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2. トルクレンチの特徴と弱点

第3回のnoteも見ていただきありがとうございます!
前回のnoteでは「トルクレンチは水戸黄門の印籠ではないよ(意訳)」という内容でしたが、今回はもう少し「トルクレンチ」について触れていこうと思います。

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実はトルクレンチもいろいろ

トルクレンチをカテゴリ分けすると…?

「既定のトルクでボルトやナットを締め付ける」ための工具がトルクレンチですが、大きくトルクレンチと言っても様々な種類があります。

トルクレンチをざっくり分けるとこんな感じ

「トルクレンチ」と聞いて最初にパッと思いつくのはシグナル式に分類される『プリセット型』ではないでしょうか?
シグナル式はその名の通り、規定のトルクに達するとクリック音や感触などの“シグナル(合図)”で作業者に教えてくれます。
都度締め付けながら目盛りを確認する必要がなく、多くのボルトを締結すること(連続した作業)に適しています。
一方、直読式は実際に今かけているトルクを数値で確認できるものです。
それぞれが持っている特性が異なるため、シグナル式は締め付け作業に、直読式は測定や検査に使われることが多いです。
デジタル型はメーカーにより様々な特徴があるため後日noteにまとめるとして、今回は『プリセット型』をメインにお話していこうと思います。

プリセット型トルクレンチの特徴

作業者がトルク値を設定できる

では、一番メジャーと言っても過言ではないプリセット型トルクレンチ。
まず同じシグナル式に分類される『単能型』との違いは、トルク値を作業者が設定(調節)できるかどうかです。
「トルク値を自分で設定できないなんて使い物にならないじゃないか!」という声も上がりそうですが、決められた一定のトルクでの作業が求められる(勝手にトルク値を変えられると困る)工場ラインなどで使用されています。(スタビレーには単能型にもプリセット型にもなる二刀流トルクレンチがあるのですが、それについてはまたいつか…)

設定したトルク値に達するとシグナルで作業者に知らせる

そして最大の特徴は、先程も述べたように規定のトルクに達するとクリック音や感触などの“シグナル(合図)”で作業者に教えることです。
例えば100Nmに設定していると、100Nmに達したときにカチッと音が鳴ったり、手に感触があったりします。(メーカーによりその合図は異なります)
あくまでも”お知らせしてくれるだけ”であると理解することが重要です。

プリセット型トルクレンチの弱点

トルクレンチも万能アイテムというわけではない…

使用後は最小値へ戻す必要がある

一般的にトルクレンチはコイルバネが内蔵されており、そのバネを締め込むことでトルク値を調節してます。(高いトルク値に設定すればするほど、バネは圧縮されていくイメージ)
トルクを設定したままにしておくとその間バネに負荷がかかり続けていることになってしまうので、使用後は締め込まれたバネを元に戻す(最小値に戻す)必要があります。
その点、スタビレーのトルクレンチはコイルバネではなく板バネを使っている為、作業後にいちいち最小値に戻さなくてもいいというメリットが!
これについての詳細はまた別途noteに書きますね。

設定したトルクよりも、実際は大きくなる場合が多い

トルクレンチからのシグナル(合図)があっても、力をかけ続けると締め付けがそこで止まるわけではない(空転するわけではない)ので、勢いをつけたり反動をつけながら締め付けると、シグナルがあっても締め付けをすぐに止められず、実際の締め付けトルクは設定値よりも結果的に大きくなることが多いです。

実際の締め付けトルクはわからない

直読式には締め付けた最大のトルク値が確認できる「ピークホールド」機能を備えているものもありますが、プリセット型は作業者が設定した値に達したときにただそれをお知らせしてくれるだけのものです。
つまり、実際に何Nmで締め付けたのかは正確には分からないのが一般的です。

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いかがでしたでしょうか。
残念ながら、トルクレンチは「これを使えばトルク管理は100%正確にできる!」というような魔法のアイテムではありません。
それぞれの特徴や弱点を十分に理解した上で使用することが重要です。

次回はスタビレーが推奨している、トルクレンチの使い方についてまとめていこうと思います!