“NO“と言えないブラジル人

前回の記事でブラジル人が人の存在やあり方を否定しないと書きましたが、それだけでなく、ブラジル人は他人からの依頼までもノーと言えない人が非常に多くいます。しかし全ての依頼に応えられる人はもちろんいないわけで、ブラジル人がNOと言えない場合は大抵“返事をしない“という方法を取ります。私自身もそのような人たちに出会い困ってしまうことがよくありました。ブラジル到着直後、自分がまだ言葉にとても不自由し、病院などへは通訳に同行を頼んでいましたが、彼女もNOが言えない典型的なブラジル人で、依頼しても返事が来ないことがままありました。当時は困ってしまいましたし、返事が来ないのは私が彼女に嫌われることをしてしまったからなのではないか、と不安にもかられました。しかし他にも同様のケースを他のブラジル人とでも無数に経験するにつれ、ブラジルでは”返事をしない=NO“、なのだという認識を持つに至りました。お願いしていた通訳も後にあの時はとても忙しかった、と何かの拍子で弁明していました。ただ単に通訳として同行できない為返事をしなかったというだけだったようです。

何故多くのブラジル人はNOと言えないのか、仲良くなったブラジル人に率直に聞いてみたのですが、彼女の考えでは「断ることは相手に失礼だと思うから」とのことでした。私は日本人だからかスルーする方が失礼なように感じてしまいますが。。

ブラジルで仕事をしている夫や他の日本人にこのことを聞いてみても大抵ブラジル人のこの都合の悪い時に返事をしない、というやり方に悩まされているそうです。

当のブラジル人も仕事で断ることができず、大きな悩みになっている人も多いそうです。ブラジルは実は鬱病を罹患する人が多いそうです。激しい競争社会であるということ以外に友人の見解によると、NOと言えず問題を抱え込んでしまいがちだからだと分析をしていました。

さらに言えばNOと言えないブラジル人文化があることに乗じて、人の依頼を受けるのが面倒くさい為に返事をせずにやり過ごそうとするブラジル人も少なからずいるそうです。そのような人には苛立ちを見せるとようやく動き出すそうです。そのためブラジルで生きていく為には怒りや苛立ちを見せる演技を身につけることも必要だと長年ブラジルに住む日本人に教えてもらいました。実際仕事を怠けている人に私が困っている時に友人が私の代わりに苛立っている様子を見せてくれて、結果解決したことが何度かありました。私自身には難易度が高くてなかなか実践できませんが。。

何故ブラジル人がNOと言えないのか。滞在歴数年の私は、おそらくブラジル人が他者を否定しないと言う教育を受けていることと関係しているのではないかと分析しています。ブラジルから日本に戻った息子の友人の小学生は日本の小学校で初めて先生が怒るのだ、ということを知り衝撃を受けていたそうです。ブラジルで息子たちが受けている教育についてもまた別の記事にできたらと思います。

人の存在やあり方を肯定するブラジルの文化は素晴らしいと思いますが、人のどんな依頼まで受け入れようとする文化、さらに言えば依頼しても返事が返ってこないことがままある文化の方は、日本人の私にとってはなかなか慣れず、苦労しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?