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タオルの感触

長男にはお気に入りのタオルがある。産まれたときに産院からプレゼントにもらったタオルである。

白地にパステルカラーのキリンの柄が入っていて、新品のタオルらしくふわふわしていた。産まれたばかりの頃はタオルケット代わりに使ったり、大きくなってからはお風呂あがりに体を拭いたり。こだわりの強い時期には、このタオルじゃなくちゃダメで、毎日のように洗濯をしていた。おかげで、2年間使い続けられてきたタオルは、ぺちゃんこでガサガサになってしまったけれど、彼にとっては相棒で、僕らにとっても戦友みたいなタオルである。

次男が生まれたときにも、同じタオルをプレゼントにもらった。びっくりするぐらい、白くてふわふわしていた。長男と過ごしてきた2年間は、あっという間だったけれど、使い込まれたタオルと新しいタオルの違いから、その時間の長さを改めて感じてしまった。

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次男の寝顔を見ながら、長男の小さい頃の動画を見る。今では完璧に踊れる「からだダンダン」も、1歳になりたてのころは座りながら腕を振るくらいしかできなかったんだ。あれ、こんなにしゃべれてなかったっけ?ちょっと前のことのはずなのに、覚えていない長男の姿がそこにはあって、愛おしさを感じるとともに、少し淋しさも感じてしまう。ぼくらは、ガサガサのタオルに慣れてしまっていたように、今の彼の姿に慣れてしまっているのだ。

隣で寝ている次男も、きっとすぐに大きくなってしまうんだろう。僕らは、子供は2人と決めているから、こんな赤ちゃんを育てることはもうないし、ふわふわのキリンのタオルをプレゼントにもらうことだってきっとないだろう。少しでも忘れないように、忘れても思い出せるように。しかめっつらをする次男の眉間のシワを伸ばしながら、今を大事にしたいなと思うのだった。

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