見出し画像

アート・プロジェクト:TRANS- 感想

2019年秋頃におこなわれたアート・プロジェクト:TRANS-の感想です。(一部写真撮影OKでした。)

【about】 
アート・プロジェクト:TRANS- とは、2019年秋に神戸で開催されるアート・プロジェクトです。
神戸がグローカル・シティの先鋒となるべく、現代アートを切り口に何かを“飛び越え、あちら側へ向かう”ための試みです。
世界各地で開催が相次ぐ芸術祭とは一線を画し、参加作家を2名と少数に絞ります。
会期中は神戸の3つのエリアを舞台に、美術作品や野外劇など様々な仕掛けが出現します。
(サイトより引用:http://trans-kobe.jp)

もともとTwitterで評判を見て、ほぼ最終日あたりに見に行きました。神戸の元町界隈にある展示会場を回るんですが、とにかく良かったです。

グレゴール・シュナイダーさんの展示とやなぎみわさんの講演で構成されたプロジェクトです。

今回は、グレゴール・シュナイダーさんの展示をまわりました。展示は12の道行きで構成されています。


その中で自分が衝撃を受けた展示を一部ご紹介します。

■第4留 メトロこうべ

画像1

この展示は、とにかく衝撃でした。
地下鉄の地下街に設置された構造物。
必ず一人で部屋に入ることになります。

最初の扉を開けるとそこには浴室。
また、扉。
その扉を開けると、また同じ浴室。
何度も続く扉と浴室を抜けるたびに、これは夢なのか現実なのかわからなくなる。
だんだん恐怖が頭によぎってくる。

そして、すべてが終わったときに日常に戻れた安堵感。一瞬でも日常と切り離されたときの人間の感情、焦りや恐怖感。自分自身この感情にびっくりしました。

■第6留 第7留 私邸

どちらも個人宅でおこなわれていた展示です。
朝一に整理券を取らないと参加できない展示のため、参加できなかった方も多いかもしれません。

まず6留は、二階建の住居からなります。
一階ではシャワーを浴びる女性(姿は見えません)が、二階には風邪?で寝込む若い女性が部屋でケータイをみて休んでいます。どちらも観覧者が見えているような感じではありません。ただそこには彼女たちの日常があるようでした。
他人の生活を覗き見ているような気味の悪さ、そわそわとする不安な気持ちを感じました。

第7留は、三階建て程度の住居の一室が舞台です。
たぶん男性の部屋で、ごちゃごちゃとした一室。
床に敷かれた布団と汚い机があり、90年代のアニメキャラのポスターや部屋の半分の壁にはスロットが敷き詰められていました。
他人の頭の中に入ってしまったような違和感。不安感。

どちらの展示も、当たり前にひとの生活に存在するもの。他者の生活。その日常を覗きこむとはどういったことかを体現した展示でした。あちら側とは他者でもあると。

第8留 住居の暗部

画像2

この展示は、真っ暗な宿泊施設を受付で手渡されたledライトだけでまわっていく展示です。

本当に真っ暗です。

二階建てベットの居室がいくつかとトイレ、管理室と浴室、食堂。真っ暗ですが、室内あるものはすべて真っ黒に塗りつぶされています。その中にもそれぞれ真っ黒の新聞や食器、囲碁、日常品があります。

参加者はここでも気味の悪さに出会います。ここはなんなんだろう、なにをしていたんだろうと。
ただ、不思議となにかを感じ取ろうと探してしまいます。答えなんて存在しないはずなのに。

余談ですが、この展示は取り壊し予定の宿泊施設を利用した展示だったとのことです。


日常から切り離されたような場所、誰かの頭の中をのぞいたような場所、誰かの日常を覗き見ているような場所、不思議な感覚を味わえて。
まさしく“飛び越え、あちら側へ向かう”ということかもしれません。

画像3