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パート軍団の秘密。

パートさんたち、、、と
まるで、
十把一絡げのような、言い方、呼び方をされる。

名前で呼んで欲しい。

パートさんと言う名前ではない。

入社した時、パートは私ひとりであった。

それが、
年月を経て、多人数になり
そのうねりは、もはや、パート軍団化した。
ある意味、怖い。

パート軍団は、示し合わせて、
お昼休憩は一緒にとり、
ぺちゃくちゃ、ワイワイ、がやがやと
超絶うるさい。

朝の出勤まで待ち合わせてる。

そういう行動をとるから
「パートさんたち」と呼ばれるのだ。

とは言え、世の中、表裏一体である。
やかましいパート軍団が現れて
「職場ランチ」は廃止された(笑)

うるさいんですけど。

この軍団の中に
40代の男性がひとりいる。

感心するのは、その中にあって
彼は決して浮いてないのである。
ママ友パートたちの、しっかり仲間となり、
楽しく過ごしているように見える。

いちばん、古参の私の方が浮いている。

彼は元々、
国立大学卒の建築士であったと聞いた。

では、何故にここでパートを?

誰もが謎に感じる疑問に、彼は笑顔で、  

「そうっすねー」
「は、は、は、、、」

「あぁ、いや、いや、そんなたいそうな
ことじゃないっすけどね、、
妻は勤務医でしてね、まあ、僕がね、
子供たちをね、、」

「余った時間をね、仕事しよーかなって」

なるほど。

主夫でパートという立ち位置が合ってるのか、
機嫌良く仕事をされてるが、
彼の心の中までは、分からない。

20代の若造研究員に、
「あっ、そこのゴミを捨てて来て下さい」と
言われた彼は、
「はい」と言って、ゴミ袋を持って
歩いて行った。

気のせいか、
その姿は、背中が丸く、妙に寂しげであった。


「これはね、こんな感じでやって下さい。
わかります?」

と、声高で強い口調で話しているのは研究員。

「はい、、、分かりました。はい、、」
と、小さい声で頷いているのは
パートスタッフ。

ふたりは同じ年齢である。

仕方のないことだし、
割り切るしかないが、、、ちょっと辛い。


「この会社、みなさん凄いですよね?
私は、何も持ってないし、何も、、、」

と、入社時に語っていた彼女だったが。
今は、どう思うのか。

そして、その次の春。
彼女は自分の息子を、
県内でも超有名な進学校に入学させた。

やっぱり、、と深く頷いた。


みんなで固まって、うるさいパート軍団だが、
ひとりになった時、
その横顔はいたって穏やかで慎ましい。

いつか、自分の子供をいい大学に、、、
もしくは、ここの大学に、、、と
秘めた想いを胸に働いているのかなぁ、、、。

わちゃわちゃ騒ぎながらも、
その強く熱い想いは、決して誰にも言わない。

秘密裡にコトを進めている。と推察。

あくまで、私の妄想だが、
当たらずと言えども遠からずではないだろうか。


「日々、自分がやっている仕事を
みんなに紹介してもらいましょう」

えっ? パートもやるんですか?

「もちろん、ひとりづつね、発表ね」

まじか。

この会社は、突如、
不整脈を起こしそうなことへの
強制参加を提案してくる。

年寄りの心臓に悪い。

プレゼンテーションを
得意とする人たちの前で発表なんて、
これはもう、パワハラの一環ではないか。

私は、無い知恵を絞って考えた。
みんなの前で喋ることなく、姿も見せない。

なんじゃ、そりゃあ〜(絶叫)


動画という手があるではないか。ね?

スマホ三脚を準備して、
誰にも見つからないように撮影開始。
50本に及ぶ動画に
音楽やテキストや音声などを入れて
編集作業をする。

これはこれで楽しい。

「何してるんですか?」
「怪しいですねー」

と、男性スタッフに笑いながら言われた。

う、うん、別に。なんにも、、ふふ、ふ

シニアパートの重要な秘密である。

うふっ。

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