辻野葵果

辻野葵果と書いてつじのきかです。名前を変えました。毎日投稿中です。短歌の他には、音楽と…

辻野葵果

辻野葵果と書いてつじのきかです。名前を変えました。毎日投稿中です。短歌の他には、音楽とゲーム、占いが好きです。

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連作 春生まれではない(四十首)

まなうらの息のできなさ 恋と愛 悲鳴のようにネイルがずれる ままごとのよう心臓に感情を覚えさせたくなかった夜明け 中指のブラックリングが揺らいでる海の深さで窒息を…

辻野葵果
1年前
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連作 夜闇にアイスココア

定位置に戻して夜とぼくたちの気体みたいな境界線を 七月の終わりみたいな夜闇にアイスココアをかき混ぜている 星空もぬるい日曜 エアコンの不調にひとり喉を鳴らした

辻野葵果
18時間前
8

連作 向日葵の影

ひらくのがまた怖くなっていくまぶた皆んな同じ顔で睨んで 死神の気配が濃くなる夕暮れのエレベーターのひらく瞬間 くちびるをやさしく噛んでからひらく 向日葵の影がい…

辻野葵果
1日前
8

連作 よろこびは

手羽元の骨だけ残す よろこびはほとんど知らずに育ちましたが 無視される程度の人間 感情を封じて椅子に座っているだけ 置いてきてしまった痛み今頃は代わりに打上花火…

辻野葵果
2日前
10

今日は短歌の連作の投稿をおやすみします。たまにはゆっくりと読書をしたりして、インプットの時間を作ろうと思います。返信などの諸々は今からしようと思っているので、少々お待ちください。

辻野葵果
3日前
10

連作 ひどい夕立

なにもない手のひらに降るエミネムのラップみたいなひどい夕立 なにもないことを痛感させられるひとつの傘を右手で使う なにもないかなしみもなくサンダルに浸水してくる…

辻野葵果
4日前
11

連作 考えられない暗転

七月の眠気に沈んでいくからだ 何も考えられない暗転 寝るために理由は要らない溶けるのを待たずに食べるスーパーカップ 海の底より引き揚げる魚のように突然覚める夢が…

辻野葵果
5日前
12

連作 年中海を

空き瓶のならんで雨を待つようにわたしも裸足で待っている海 砂浜に埋めるサンダル帰らないつもりで腕を引いていくだけ ばかのまま年中海を見ていても誰も見つけてくれな…

辻野葵果
6日前
13

連作 牛乳瓶六つ

夏の底、洗い損ねた牛乳瓶六つ溜めたらあなたに会える 片耳を外したイヤホンでも聞こえなくてまぶたの下りていく音 はつなつは遠のいていく劣化する思考が痛いくらいの陽…

辻野葵果
7日前
7

連作 ゼリーに沈む

躊躇ってみせているだけ 心なしか艶やかに見える苺のタルト 口端に引っかかっていた涙粒ゼリーに沈むフルーツみたいに 繰り返す夕焼けみたいな日常でまだデザートを頼め…

辻野葵果
8日前
12

連作 ボーカルの真似

落ちているゴミは拾わず踏みもせず唇だけで微笑んでいる ボーカルの真似をしながら七月の午後を駆け降りていく ストローを噛みつつ帰路は月とゆく街灯の影を踏みながらゆ…

辻野葵果
9日前
13

連作 床の模様

忘れられるものなら忘れている夜の下振れたまま戻らない思考 夜闇が産む怪物のような虚無感 夜更けすらうとましくなる 感情の目元を見るのも気だるい日床の模様にばかり…

辻野葵果
10日前
7

連作 青じゃない

ときめきが止んだみたいに昼の月は残酷なまでにばらばらに散る 居場所などひとつもなくて七月の自室で作る強い乱気流 無意識の期待が痛い 青じゃない横断歩道を渡りたく…

辻野葵果
11日前
14

連作 みかんゼリー

ていねいに傷つけるように真夜中の森を目指して夢中を駆ける スプーンで掬えるひかりではみかんゼリーがいちばん鮮やかで好き カーテンを閉じれば夜で明日が来るまできみ…

辻野葵果
12日前
11

連作 八月の覚めない夢

日焼け止め塗り終えて今やりきった気持ちで今日は急行に乗る やさしさの欠片もなかった青空を受け止めるさみどりになりたい ひかりには抗えないまま八月の覚めない夢のよ…

辻野葵果
13日前
9

連作 生きたいは付箋

あかるさをほとんど失くして笑う雨、降らないねって繰り返す話題 必死さがないわたくしの生きたいは付箋のように剥がせたりする ほんとうに未遂で終わってよかったといえ…

辻野葵果
2週間前
12
固定された記事

連作 春生まれではない(四十首)

まなうらの息のできなさ 恋と愛 悲鳴のようにネイルがずれる ままごとのよう心臓に感情を覚えさせたくなかった夜明け 中指のブラックリングが揺らいでる海の深さで窒息をする 隣室の住人みたいに遠ざかる星 なにひとつ手に入れられない 深々と抱きしめられる 黎明のような毛先でわらってくれるな 君という感情 春の階段を上がった先に靡かない骨 直立のうつくしいひと 頑なな鎧のようで最初の萌芽 落涙の跡をぬぐっていくような低い声から生まれる酸素 リネンでも拭き取れなかった横顔の君をあらわす数

連作 夜闇にアイスココア

定位置に戻して夜とぼくたちの気体みたいな境界線を 七月の終わりみたいな夜闇にアイスココアをかき混ぜている 星空もぬるい日曜 エアコンの不調にひとり喉を鳴らした

連作 向日葵の影

ひらくのがまた怖くなっていくまぶた皆んな同じ顔で睨んで 死神の気配が濃くなる夕暮れのエレベーターのひらく瞬間 くちびるをやさしく噛んでからひらく 向日葵の影がいっぱいのびる

連作 よろこびは

手羽元の骨だけ残す よろこびはほとんど知らずに育ちましたが 無視される程度の人間 感情を封じて椅子に座っているだけ 置いてきてしまった痛み今頃は代わりに打上花火を見ている

今日は短歌の連作の投稿をおやすみします。たまにはゆっくりと読書をしたりして、インプットの時間を作ろうと思います。返信などの諸々は今からしようと思っているので、少々お待ちください。

連作 ひどい夕立

なにもない手のひらに降るエミネムのラップみたいなひどい夕立 なにもないことを痛感させられるひとつの傘を右手で使う なにもないかなしみもなくサンダルに浸水してくる温度の不快さ

連作 考えられない暗転

七月の眠気に沈んでいくからだ 何も考えられない暗転 寝るために理由は要らない溶けるのを待たずに食べるスーパーカップ 海の底より引き揚げる魚のように突然覚める夢があること

連作 年中海を

空き瓶のならんで雨を待つようにわたしも裸足で待っている海 砂浜に埋めるサンダル帰らないつもりで腕を引いていくだけ ばかのまま年中海を見ていても誰も見つけてくれない週末

連作 牛乳瓶六つ

夏の底、洗い損ねた牛乳瓶六つ溜めたらあなたに会える 片耳を外したイヤホンでも聞こえなくてまぶたの下りていく音 はつなつは遠のいていく劣化する思考が痛いくらいの陽ざし

連作 ゼリーに沈む

躊躇ってみせているだけ 心なしか艶やかに見える苺のタルト 口端に引っかかっていた涙粒ゼリーに沈むフルーツみたいに 繰り返す夕焼けみたいな日常でまだデザートを頼める遠雷

連作 ボーカルの真似

落ちているゴミは拾わず踏みもせず唇だけで微笑んでいる ボーカルの真似をしながら七月の午後を駆け降りていく ストローを噛みつつ帰路は月とゆく街灯の影を踏みながらゆく

連作 床の模様

忘れられるものなら忘れている夜の下振れたまま戻らない思考 夜闇が産む怪物のような虚無感 夜更けすらうとましくなる 感情の目元を見るのも気だるい日床の模様にばかり目がいく

連作 青じゃない

ときめきが止んだみたいに昼の月は残酷なまでにばらばらに散る 居場所などひとつもなくて七月の自室で作る強い乱気流 無意識の期待が痛い 青じゃない横断歩道を渡りたくなる

連作 みかんゼリー

ていねいに傷つけるように真夜中の森を目指して夢中を駆ける スプーンで掬えるひかりではみかんゼリーがいちばん鮮やかで好き カーテンを閉じれば夜で明日が来るまできみのことを考えられる

連作 八月の覚めない夢

日焼け止め塗り終えて今やりきった気持ちで今日は急行に乗る やさしさの欠片もなかった青空を受け止めるさみどりになりたい ひかりには抗えないまま八月の覚めない夢のような熱さを

連作 生きたいは付箋

あかるさをほとんど失くして笑う雨、降らないねって繰り返す話題 必死さがないわたくしの生きたいは付箋のように剥がせたりする ほんとうに未遂で終わってよかったといえるのか 初夏 緑の木洩れ日