UPASKUMA|アイヌ犬ウパシと知床の暮らし

川村喜一 | KAWAMURA Kiichi 写真家・美術家。1990年、東京都西荻窪…

UPASKUMA|アイヌ犬ウパシと知床の暮らし

川村喜一 | KAWAMURA Kiichi 写真家・美術家。1990年、東京都西荻窪生まれ。東京藝術大学大学院修了。 2017年から北海道・知床に移住。自然と表現、生命と生活を学び直している。

最近の記事

ただならぬ奇跡

季節がひと巡りして、アイヌ犬ウパシは一歳を迎えた。母犬が一年越しに子供を産み、ウパシは新しい生命に戸惑いながらも心やさしい兄になった。晩秋には札幌からお嫁さんが来て、ウパシは初めての恋をした。新年を迎える頃には、ウパシは父になっているかもしれない。 僕たちが季節と呼ぶもの、自然と呼ぶもの、それは厳然たる秩序をもって僕たちを押し流してゆく。この地で生きるということは、まずもってそこに取り残されぬよう足並みを揃えることなのだろう。あの春の青い海、あの紅葉、白い雪、過ぎゆくも

    • アイヌ犬ウパシについて

      ウパシは、僕たちにとって家族である。 アイヌ語で「雪」を意味するこのアイヌ犬の子は、自分自身の成長に歓喜するように知床の大自然を駆け巡り、越えられなかった地形を跳び越えて行く。人の言葉を覚え、優しさを知り、共に生きる術を学んでいる。そんなウパシとの知床での生活は、人間と犬との原始的な関係を思い起こさせるようでもある。 ウパシは2018年6月19日に北海道・知床で生まれ、その2ヶ月後、母犬の飼い主から僕たちのもとへやってきた。 ここの人々はよく、獲れた魚や野菜、季節の山菜な