先輩起業家の小話Vol73       「起業なんてうまくいかない」

今回は、オレが出会った起業家の体験談の紹介だ。

久しぶりの投稿なのにややシリアスなタイトルだが、
起業はきれいごとばかりではない。はずかしい話、情けない話だってある。

「半端な気持ちならやめておいた方がいい」

A氏はそう言いながらも、「みんなの役に立てるなら」と協力してくれた。
すこしでも参考になれば本当に嬉しい。

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A氏は、都心でWebサービス業を展開している。

「過去に同種の起業で失敗してます。早期退職金と貯蓄を合わせて1,500万円失いました。
理由は単純で、絶対に売れると確信していたサービスが、まったく売れなかったからです。

『起業で失敗して大金を失った』というのはよくある話ですが、当事者はみじめです。
小学生と幼稚園に通う子供がおり、減り続ける銀行口座をみるたびに手が震えました。
動悸がして夜も眠れず、深夜に起きて近所を歩き回ったりしていました。

これから起業を考えている人にこんな話をするのは申し訳ないですが、
『起業はまず上手くいかない』と思っています。

計画書を練っても、プレゼンで褒められて賞などをもらっても、そんなものは関係ないです。
実績もブランドもお金もあって、人もたくさん抱えている競合がひしめいている市場に出て、ろくに営業もせず、ブログやSNSだけで情報発信をしたところでお客様は見向きもしません。

これはもともと大手にいた私の失敗ですが、起業すればお客様は集まると思っていました。

起業の準備段階で本当に大切なのは、自分の製品・商品・サービスが売れるかどうか。ほとんどそこに尽きると思います。
リスクをとって起業するなら、その点を見極めること。
それも起業する前にきっちり見極めること。売上が見込めないならやめておいた方がいい。

私は、二度目の起業に当たり、数百件のお客様にインタビューを行いました。
もう二度と同じ失敗は繰り返さない。最初はそんな気持ちでしたが、やがて気が付きました。
最初の起業時、私は、お客様が買いたいものではなく、自分が売りたいものを売っていたのです。

これから起業される皆さん、私はこんな当たり前の教訓を得るのに、1,500万円を使いました。
皆さんには同じ轍を踏んでほしくない。
大切なのは、自分のサービス等が売れるかどうか、お客様が買いたいものかどうかを妥協せずに見極めること。そのための労力を惜しまないことです。

皆さんの起業が上手くいくことを祈っています」

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お客様が求めているものと、自分が売りたいものには、えてして大きなギャップがある。
リスクを背負って起業するなら、その前提を自覚し、真剣勝負で準備するべきだよな。

週末起業、テストマーケティングなど色々な形で初めの一歩があるから
まずは小さく経験してみるのもいいかもしれない。

A氏、貴重な体験談をありがとう。