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4. せっかく買ったトルクレンチがくるっていた?!-トルクレンチの校正と調整-

第5回目のnoteも見ていただきありがとうございます!
4月から不定期で更新していたこのnoteも、早いものでもう5回目!
(実は、上には既にアカウントを作ってから「こんなことやろうと思ってます!」と事後報告でした)
スタビレーのトルクレンチをメインに…と言っていたものの、前置きが長くなってしまいすみません。
次回よりスタビレーにしっかりフォーカスを当てた内容になりますのでお楽しみに!

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さて、今回はトルクレンチの管理についてです。(今回のnoteもあくまでもスタビレーを基準にした内容となっており、メーカーによっては多少差異があるかと思いますのでご留意ください)
管理といっても様々ありますが、最初に用語の確認を。

校正…校正器でトルクレンチの精度を点検、確認する作業
   (基準に対してずれが生じていないか)
調整…トルクレンチの状態を変更する作業
   (ずれが生じていたら、手を加えて元の状態に戻す)
修理…故障している箇所を、再度使用できるように直す作業
   (破損したパーツの交換など)

校正してずれていたら調整をし、壊れていたら修理をするイメージです!

せっかく高いトルクレンチを買ったのにくるっている⁈

よくある勘違いなのですが、トルクレンチの校正は「クリックが鳴った瞬間」で行います。「締め終わった瞬間」ではありません。
(トルクレンチの精度を調べるのが“校正”なので、当たり前と言えば当たり前なのですが…)

例えば、自分で締め付けトルクを測定できる装置(トルクテスターなど)で確認したら値が狂っていたからと校正・調整に出しても、校正の結果問題なしとして返却されたという話もあります。
つまり、「校正器で校正しトルクレンチ本体の精度は問題ないのに、トルクテスターで測ったら規定トルクからずれている」場合は、「トルクテスターが狂っている」もしくは「クリックが鳴った後も力を加える締め付け方をしている」ということです。
「せっかくトルクレンチを買ったのに不良品だ!」となる前に、一度トルクテスターが次のどのタイプかをご確認ください。

トルクテスター:トルクを計測する機械。力を加え終わった時点でのトルクを表示するもの、クリックが鳴った瞬間を表示するもの、力を加えている時にその数値をリアルタイムで表示するもの(力を入れなければ0に戻る)、またそれらを兼ね備えたものなど様々ある。航空機関係などでは始業前の日常点検で使用することも。人力でトルクレンチを動かして計測する。

スタビレーのトルクチェッカー“SmartCheck”

校正器:トルクレンチのクリックの瞬間のトルクを表示する。人がトルクレンチのグリップを握り作動させるのではなく、機械的に計測して記録。(機械がトルクレンチのグリップを動かす)
そのトルクレンチの精度が何%の間に収まっているのかを確認できる。

STAHLWILLEの校正器

プリセット型トルクレンチはあくまでもトルクレンチの値を保証するモノであり、締め付けトルクを保証するものではないのでご注意ください!


そもそもトルクレンチは校正しなければならないのか

トルクレンチは校正が必要だということは多くの方がご存じかと思いますが、実際やらなきゃいけないの?いつすればいいの?と疑問を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

校正に出すと校正証明書が発行されます

もちろん使用頻度や使用環境により精度誤差の大きさは異なりますが、
結論、メーカー基準(スタビレー)としては
①5000回のクリック
②1年間

のどちらか期間の短い方での校正を推奨しています。
(1年以内に5000回も使用される方はなかなかいらっしゃらないかと思いますので、校正は1年に1回という認識で問題ありません)

トルクレンチは維持管理が欠かせない計測機器です!
トルクレンチがくるってしまっていては、せっかくトルクレンチを使っていても意味がない(ずれた基準でトルクを測っていることになる)ので、校正はきちんと行うようにしてください!


スタビレーのトルクレンチは日本で校正できるの?

スタビレーのトルクレンチはドイツ製ですが、日本国内にメーカーの認可を受けた校正・修理を行うサービスセンターがあります
ですので、都度ドイツ本国に製品を送るコストや時間は必要ありません。
校正はをご希望の方は、ご購入された販売元にお問い合わせください。

日本のスタビレー認定サービスセンターではスタビレーに合わせた校正を行うため、ISOよりも校正範囲を広く、トルク調整範囲の最大値と最小値を測定します。(ISOでは下限は最大値の20%の値を調べます)

例:3-60Nmのトルクレンチ 
最小値(3Nm)、60%(36Nm)、最大値(60Nm)で各5回テストして不確かさを確かめます。


校正器の校正も必要

実は、トルクレンチを校正する側の校正器も校正が必要です。
校正する側がくるっていては、特に問題のないトルクレンチも間違った精度が出てしまいます。
校正はきちんと認証を受けた機関に依頼するようにしてください。
(発行された校正証明書はなくさないようしっかり保管してください!)


トルクレンチの正しい保管方法

最後に、トルクレンチは精密機器です。
精度を維持させるため、落としたりぶつけたりしないようご注意ください。
また、できるだけ専用のケースに入れ、振動の無い場所で高温多湿を避けて保管するようにしてください。
(保管環境が悪いと内部に錆びが発生してしまうことも!)


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いかがでしたでしょうか。
トルクレンチに関する前書きがすっっっかり長くなってしまいました。
次回はスタビレーというメーカーについて、またそのトルクレンチの特徴についてしっかりとまとめていきますので是非ご覧ください!