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シニアパート、雨の朝で蘇るロンドン旅。

目が覚めた時、雨の音が聞こえるのが好き。

ただ、それには条件がある。
その日、仕事は休みでなければならない。
どこにも出かける予定のない日。

しばらくベッドに深く潜ったまま、
雨音を聞きながら、眼を閉じ、
何も考えないようにする。

私の寝室は半地下にある。
窓から上を見上げると
山茶花の植え込みがあり、冬であれば、
赤い花が可愛い。
その下は打ちっぱなしのコンクリートの
ドライエリアになっている。
なので
雨が降ると
その雨音はコンクリートにあたり、
賑やかな音になり楽しい。

本日、2024年2月19日。雨。
どこにも行く予定はなし。
今夜は、ちらし寿司を作るつもりだ。


2005年2月10日。
午前3時に起きた。
小雨が降っている。
私は今からロンドンに向かうのだ。

頭が痛い。偏頭痛だ。
この大事な時に悔しい気持ちと
体調の悪さで混乱してしまった。
それでも
予約してあったタクシーに乗りこみ、
空港に向かった。 
まずは、国内線で成田空港へ行く。
相変わらず頭は、ガンガンする。

その頃、夫は単身赴任で東京にいた。
その夫に電話をかけた。

頭が痛いけど、どうしよう。

「とりあえず成田まで行けそう?
そこで、もう一度考えて」

自宅を出る前に飲んだ薬が効いてきたのか
成田に着く頃は、ずいぶん良くなった。

が、、今度は胃が痛い。
空腹に頭痛薬を飲んだせいか、、、。
もう、ヤケクソ。胃薬も飲む。

そして空に。

「体調、良くないですか?大丈夫ですか?」と
キャビンアテンダントさんに
言われるほど体調不良。

運がいいことに隣は空席。
窓にタオルを置き頭を乗せて、辛うじて
身体を曲げて横になることができた。

「ヒースロー空港は雨」と機長アナウンス。  
もう、雨でも曇りでもどっちでもいいよ。
と、今度は着陸前の耳の痛みで苦しんだ。

家を出てからいったい
何時間経過したのだと、考えつつ
空港の到着ロビーで待つ
娘の身体の中に倒れこんだ。

矛盾しているが、
苦しくても楽しいフライトであった。

娘が住むフラットは
クィーンズパークが目の前にある。
2月でも名前の知らない可愛い花が咲き、
あちこちでリスが走り回っている。

「ここでは犬のリードを外さないで下さい」の
立札がある。なるほど。

一晩ぐっすりと眠ると
体調はすっかり良くなった。

「今日は、コッツウォルズへ行こうよ。
体調、大丈夫?行けそう?」

行く、行くよ。
どこか知らないけど。

日本人アシスタント付きツアーで
イギリスで最も美しい村と言われる
コッツウォルズへ。

「禍福は糾える縄の如し」とは
こういうことを言うのか。 
苦あれば楽あり。

浅い川が街中を流れる
ボートン・オン・ザ・ウォーター。

石造のコテージが立ち並ぶ
バイブリーのアーリントン•ロウ。

はちみつ色の石壁の家々。
花が咲き誇る庭。

ポツポツと小雨が降り出す。

イギリスの天気はコロコロ変わる。
パッと晴れたかと思うと急に暗い雲。

夜はピカデリーサーカス近くの
日本料理レストランへ行く。
ロンドンに来ると必ず立ち寄る。

「祭〜 St. James's」

ここでは、鉄板焼きや、お寿司、天ぷらなどの
和食を食べることができる。 
キッコーマンの醤油ビンを見るだけで嬉しい。

もちろんビールは、アサヒドライ。

料金は高いが
娘に食べさせたい。
私も食べたい。

翌日はブレント•クロスのIKEAへ。
正直言って、
どこだったのかよく分からないが
多分ブレント•クロスだったような気がする。
その頃、
IKEAはすでに日本進出はしていたとのことだが
近くにはなく、
私は、その名前すら知らなかった。

商品の多さ、可愛さ、安さに
圧倒されて買いまくった。

その時に買ったデュべカバーは、
現在も活躍中だ。
喜んで同じ物を4枚買った。
大概、飽きてきているのだが、
丈夫で破れない。
多分、私はこのまま、他のカバーを
買わないまま一生を送るのだろう(笑)

そして、
娘とはパディントン駅で別れる。

あの有名なアガサ•クリスティ作のミステリー。
「パディントン発4時50分」

ここだよね。
と話しながら、私はひとり列車に乗る。

娘は
「じゃあね、、、」と言うと
振り返りもしないで歩いて行った。

うん。

伝えたいことがいっぱいあるはずなのに、
何も言葉にできない。

私はヒースロー空港に着くと
慌ただしく、お土産を買い、トイレに行き、

搭乗した。

ただ今より離陸します、、の
アナウンスが流れると轟音とともに
身体がふわっと浮く感じだ。

そして、
雲間から見えるロンドンの街を見ながら、
また、泣いてしまった。


成田空港に着いたのは、
2005年2月15日。東京は雨。


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