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夢の舞台の幕が上がる『うたかたのオペラ』勝手に観劇レポート

※今回の観劇レポは、個人的に書いているものであり、各種プレイガイドや公式等からご依頼いただいたものではないことをあらかじめお断りいたします。
また、個人の感想であり、なんらかの公式的な見解は含んでおりません。

はじめに

2022年1月13日、東京都六行会ホールにて『うたかたのオペラ』が幕をあけました。

オミクロン株の急速な感染拡大で、公演自体が危ぶまれる中、無事に初日を迎えることができて、正直ホッとしている自分がいます。
直接的な公演関係者ではありませんが、取材させていただいた作品、またインタビューとなると思い入れがどうしても出来てしまうタイプなのです。
取材した作品が、初日を迎えられない……迎えても数日で公演中止となる……コロナ禍でそのような事態は何回かあったので、まずひとつの山を越えた! と勝手に安心して喜んでおりました。

そして、そんな初日、わたしは会場にいました。インタビューの日から、とても楽しみにしていた日でした。

(インタビュー、おいておきますね^^)

中村さんは何度かお仕事でもお話をおうかがいしていただいておりましたし、実際舞台も何度も拝見したことのある俳優さん。
また北翔さんの相手役とのことで(「ふたり阿国」で夫婦役)、とても楽しみにしていました。

舞台『うたかたのオペラ』がはじまる


『うたかたのオペラ』は、なかなかどんな作品かをくくるのがむずかしい舞台でした。
ただ、248席のホールに足を踏み入れた時、レビュー小屋を舞台にしている作品としてこんなにぴったりな場所はあるんだろうか? とふっと考えました。

ある戦争が終わり、一人の若い兵士が連合軍の裁判を受けている―――
兵士は軍を脱走し、あるレビュー小屋で終戦を迎えていた。
裁判官は問う
「あの劇場には謎が多すぎる。あそこでは一体何が行われていたのだ?」
兵士は答える
「あそこで夜毎行われていたのは…それは…『うたかたのオペラ』でした…」
兵士は語り始める――。
『うたかたのオペラ』のすべてを……

公式サイトより https://artistjapan.co.jp/l_opera_fragile/

ここは読み飛ばして下さい※ヅカオタ全開注意


初演の主演は紫吹淳さん。りかさんです。
お茶の間では巻き髪のおっとりしたお姉さんとしておなじみかと思いますが、宝塚歌劇団オタクとしてみる紫吹淳は、そらもうべらぼうに雰囲気のあるダンスが得意で、視線で人が殺せる人でした。
『大海賊』が大好きだったので、北翔さんが全ツで『大海賊』をした時は本当に嬉しかったです!

そんな紫吹さんから、メイファのバトンを受け継いだ北翔海莉さんは、歌ダンス芝居と三拍子揃った男役として経験を積み、最終的には専科から星組へ移動、そしてトップスターを経験された実力者。
下級生時代を宙組で過ごした北翔さんを、わたしがはじめてきちんと観劇したのは『シャングリラ-水之城-』。この演目が当時わたしにスマッシュヒットして、今でもこの演目のことはよく覚えています。その後、専科の生徒となり『眠らない男・ナポレオン -愛と栄光の涯に-』『エリザベート』などで活躍、フランツ・ヨーゼフは本当によかった……最高でした……ですので、退団公演はマチソワするくらいには通いました。オペレッタ「こうもり」なんてほんとうに素敵で当時の星組の魅力と北翔さんのパワーが詰まった最高の舞台です(ここまで一息以下省略

北翔さんは以前『海の上のピアニスト』でインタビューさせていただいております。その舞台も拝見し、あまりの素晴らしさに大号泣。
「やっぱりみちこさんはすごい!」と痛感した舞台でしたので、同じアーティストジャパンさん制作の舞台と言うことで、本当にワクワクと幕が上がるその瞬間まで過ごしていました。

1幕

再演ものとはいえ13年ぶりの作品。
舞台下手にある証言台に立つ宗一(神里さん)の裁判からスタート。き、きれいな顔した兵隊さんだ……!
脱走した先で何を見たのか、証言しろと迫られ……レビュー小屋シャトー・ド・レーヴでの出来事を語りはじめます。

メイファ(北翔さん)が座長を務めるそこには、ドクトル・ケスラーという道化(中村さん)がいます。個性あふれる団員たちのなかでも異色のドクトル・ケスラー。
レビューシーンも、歌唱シーンももりだくさん!
メイファの登場シーンは思わず、宝塚歌劇団を思い出しました。と、トップスターの登場だ!!!! と反応してしまいそうでした。
そんななか、隅で呆然とレビューを見ていた宗一。敵性国であるアメリカの歌が流れると、顔を顰めて逃げようとしますが、それをユーモアたっぷりに引き止めるケスラー。ふたりのやりとりが可愛くて、なんだか目が離せませんでした。

このあたりは、さりげなくドクトル・ケスラーの手品があって、思わずくすりとしました。それぞれ一座のメンバーが個性あふれる動きをしているので、目が人数分欲しかったです。

憲兵から宗一をかばい、「小太鼓くん」として一座にまねくメンバー。
元々発表されていたアルバムから発想を得たとは思えないくらい、あまりにも作品にぴったりのナンバーたちには驚きました。たくさんの衣装・レビュー……めくるめくオペラのなか、アマカス(中村さん)とメイファのあやうい関係が明示されます。

作品の中でメイファのモデルは、川島芳子(清朝皇帝・愛新覚羅家の末裔であり、スパイとして暗躍したとされている男装の麗人)と李香蘭(日本人ですが、中国人女優として人気を博した女優)とされています。
李香蘭の有名なナンバー『蘇州夜曲』を歌い上げるメイファを見つめるアマカスのまなざしは、あまりにも多くのことを語っていました。

アマカスとメイファがいる……レビュー小屋のメンバーとのシーンとの明るさがはっきりすればするほど、そのふたりの立つ「時代の持つ闇」が深くくっきりと垣間見えました。
(この頃にはもう泣いています)

2幕

2幕。すでに戦局は傾き、負けるはずがないと思っていた国が敗戦に向かう様が描かれます。
愉快な小屋は一転、戦火に飲まれることになるのです。一座のメンバーたちが逃げるさまも、それぞれの個性がはっきりと表れ、思わず「みんなで助かって」と祈るほど。
戦争から逃れてきた宗一も、自分を受け入れたくれた一座と共に空襲に巻き込まれます。

もう、2幕は泣きっぱなし。『シャトー・ド・レーヴ』のナンバーを歌うメイファとアマカスはあまりに苦しくて、悲しくて、美しくて、思い出すだけで泣けます。
「もう二度と思い出とワルツを踊らない」……胸が痛い。
新帝国という新しい国に賭けた夢……相手にみた夢……
メイファとアマカスの絆、メンバーたちのそれぞれの思い。宗一の変化……
うたかたの夢を見たふたりが、ひとつの小屋のなかでひとつの小さな勝負をし、最後メイファが勝つ。
その儚くもきらきらとした美しい光に包まれたラストの力強さ。

1幕のにぎやかなレビューから一変したその雰囲気は、中村さんと北翔さんの演技がすばらしい! そしてそれを見つめる宗一としての神里さんのたたずまい。
ポケットティッシュ使い切るんじゃないかってくらい泣いている間に、ラストナンバーがやってきます。

ショー、カーテンコール

ショーと言っていいと思うんですが、ラストナンバーを歌ったそのあと、一座のみんなが再登場。
笑顔でまたレビューを見せてくれるみんな。
私が宝塚歌劇団を好きな理由のひとつが「ショー」「パレード」にあるんです。1幕もの(『うたかたのオペラ』のように1幕2幕ともに通しでお芝居があるものを指します)は、最後、短いダンスのショーとパレードがあります。
そこでは死んだ者も、憎い敵も、満面の笑みで現れて踊って歌うんです!!! これにどれだけ救われるか!!!!!!!!
今回、ボロ泣きしてラストナンバーを迎えたわたし、笑顔の宗一たちにもう……もう……! 魂が救済される。

最後、ドレス姿の北翔さんがあらわれ、メドレーを歌います。
「もう二度と思い出とワルツを踊らない」
「Good-Bye my good days,Good-bye my bad days、ワルツを踊らない」
この言葉が、この歌声が、わたしの耳に残っています。

愛する人に生きてほしい。
しかし、誇りこそが人を生かすことができる。
北翔さんの演じたメイファに見たのは、そんな強く、そして儚い姿でした。

まとめ

いかがでしたか!
ヅカオタが見た『うたかたのオペラ』は。
レビューとしては鳳翔大さんのリフト(されるほう)が見れるという新鮮な体験をしました。
今回は北翔さんと中村さんにスポットを当てた観劇レビューになったことをご容赦ください。

また、このサイズのハコで北翔さんの歌を聞く(最早浴びる)機会は、早々ないと思います。
是非是非、ご観劇ください!

https://artistjapan.co.jp/l_opera_fragile/

は~、舞台ってすばらしい!

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