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クリスマスソングをプレイリストから削除するだけの祝日の朝 指先は怖がったままブロックもしないで降らない雪を待つ昼 思い出を屑に変えながら丁寧にみかんの筋を取っている夜
何回も恋とは言えない恋をして朝焼けばかりひとりで見上げる シーソーはいつもわたしに傾いて理想の恋とか蹴っ飛ばす足 ドーナツの穴のところだけ食べているあなたの海は味のない日々
冬の雨 ハッピーエンドが足りなくて心の穴に詰めるラブソング 小説の全部がキスで終わるなら滅びる星のように明滅 わたしさえハッピーエンドにするような雨に濡れている強い手のひら
額縁にいれないでいる思い出が忘れられないしずかな廊下 月光が満たす透明なグラスには飲めない後ろめたさが育つ 意味のないラララのような身軽さで残りの人生埋めてしまいたい
平熱の顔を近づけて真夜中のふたりきりでもまぶたは閉じない パーソナルスペースを埋めてゆくたびにふたつのずれたメトロノームが ルームキーふたつの孤独は埋まらずにブラッドムーンでもおかしくなれない
街中に歌が聴こえる夜にいてあなたが先に各駅に乗る 手のひらに缶コーヒーを残す手に指輪も嵌めてあげられないまま あんなにも歌に聴こえた雨音でイルミネーションも滲む終電
しあわせな歌が聴きたい平凡な日の窓際に飾るみたいな 変わりたいから新調する照明がステンドグラスみたいな祈り 誕生日みたいに放した風船が飛び立つ帰りの駅のホームから
さよならの残り回数二になってうつくしい瞬きをするカメラ 流星はひとつも見えない帰路に降るきれいに赤く染まれない葉が 1.5メートルの距離 近くても数百光年先にある星
めちゃくちゃにされたくなくてさみしくて電話をかける雨の日の夜 増えていく発信履歴 冷めきったカレーライスを飲みこめば朝 補助輪のないまま手放す微笑みが電話越しでも見える秋風
しつれん、と口に出したら遠くなる隣にあった季節の匂い 真剣という気遣いで幾重にも砕かれているガラスの身体 予想より傷ついてない 手の爪を塗り終えるまでのしずかな夜更け
日曜のなんてことないさよならをするためだけに来た君の部屋 やさしさが宙ぶらりんになっていてどちらも正義の月9のドラマ 君がする呼吸のたびに海鳴りが聴こえて涙がさらわれる手に
産声も忘れてしまったスマホから洩れる光で涙に気付く 時間だけ費やしている公園のもみじは何度落葉しても 足音が反響しない帰路をゆく生きているのか分からない星
虹なんてもうしばらくは見ていない俯くばかりの花の真似して 風船が萎むみたいに俯いたひとみに濡れて艶めくアスファルト 傘越しの空は何色 水たまりをヒールが叩けば跳ねる水滴
隕石が落ちてくるような確率で生まれた恋を沈めるシンク 殺すのは自分の心だけでいいウミガメが泣く夜の砂浜 アリバイを作るみたいに会う深夜 感傷的な星の電飾