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【自己紹介③】一五一会の弱点とは何か

<前章>

一五一会の弱点

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前章では一五一会の特長とその秘密について述べてきた。三線のように手軽でギターのように幅広い、誰にでも簡単に弾き語りができる夢の新楽器。しかし、そんな一五一会にも弱点というべきものが存在する。それは、表現できるコードや奏法に限界があることと、万能なチューニングが存在しないということだ。

一五一会の弦は4本、ギターよりも2本も少ない。弾きやすくなった反面、どうしてもギターの持つ表現力には劣ってしまう。ヤイリ製なので一五一会の鳴りには素晴らしいものがあるが、同じくヤイリ製のアコギと比べると、やはり響きの豊かさでは一歩及ばない。ストロークにしてもアルペジオにしても、弾いてみればその差は歴然だ。

単に弦の本数による音量の差だけではない。一五一会は指一本でコードが鳴らせるが、言うなればそれは最低限の和音である。コードの基本は3和音、すなわち3つの音で構成されている。一五一会の指一本コードは、この3つのうち最低限必要な2つの音をオクターブ違いで並べているだけなのだ。

例えばGというコードがある。Gにはメジャーとマイナーの区別がある。簡単なイメージとしては、メジャーが明るい響き、マイナーは悲しい響きと表現できる。

多少誇張が入るが、Gメジャーは「G😆」Gマイナーは「G😢」と、こういうイメージだ。では、一五一会の指一本コードでG(一)を鳴らすとどうなるのかと言うと…

一五一会「G😐

まさに真顔である。どのくらい真顔なのかと言うと、Spoonのリスナーが「(☝ ˘ω˘)☝ふぅー!!」ってコメントを打っている時くらい真顔である。

あくまで指一本コードを用いた場合はそうなるという話なので、一五一会でもメジャーやマイナーを表現する弾き方が無いわけでないのだが、それは応用編であって初心者向きではない。複雑なコードを鳴らそうとすればするほど、左手のフォームがギターのそれよりも複雑になってしまうのだ。これでは本末転倒である。

さらに弦の並びが「GDGD」となっている以上、物理的にどうしても鳴らせないコードというものが出てきてしまう。もし鳴らそうとするなら、寄生獣のミギーのように指がウニョウニョと枝分かれしなければならないが、今のところ地球上でミギーのような寄生生物を発見したというニュースは存在しない。

そしてそれは、もうひとつの弱点にも繋がっている。ギターという楽器は非常に合理的にできていて、「EADGBE」という並びは、コードフォームさえ正確であればチューニングを変えなくても大抵の曲がそのまま演奏できるのだ。カポを使えば演奏できない曲はほぼ無いと言っていいだろう。一方で、一五一会は「GDGD」に設定すると、どの曲もGを基本にした音程でしか弾き語りができないのだ。

つまり、ギターのようにチューニングを固定すると自分の声の高さの方を合わせる必要があるということだ。それだと低すぎ、あるいは高すぎて自分が気持ちよく歌える高さではない曲も出てきてしまうだろう。そうなると面倒くさいことに曲ごとにチューニングを変える必要が出てくる。

これは、一五一会がギターの子孫であると同時に三線の子孫でもあることが強く影響している。三線は曲ごとにチューニングを変えるのが当たり前だし、三線自体が和音を弾くことを想定している楽器ではない。弦そのものはギターと同じでも、チューニングは三線のDNAが引き継がれている以上は仕方のないことである。

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一五一会のスケールを考慮するとライトゲージ弦を張った場合、E~Aまでが対応できるチューニングの限度とされている。その範囲内ならチューニングが面倒なだけで済むが、D♯より低いキーでは弦が緩くてダルンダルンになるし、B♭より高いキーでは弦のテンションがきつく切れてしまう(低いキーにはミディアムライトゲージの2、3、4、6弦を張る、高いキーにはカポを用いるという手段もある。)。

初心者が弦楽器を挫折する理由に、チューニングと弦交換で手こずることは割とよくありがちだ。最近ではスマホアプリでもチューナーがあるし、弦交換もYouTubeで丁寧な解説動画があるため昔に比べると挫折しにくい環境になったが、簡単そうだからという理由で一五一会に手を出す人は、わからないことを自分で調べて実践できるような層でないことが多いのだ。

逆に言えば、チューニングや弦交換を難なく行えて、一五一会でもギターのような演奏をしたいという人は、そのうち一五一会では物足りなくなってくる。こうして一五一会を“卒業”してギターに乗り換えていく人を、僕は実際に何人も見てきている。

三線とギターの良いとこ取りをした副作用として、(ギターと比べられると)表現力に制約があることと、(三線から受け継いだ)曲ごとにチューニングを変えることの不便さという弱点があることはおわかり頂けたと思う。では、僕がなぜそれでも一五一会を使い続けているのか、いよいよ核心に触れていく話をする。

……と、言いたいところだが、今回はここまで。詳しくはまた次回に。

<次章>

【自己紹介④】一五一会を使い続ける理由

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