角田光代 『旅をする本』を読んで

 高校の教科書に掲載されていたので寝る前に読んだ。思い出したのは、両親がギネスビールを飲んでいたから。こんな風に本を読む時間が増えたのがうれしい。
 あらすじは、大学生時代に古本屋に売った小説と旅行先で再開するというもの。「私」はその本を読み返すたびに内容が変わっているように感じるが、実際には読み手である自身が人生経験によって内容に対する感じ方が変わっていたと気づく。
 この小説はストーリーも面白くて、よく授業中にこっそり読んでいた。高校一年生の教科書という事で、とてもメッセージを感じる。これからの学生生活で多くの事を経験して、人生を豊かにしてください的な。
 僕の場合はどうだろう。確かに、ほとんど中学生だった当時とは違う人間になったと思う。サラサラだったマッシュに、今ではアイロンをかけてツーブロックのセットにしている。しかし、それはあまり大事な変化ではない。装丁が変わっても中身は同じ事はよくある。思うに、僕は高校生活で違う本にはなっていないかもしれない。ただ、ページはいくらか増えて、挿絵のような思いでが加わった。改訂版ということだ。
 ただ変化は意識しても、「私」のように立ち返るべき本が私には見当たらない。きっと私の場合は音楽だろう。好きな子に教えてもらったRADWIMPS、字幕を翻訳しながら聴いた洋楽、今では感じるものが違う。
 ただの音楽では無く自分の人生を重ねるからこそ、楽しめるものもあるだろう。
 僕はこれから大学生になる。たぶん。四年間は楽しいものになるだろう。とても、自由に違いない。今聴き入っている曲のプレイリストを作らなければ、戻ってこれない。四年後には失恋ソングも深みを増しているかもしれない。

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