非正規社員が雇い止めされるまで
非正規は雇用の調整弁とは良く言ったものだ。
キュッキュッと弁を絞ってね。
さあ後は自己責任!
非正規のお前達が悪い!(笑)
ってね!ははっ!
2019.12
中国で新種のウィルスがー…なんてニュースを聞いてはいたが他人事だった。
年末年始で仕事に追われていたのだ。
2020.1
2020.2
中国の都市封鎖やらクルーズ船の対応で日本が批判されていたが、気分は対岸の火事だった。
むしろ一緒になってクルーズ船の対応を批判したり、早く緊急事態宣言出せや!なんてイキっていた。それどころかウィルスの脅威を楽しんでいた節もあり、不謹慎なカス野郎だった。
2020.3
会社の筆記試験と面接を受け、内定を貰ったがコロナの脅威が迫っていた。観光サービス業がこれ程のダメージを受けるとは思ってもいなかった数ヶ月前の俺をぶん殴りたかった。
2020.4
関東圏の客に依存していたため、通常営業をするか閉館するかで意見が別れ事務所は殺伐としていた。勿論俺の社員登用の話は思い切り流れていった
。新たに提示されたのは、1ヶ月ずつ契約を更新し、コロナが収まり次第アルバイトで直雇用するという絶望的なものだった。4月末にはそれすらも反故にされ、その時は来た。
「明後日から来なくていいそうです。5月末で契約は終了です。」
派遣の担当はそう言い電話を切った。
最終日に制服を返し、俺は帰路に着いた。
数人の社員が声を掛けてくれたが、心ここにあらずの俺はアホ面を晒してヘラヘラ笑うしかなかった。
全国にいくつかのリゾートホテルを所有するグループ会社だったのだが、3月末の時点でグループ内に200人いる非正規社員は全員切られており、俺も時間の問題だったのだ。俺を残そうと頑張ってくれた社員達も役員の命令には逆らえない。
20代の先輩社員に、
「きふりさんやったじゃないすか!200分の1ですよ!勝ち残りましたね!」
なんて言われていたが結局は
201分の0
非正規は全員死んだ。