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泣ける映画を見たいなら、「モーリス」

こんにちは、ぱんだごろごろです。
泣ける映画の二つ目は、「モーリス」です。

*ちなみに、一つ目は、前回の記事で取り上げた、「ブロークバック・マウンテン」です。

映画「モーリス」


泣ける映画の二つ目は、ジェームズ・アイヴォリー監督の「モーリス」(1987年)です。
原作者は、イギリスの著名な小説家、E・M・フォースターで、彼には、他にも、「眺めのいい部屋」「ハワーズ・エンド」「インドへの道」など、映画化された数々の名作があります。

「モーリス」の内容を一言で表すと、「男性同士の恋愛を正面から描いた作品」です。
主演俳優は、主人公のモーリス役をジェームズ・ウィルビー、親友で恋人のクライヴ役をヒュー・グラント、クライヴの屋敷の猟場番の青年、アレック役をルパート・グレイヴスが、それぞれ演じました。


禁忌としての同性愛


原作が書かれたのは、1913年。20世紀初頭のイギリスでは、同性愛は、法で禁じられていました。
作家のオスカー・ワイルドが、アルフレッド・ダグラス卿との同性愛行為により投獄された事件は、有名です。

*(注)以下、映画のストーリーを最後まで述べておりますので、知りたくない方は、お読みにならないで下さい。

ケンブリッジ大学の学生モーリスは、ある日、上級生のクライヴと知り合い、互いに惹かれ合うようになります。
語り合い、見つめ合い、触れ合って、やがて、二人には、それが友情ではなく、恋愛感情だと自覚する日がやって来ます。

ところが、クライヴは、プラトニックな関係こそが至上のもので、身体の関係は、愛を貶めるものとして、拒否します。
仕方なく、クライヴの意向に従うモーリス。
モーリスにとって、クライヴは、彼が初めて愛した人でした。

クライヴの結婚


社会人になってからも、二人のそんなどっちつかずの関係は続きます。
クライヴを愛するが故に、彼と友達付き合いを続けるモーリス
そこで事件が起きます。学友のリドリーが貴族の家柄でありながら、不道徳(同性愛)行為により、逮捕されたのです。

それにより、クライヴは、結婚を決意します
上流階級に属する彼は、弁護士となり、政界への進出をもくろんでいます。
モーリスへの愛情よりも、身の安全と将来を優先させたのです。
そうでありながら、結婚式の介添人を、モーリスに頼むクライブ。
モーリスは苦悩の中で、それでもクライヴへの愛を断ち切ることができません。

アレックとの出会いと決意


クライヴからの招待で、彼の屋敷を何度か訪れるうちに、モーリスは、猟場番の青年、アレックと知り合います。
そして、アレックの誘いで、ついにモーリスは、彼と身体の関係を持ってしまいます。
身分違いの相手ながら、アレックの情熱に、次第にほだされて行くモーリス。

アレックの家族がアルゼンチンへ出航する日、彼一人が姿を見せません。
モーリスと離れ難いあまり、アレックは家族を捨て、イギリスに留まったのでした。
アレックの元へと向かうモーリスを、クライヴは引き留めようとします。
が、モーリスは森の中へと消え、取り残されたクライブは、かつての青春の日々を思い出します。

青春の輝き


光あふれるケンブリッジでの日々、若く美しい二人の青年。
二階の窓へ向けて、モーリスが庭から呼び掛けます。
「Come on!」

「来いよ!」

室内にいるクライヴが見たのは、愛する人の、自分を呼ぶ姿。その声。

ここで、私は切なくて泣いてしまうのです。
青春の日々、その輝きは、二度と戻らない。
ケンブリッジでの出会いとその日々が、美しければ美しい程、クライヴが失くしてしまったものと、その痛みと後悔と。その大きさを思ってしまうのです。

そして、さらに、モーリスとアレックのことも、二人、どうやって生きて行くの、木こりになんてなれやしないのに、と、胸が痛むのでした。

まとめます。


私が初めて「モーリス」を見たのは、まったくの偶然で、ある日の午後、TVを付けたら「モーリス」が始まったところでした。
何の気なしに見始めて、見終わった時には、泣いて泣いて、しばらくは、夕食の支度も、洗濯物の片付けもできませんでした。
原作の小説も図書館で借りてきて、映画の方が、わかりやすいストーリーにしてあることを知りました。
当時、既に、ラブコメディの帝王になっていた、ヒュー・グラントに、こんな美青年時代があったことも、意外な発見でした。
人を愛すること、愛を失うこと、青春の日々の輝かしさは二度と戻らないこと、それぞれをしみじみと感じさせてくれた名作です。


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