただその不安に感じる気持ちというのもまた無視できないのが難しいところではあります。また同じような話で、信頼性と安全性というのも一緒に語られることがあります。

ただこれも正しくはありません。
機械の信頼性というのは、機械もしくはその工製品だったり設備というものがある条件の下で、ある期間、故障せずに要求された機能を満たし動き続けること。これを信頼性と言いますね。しかし機械というのはいつか故障するものです。故障したっていいじゃないか、機械だもの、爪をという感じですね。いつか故障します。ただ故障したときに機械を引き起こさない、これが安全性ですね。安全工学というのは、この安全性の確保を重要視しています。国際規格というのはリスクゼロである安全がありえないのであれば、安全という用語を使うこと、これを控えるべきであると述べているそうです。

安全靴ってありますよね。つま先に鉄板が入っている安全靴。あれもですね、ある程度の重さのものであれば、つま先をつぶさずに守れるんですけども、それも限界がありますね。なので必ずしも安全と言えないんじゃないかというところで、安全靴ではなく保護靴。同様にヘルメットもですね、安全ヘルメットではなく保護ヘルメットと呼ぶべきだと、そう述べているそうですね。ただ安全靴は安全靴って言っちゃいますよね。逆に保護靴というのは聞いたことがなくてですね、みどり安全のホームページを見てみても、安全靴って書いてましたね。

同様にフェールセーフという用語もPL法との兼ね合いでアメリカだったりフランスでは実質的に使用できないそうです。

労働安全

次に1-2 労働安全。
まず労働災害、労災についてですね。その災害の代償にかかわらず、労災っていうのはなかなかなくならないですね。足を踏み外して台から落ちちゃったとか、つまづいて転んじゃったとか、部品の角、エッジで手を切っちゃったとか、そういう細かい労災もですね、なかなかなくならないです。従来の安全推進っていうのは、安全にコストをあまりかけないで、人の、作業者の教育訓練にお向きを置いてきた部分が多くあります。しかし人がかかわっている以上、完全な安全っていうのはあり得ない。機械は壊れる、人は間違えるということを受け入れる必要があります。

また今後の労働災害防止への課題として、高齢者、高齢化の問題がありますね。作業者の高齢化、高年齢の労働者が会社では増えています。その能力っていうものを発揮できるようにすること、これも大事なんですけれども、労働災害の総発生件数のうち、約半数近くが50歳以上だそうです。当然ね、年齢を重ねていくと体力の低下っていうのがありますので、その労働災害を発生させないためには、高所作業をなくすとか、重たいものを持たなくていいようにするとか、不自由な姿勢での作業がなくなるようにするとか、そういった改善が必要になります。

これはですね、高齢の労働者だけではなくて、普通の一般の若い労働者もそうですし、体の不自由な方もいますよね。また女性の労働者というのも最近増えていると思いますけれども、そういったいろいろな方が働きやすい環境につながる、そういった改善にもなります。

労働災害の事故の方っていうものを見てみると、製造業では挟まれ、巻き込まれが32%、転倒が14%、切れ、擦れっていうのは13%、墜落、転落っていうのは10%だそうです。

機械安全と電気安全

次は1-3、機械安全ですね。
機械安全を構築する方法っていうのは、JISの機械類の安全性設計のための基本概念というところで規格、規定されています。機械類のリスクを低減するための手法として、リスクアセスメントとリスク低減方策、この2つを繰り返し行うことが必要です。

まずリスクアセスメント。
リスクアセスメントの手順としては、まず機械類の制限の仕様として、仕様上の制限、空間上の制限、時間的制限というものを定めます。そして、その制限の中で危険源を童貞し、そのリスクというものを見積もって評価をします。このリスクの評価の結果、リスクの低減が必要となれば、そのリスク低減方策というものを実施します。

このリスク低減方策として、3ステップメソッドが要求されています。
この3ステップメソッドの3つのステップとは、

1.本質的安全設計方策
2.安全防護及び負荷保護方策
3.使用上の情報です。

1つずつ説明していきましょう。

まず最初の「本質的安全設計方策」です。
これは3ステップメソッドで一番に優先して取り組むべき重要な方策です。

本質的安全設計方策とは、危険源を除去することで、あるいは機械と人との相互作用を適切に設計することでリスクを小さくします。
では具体的にどんな設計をすればいいのか、いくつかあるんですけれども代表的なものを紹介します。
まず対象とする機械に動く部分がある場合、まず機科学的にそれに触れないように、そして体の一部が隙間に入らないように、その隙間を小さくすること。逆にその動く部分の隙間というものを十分広げてあげることで、押しつぶされないようにすること。
それって具体的に何ミリなの?って思いますよね。感覚的に20ミリぐらい隙間があればいいかな、指がつぶれないかなと、なんとなくで設計してはダメです。それもちゃんとJISで規定されています。これですね、安全距離っていうんですけれどもJISのB9707、B9708、B9711の3つの規格で規定されています。ぜひそちらの方を参照してみてください。

あとはですね、物理的な側面でいうと、その機械が発生させる、発生する力というものを十分小さくすること。動く部分の質量、速度というのを十分に下げること。これも危険源を除去することになります。

次に3ステップメソッドの2つ目、「安全防護及び付加防護方策」です。
これは第一優先となる「本質的安全設計方策」の適用ができない場合、そういった場合に検討しなければいけない方策です。

まずは「安全防護」
機械に動作する部分がある場合、人が触れないようにしたり、押しつぶされないように隙間を大きくする、そういった対策が取れない場合があると思います。そんなときはですね、そもそもそういう危険源に近づけないようにフェンスだったりガードというものを設置しましょうということですね。もしくは機械に近づいたら機械が停止するようにライトカーテンのようなセンサーを設置しましょうという方策が安全防護です。

そして、および「付加防護方策」。
これはですね、例えば非常停止ボタンを設置することですね。危ないと思ったら押す赤い丸いボタンです。あるいは機械の中に閉じ込められたときに、例えばドアとかですね、ドアのロックを解除するボタン、そういうものを機械の中に設置しておくというのもこの付加防護方策の一部です。

最後、3ステップメソッドの3つ目が「使用上の情報」ですね。
例えば銘板というものがこれにあたりますね。手で転んだら怪我するよとかですね、レーザーが出てるから見たら目がやられちゃうよとか、熱いから危険だよという銘板を注意する、注意だったり警告ですね。そういった銘板を機械に張るというのが最後の使用上の情報にあたります。マニュアルというのもこれにあたるんですかね。ちょっとそこは詳しくないんですけども、注意喚起をすると、最終手段ですね。

以上の3ステップメソッドの順番でリスクを低減できたと思ったら、はじめのリスクアセスメントに戻ります。そして再びリスクを見積もってリスクを評価して、そこでリスクが十分に低減できたと判断されたら、そこで機械安全が構築できたとなるのです。

電気安全

電気については専門じゃないので割愛しますけれども、電気的な安全対策として感電を防ぐ設置、アースというものがありますね。

このデザイン・リビューFMの第36回、科学系ポッドキャストの日、テーマ地球の回で、このアースについて話していますので、ぜひそちらのほうも聞いてみてください。

ロボット

産業用ロボットというのも機械と同様に機械安全の構築が必要です。一般的なロボット、よく見るロボットというのはフェンスの中で動いていますよね。最近は協働ロボットのように、人と同じ空間で一緒に作業ができるロボットというのの利用も増えています。

なぜそれが最近増えたかというと、単純な話で規制が緩和されたんですね。日本では、出力80kW以上の産業用ロボットというものは柵で囲って人間と隔離する必要があったんですけれども、2013年にこの規制が緩和されて、ISOの定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じれば、80kW以上でもOKとなったんですね。緩和はされたんですけれども、機械安全というものはもちろん必要です。人と同じ空間で作業する場合、人とロボットが接触することが当然考えられますね。

このとき、本質的安全設計となっている必要があり、それは人に加える力、ロボットが加える力というものを制限しましょう。制限しなさいということですね。この人と協働ロボットの接触というものは、過渡的接触と純静的接触の2パターンに分類できます。

ISOではこの接触時間、人とロボットの接触時間が0.5秒以下というものが過渡的接触、逆にその0.5秒以上続く場合が純静的接触とされていて、それぞれ対応すべき方策が異なります。

また、その接触する場所が頭なのか顔なのか、またまた胸なのか足なのかというところで許容される力が異なってきますので、そちらもちょっと規格の方法を確認してみてください。

プロセスプラントの安全

これ、化学とか石油のプラントでの安全についてなんですけれども、こちらも専門ではないのでちょっと割愛します。

燃焼と爆発

こちらも専門ではなくて、私がいる業界、工作機械業界に無関係とはなかなか言えないところはあるんですけれども、例えば工具で金属を加工するときにワークと工具にかける切削液、クーラントとも言いますね。

このクーラントには水溶性と油性があります。
工作機械メーカーとしては水溶性のクーラントを使ってくださいと推奨しているんですけれども、お客様によっては工具の寿命が長くなるからとか、加工面が良くなるからとか、そういった理由で油性のクーラントを使いたいという要望があります。

この油性クーラントの場合は加工時に火花が飛んでしまうと発火する恐れがあります。なので、自動消火装置というものを工作機械につける必要がありますね。この自動消火装置というのはお客様の責任でつけてもらうことが多いというか、基本的にはそういう流れになっています。

リスクアセスメント

リスクアセスメントというものについては先ほどの機械安全のところで話したので説明は割愛するんですけれども、大事なことはリスクアセスメントの資格を持っている人と実施することですね。この機械安全についての、リスクアセスメントを含めて機械安全についての十分な知識を持っていることを認証するセーフティーアセッサーという資格があります。こちらの資格を持っていることと行うことが大事ですね。

認証と国際規格

主な認証制度として、大きなものだとCEマーキングがありますね。
ヨーロッパに機械を売る場合には必要なものです。これはアメリカであればULマークがあって、台湾ではTSマークがあって、韓国ではKS規格というものがあるんですね。この対応が本当に面倒くさいと言ったらあれなんですけれども、大変なんですよね。各輸出する国に合わせて対応することが必要です。

安全に関連する重要な用語と定義

今までの話で出てきた用語についてまとめた内容なので、こちらも割愛しましょう。

以上で一章の安全工学が終了です。


だいぶ長かったですね。90ページぐらいありました。
重要な、何よりも安全というものを最優先で考えなければいけないので、内容盛りだくさんという感じでしたね。

今回はここまでとしましょう。

2章の環境からはまた次回お話ししたいと思います。

クロージング

今週の製造業ニュースですね。製造業にも異世界がやってきました。
週刊モーニングで、異世界町工場無双。信頼と実績の異世界制服という漫画の連載が始まるそうです。

これは熱いですね。激熱ですね。

紹介するページ、紹介する絵があって、そこに書かれている言葉を読んでみようと思うんですけども。

カナギは鎧。魔法のような技術力。そしてこれがフォークリフトの底力。
業界騒然。異世界初の神術。コロナ不況で廃業寸前の町工場の職人たち。
とあるマシンの修理中に不良の事故で勇者と魔王が戦う戦場に転生。
生き残るために日本の技術力をいざ異世界へ。

ではお疲れ様でした。ご安全に。

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