辻野葵果

辻野葵果と書いてつじのきかです。名前を変えました。毎日投稿中です。短歌の他には、音楽と…

辻野葵果

辻野葵果と書いてつじのきかです。名前を変えました。毎日投稿中です。短歌の他には、音楽とゲーム、占いが好きです。

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連作 春生まれではない(四十首)

まなうらの息のできなさ 恋と愛 悲鳴のようにネイルがずれる ままごとのよう心臓に感情を覚えさせたくなかった夜明け 中指のブラックリングが揺らいでる海の深さで窒息をする 隣室の住人みたいに遠ざかる星 なにひとつ手に入れられない 深々と抱きしめられる 黎明のような毛先でわらってくれるな 君という感情 春の階段を上がった先に靡かない骨 直立のうつくしいひと 頑なな鎧のようで最初の萌芽 落涙の跡をぬぐっていくような低い声から生まれる酸素 リネンでも拭き取れなかった横顔の君をあらわす数

    • 連作 名もない化学反応

      ちぎったら燃えだしそうな花びらで花占いの予行練習 香水をつけた手首に触れるなら名もない化学反応で溶けたい はつなつの花火みたいな手触りの夜は光ったままで消えない

      • 連作 なんてことない涙

        なにひとつがんばれなくて積もる日々中途半端に白い塗り絵だ やさしいが信じられないぬいぐるみをどれだけ抱いても壊れないように くるしいの味がもうよくわからずになんてことない涙を流す

        • 連作 イルカのジャンプ

          水たまり踏み抜いていくサンダルがイルカのジャンプみたいに跳ねる 青空の見えない果てをゆくように手から離れた風船の色 宇宙には何味の朝があるだろうキッチンからは紅茶の香り

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        連作 春生まれではない(四十首)

        マガジン

        • 自己紹介
          4本
        • 三首以上の連作短歌
          2本
        • 365短歌(2022)
          358本
        • 365短歌(2021)
          47本

        記事

          連作 明日は忘れる

          新作がつづく六月のようなこの感情線はジェットコースター 明日から忘れる 初夏の強炭酸みたいな後味 明日は忘れる 夜更かしはしないおやすみはひとりきり前歯で噛んだ唇の味

          連作 明日は忘れる

          連作 ゆびさき

          ずり落ちる眼鏡を直すゆびさきは溶け落ちそうなキャンドルの指 もうずっと小指で約束していないはつなつの午後がさみしく揺れる ゆびさきが躊躇いがちに触れていく波打ち際のような視線に

          連作 ゆびさき

          連作 街灯、コンロの火

          街灯の火ほどちいさな頭痛でも庭を襲ってくるつむじ風 くちびるでやりたくないと言いかける再度コンロの火をつけながら 右手首をつかむ 花火がひらく前の爆発的な火を持つ手のひら

          連作 街灯、コンロの火

          連作 はつなつのぬるさ

          はつなつのぬるさ 差し出した手のひらを感傷みたいに濡らす夕立 右頬を湿らす雨はやわらかくかき消されても弾む雑談 軽量の雨傘みたいに飛びたっていけそうな夕暮れの紫

          連作 はつなつのぬるさ

          連作 恒星になれない

          とめどなく星が降るのを待っているみたいな夜更けみたいな理科室 流星の最後のひかりを湛えてるようなヒールを鳴らさずにゆく 恒星になれないような眼をしてもビー玉は鳴る 夏を震わせて

          連作 恒星になれない

          連作 心に接いで

          白昼夢の終わりみたいに励まされ間違い探しの曇天をゆく はつなつの底から上がってきたように明度の低いラムネの蒼色 誤魔化してばかりの生活 あなたから受け取る言葉を心に接いで

          連作 心に接いで

          連作 信号は赤にもなるよ

          どこにでもある悩みらしい 信号は赤にもなるよとおなじ励まし 弁当のふりかけご飯が豪華でもずっとどこにも行きたくなかった はつなつは洗濯日和でおひさまの匂いがしているきみのやさしさ

          連作 信号は赤にもなるよ

          連作 金の折り紙

          なにもしていない土曜の照明を消すときに折る金の折り紙 いくつもの夜を通してもまだわたしの青い溜息は飲み込めなかった 得意ではないものよりも好きなもの お菓子の家のような心で

          連作 金の折り紙

          連作 ポイ捨ての山

          楽しみにしていたこともポイ捨ての山の裾野に沈みゆく初夏 どこまでがいわゆる普通で炭酸が流れる喉の苦しみみたいで しかたない それで諦められたなら水風船はしずかにしぼむ

          連作 ポイ捨ての山

          連作 夏史上

          ミルクティーの味に落ち着くはつなつの一方的な緊張の席 ステーキを切り分けるときの両の手を見せつけながら逃げ去ってゆく 夏史上きれいに畳めたコピー紙も神の力でずれる運命

          連作 夏史上

          連作 抱いてクーラー

          勝つことのできない夜の、銀で塗りたくなる雲に隠れた三日月 背だけをつめたく抱いてクーラーのわたしをさみしくさせる冷風 夜に立つとき冷ややかな一瞥をくれるわたしの中のひかりが

          連作 抱いてクーラー

          連作 乱気流の中心

          現状は運転見合わせ はつなつに拒まれているわたしの祈り 乱気流の中心それはそうとしてビニール袋も舞ってない道 雨脚は弱まずきみの尾のようなさみしさからも温度を奪う

          連作 乱気流の中心