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忘れ得ぬ人  天国の祖父への手紙

お爺ちゃん
元気ですか?
そちらの暮らしはどうですか?

お爺ちゃんが天国に旅立ったのは、
僕が小学校4年の9歳の時でしたね。
もうあれから何十年も経ちました。
たぶん、今 会っても、自分の孫だとは、わからないかもしれないですね。
それほど僕も大人になりました。

天国に時間の経過があるかどうかは分からないけど
僕の心の中のお爺ちゃんの姿は、あの頃のままです。
家族の中では、目鼻立ちがクッキリしていて彫りの深い顔でしたね。
タバコが大好きでしたね。
キセルでタバコを吸う姿がとてもカッコ良かった。
今の芸能人に例えると阿部寛さんのようなカッコイイ顔に思います。
お爺ちゃんは若い頃モテたんじゃないかなぁって思っていました。
僕はそんなお爺ちゃんには似てなかったのでちょっと残念です。

3歳~5歳の頃の僕は三輪車が大好きでした。
その三輪車をお爺ちゃんが押してくれて色んな所を散歩に連れていってくれましたね。
当時、アスファルトの道は、ほとんどなくて、砂利道が多かったから大変だったと思います。
せがむ僕を嫌がりもせずに、毎日毎日 三輪車を押してくれましたね。
あの頃は、それが当たり前のように、ずっとずっと続くように思っていました。

しかし、いつの頃か・・・

お爺ちゃんは、足腰が弱くなってしまい、
「つれんぽ」を使うようになってしまいましたね。
※つれんぽ(山形の方言でステッキのこと)
その頃から、だんだん体が弱ってしまいましたね。
胡坐をかいたお爺ちゃんがキセルタバコを吸うと、後ろにひっくり返るようになって
小学校2年の頃からやんちゃになった僕は「タバコ吸わないの?」と
吸うように催促するようになりました。
従妹が遊びに来ると、その子と一緒に催促して楽しんでいました。
お爺ちゃんがひっくり返るのが面白かったからです。

更に体調が悪化したお爺ちゃんは医者にタバコを禁止されましたね。
家の中にはタバコがなかったから隠れて友人にもらって吸うようになりましたね。
父は「歳も歳だし、好きな物をあんまり禁止するのも気の毒だ ほどほどならいいかな」と言っていました。
その1年後くらいでしょうか、体調悪化がさらに進んで、
お爺ちゃんは寝たきりになってしまいましたね。

僕が小学校4年の9歳の時・・・

2月の雪の降る寒い日、朝からお爺ちゃんの呼吸が荒くなって苦しそうで心配になりました。
その日の夕方・・・お爺ちゃんは天国に旅立ってしまいましたね。
僕は、まだ人の死というものが、どういうことなのか分からない子供だったので、とてもショックでした。
魂が抜けて肉体が動かなくなるというのは理解できていても、
ずっと家で一緒に暮らしてきたお爺ちゃんがもういない事を実感するまで、だいぶ時間がかかりました。
何度も何度も不思議な夢を繰り返し繰り返し見ました。
そのたびに大好きだったお爺ちゃんが、もういないのだと思うと布団の上で涙が出てきました。
もう遠い昔のことなのに、今でも昨日のことのようによく覚えています。

お爺ちゃんに教わったこと、それは。

人間には、かならず死があって、誰もそれを避けて通ることはできなくて、
だから、「命は大切なものだ」
そのことをお爺ちゃんは身をもって教えくれたのではないかと、何年か経ってそう思うようになりました。

お爺ちゃん、
天国にもキセルタバコはありますか?
もし、あるなら体に気を付けて楽しんでください。
きっと、お祖母ちゃんとも仲良くやっているのでしょうね。
僕は、まだそちらに行くのは遠い先のことだけど
いつか、そちらで再会したら美味しい酒を飲みましょう。
あなたの孫も、もうアルコールが美味しく飲める歳になりました。

忘れ得ぬ人 天国の祖父への手紙。


Photo:かっつぇ
words:かっつぇ

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