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季語の絵日記

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季語の生きものたちの考察記録🌾
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記事一覧

蝙蝠

深い藍色に染まった空の下をコウモリたちがせわしなく飛び交う。 彼らはジグザグと軽快に羽ば…

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青鷺

池の上に並べられた太陽光パネルに一羽のアオサギがとまっている。彼は堂々たる両翼に夏の陽光…

鵜飼

もし鵜の風貌を見て「彼は善人か悪人か」と尋ねられたとしたら、十人に十人が「悪人である」と…

人の頼みをつっけんどんにはね返すという意味の言葉で「けんもほろろ」というのがある。この「…

春の蝶

満開の桜がはらはらと散る。そんな儚い無常に美を感ずるのが我ら日本人の常である。 若い緑の…

今日の春の季語は「鰆」。 魚偏に春と書いて「サワラ」と読む。 サワラはサバ科の回遊魚で北…

春の雄鹿は密かに語る

花盛りにはまだ少し早いけれど、奈良公園の桜もぽつぽつと蕾をほどいて顔をほころばせはじめた。それが連日の春雨にうたれて今日は何とも心細そうにうつむいている。 脇道の奥では二頭の雄鹿が頭を突き合わせていて、いよいよケンカが始まるかと思って見ていると、そのうちお互いに目の上など優しくペロペロとなめだした。私は「ははあ」と思ってそれ以上は見ないでおくことにする。 桜の木陰は二人をそっと隠して、春日大社の参道には、春の行楽が次第に賑わいを見せ始めたようだ。 そのむかし空海上人のまだ若

初燕

空高くで声がしたから見上げてみると、それはツバメたちのにぎやかな談笑であった。 私はかつ…

啓蟄

今さら啓蟄の話か、と思われるかもしれない。今年の啓蟄は三月六日であったから、かれこれもう…

雀の子

雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る これはまたずいぶん乱暴な一句である。 歳時記を開いて…

春の鴨

今日は近所の池でオオバン観察だ。 と言われてもオオバンが何か分からない人もたくさんいるだ…

望潮

今日の春の季語は「望潮」である。こう書くとめったには読める人もいないだろうが、望潮とはつ…

鳥帰る

鳥帰る。 何と哀しい季語だろう。 春の訪れに舞い上がってばかりいた私は、それが冬の終わりで…

続 春の鹿

今日は先週の発言を撤回せねばならない。 私は先週の記事の中で、「角川書店の『俳句歳時記』に掲載されている「春の鹿」の説明があまりにヒドいので異議申し立てる」と書いた。私はこの発言が誤りであったことを謝罪しなければいけない。そのため鹿には悪いけれど、今一度『俳句歳時記』を引用させていただくことにする。 “ 春になると、雄鹿は角が抜け落ち、雌鹿も脱毛し、まだらに色褪せて醜い。また鹿は十~十一月ごろに交尾し、五~六月に出産する。春、子を宿した鹿は孕鹿といい、やつれてものうげで、動