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【グレショー】1回目の放送の感想

担当した『THE GREATEST SHOW-NEN』の第1回を見ました。

こちらで見逃し配信を見ることができます。

5月1日(日)1:00 までです。

さてさて、今回から感想や思い出を書いていこうと思います。

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1、顔合わせ

はじめましての顔合わせ。
事前にAぇ! groupのいくつかの楽曲や、YouTubeの動画をチェックして、顔と名前とそれぞれの関係性をなんとなく頭に入れた上でお会いしました。

第一印象としては、「チェックした印象通りの人たち」という感じでした。
とてもいい意味で、裏表がない。
カメラが回っているときと回っていないときの差がほぼなくて、驚きましたねぇ。

この辺はもう、非常にアイドル的というか、「(いやぁ~、ジャニーズやわぁ~。鍛えられてるわぁ~。売れるわぁ~)」と実感。
もちろん努力の賜物でしょうけど、人から好印象を獲得する才能というか、「私たちは人から好かれるために生まれてきたし、人から好かれるようにして生きていく」という、人生の前提がバッチバチにある感じで、ほんとスゴイなと思いました。

なんというか、僕とか普通に挨拶の声とか小さいし、あまり笑わないし、伏し目がちで人生を送っているわけで、自分がいかに「人から好かれることを放棄して生きているか」を思い知らされましたね。
まあ僕自身は別にそれでいいと思っちゃってはいますけど。
しかしなんで「それでいい」とか思っちゃってんですかね?
意味わかんないですよね。
メリットなさすぎて笑いますよね。

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2、エチュード

放送されたエチュード部分ですが、3回くらいやったと記憶しています。
あれを試みた理由をば。

前述のとおり、彼らは非常にサービス精神が旺盛で。
「人を楽しませるプロ」であることに文句なんてありませんが、それが演技の稽古をする上で邪魔になっているような気がしたんですね。
というのも、今回のフラッシュフィクションはとても短いシーンの羅列でありますから、ともすれば単なる「面白100連発」みたいな時間になってしまうわけですよ。
でも、匿名劇壇ではそれをあまり求めていなくて。

例えばじゃあ、エチュードの中で、佐野さんには「トイレに行きたい」という条件が与えられていましたよね。
みなさん察しが良かったので、一発目から照準を合わせてくれましたが、本来なら彼らは「はい、じゃあトイレに行きたい演技をしてください!」と言われたなら、めちゃくちゃ面白くやってくれる、面白くやってしまえる人たちだったと思うんですよ。
股間を抑えてモジモジして、もだえてみたりね。
その辺の「面白くやろう」という下心が、稽古の過程で透けて見えていたんです。

「そういうことじゃない。僕は、それを演技とは呼んでない。それは単なる面白合戦です」というエクスキューズをしてから、あのエチュードの時間を過ごしていました。

あのエチュードは一見すると、「いかに自分の与えられた条件を周囲に伝えるか」というゲームのように見えますが、僕がやりたかったのはそこじゃなくて、「いかに自分の与えられた条件を、ただ内在させた状態で、その時間を過ごせるか」というゲームなのです。

それでいうと、「昨日一億円が当たった」という条件が与えられた小島さんの、「支払いは俺がする」という趣旨の発言は、あまり相応しくなかったわけですね。
それは「昨日一億円が当たったことを周りにアピールしたい人」のお芝居になります。
やりたいことは、それじゃないんです。
ただ心に留めて、ニヤニヤしているだけで、僕たちは「(あいつなんだかニヤニヤしているな…。何かイイことがあったのかな…)」と、彼の余白を想像することができます。

もしかすると「支払いは俺がする」ではなく、「シャトーブリアン食べてみたくね?」というようなことを言い出すほうが、リアルだったかもしれないわけですね。

もちろん喋らないとどうにもならないので、彼らも「どんな言葉を選んで表現するか」ということを必死で考えていた様子でしたが、本質はそこではないということを、このエチュードを通して伝えて、演出の前提として共有した次第です。
よって、「何を言ったか」ではなく、正門さんやリチャードさんの「居ずまい」が非常にそれっぽかったというポイントを評価した、ということになるわけですね。

余談ですが、ぶっちゃけ稽古する回数には限りがあったので、本当は「エチュードなんかやらずに、ガンガン台本の稽古をしたい」という想いがありました。
でも、僕もまあサービス精神がそれなりにあるというか、「(まあ…ちょっとくらいテレビ映えしそうなシーン作っとくか…)」というゲスい下心で、あの時間を作りました。ゲスゲス。

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3、『これはまだ本番ではない』①

冒頭のダンスシーンは、おおむねお任せで組み立ててもらいました。
もちろん振り付けはもともと彼らの楽曲なので、それをそのまま採用。
「○○のライブバージョンでよくない?」とか話しているのを耳にして、「(へー、そういう違いがあるのか。しかもそれが頭に入ってんのか。すげーな)」とか思いました。

ダンスの中で、その後の展開における関係性を示唆できるといいですねーなどと伝えつつ、福本さんの硬い表情や、佐野さんのシャウトなどが仕上がっていきました。

佐野さん(役:安堂)が概ねほとんど丁寧語で話していたりしますが、これは台本をベースにしながら、「Aぇ! groupの皆さんの、そのままの関係性における言葉遣いにすべて修正してください」という指示を与えているからです。
テキストを頭に入れてもらいつつ同時変換させたので、かなり苦労をおかけしましたね。

ここで課題になったのは、空間の使い方でした。
舞台上の中央が、ステージのようにポッコリ上がっているのですが、どうしても全員そこに集まりがちでした。
演出としては、『これはまだ本番ではない』のシークエンスは、衣装部分や後ろの着替えエリアなど、「舞台上のすべてがアクティングエリア(演技で使う空間)」になっています。
なぜなら、ここで描かれているのは「フラッシュフィクションの稽古中の様子」だからです。
真ん中の上がったステージは、『#銃撃』など、「フラッシュフィクションの本番」で使用するというイメージなわけですね。

これもまあ皆さんのサービス精神ゆえにということですが、気がつくと真ん中に集まって、横並びになって、非常に「見栄えが良い立ち位置」になってしまうので、そこの枷を取っ払うのは少々時間がかかった記憶があります。
そういう訓練を受けてきた人たちだから当然だよなぁ、なんて思いました。

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4、『プリンとバイオレンス』

もともと劇団では男女コンビで上演していましたが、男同士でやってもらうことで、より一層深みが出て面白かったですね。
Twitterを見ていると、ラーメンズの『釣りの朝』を連想した人を何人か発見。

僕もラーメンズは好きなので、言われて初めて、たしかに、と思いましたね。
同性愛者の日常を、特に「二人は同性愛者なんです」という注釈を入れることなく、なんのテライもなくスーッと描いていることで、雰囲気が似たんだろうなと思います。

DVについて、「結婚してようがしてまいがDVはDV。彼らの理解は間違っている」という指摘を福本さんが行いますが、これはテレビ用で入れたものでした。
制作のほうから「ドメスティックじゃないでしょ。結婚してないんだから」という表現について、「間違った事実を放送してしまうことになる」という指摘が入ったんですね。

なるほど、ということで注意を促すセリフを挿入。
これも結果的にレイヤーが増えて、より面白くなったと思います。

たった一瞬の出来事なのに、複数の角度から光が差し込んでいる。いくつかの見え方が存在している、まさにプリズムといった感じ。
今からやっていくのはこういうことですー、という良い導入になったと思います。

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5、『銃撃』

「例えば”手を洗ってきた”とか”トイレに行ってきた”とかなんでもいいですけど、ここに至るまでの時間があった上で、『なにそれ?』という始まりのセリフを言って欲しい」というオーダーを、正門さんにしました。
ト書きがあるわけでもないので、ぶん投げですよね。
放送で、僕が手を叩いた後に「もう一回いいですか?」とやり直しを要求した正門さんを見て、「(そりゃそうだよな…)」と思いました。

のちの稽古で、正門さんが掃除をするマイムを始めたので、「それいいですね」と採用。
掃除機はやかましいので、コロコロを用意していただきました。
ちょっとしたことですけど、こういうのもなんか神経質っぽくて深みが出ますよね。
夜、寝る前、パジャマを着てコロコロしてる人間って感じが、いいですよね。

劇団では「なんかそういうの好きだよね。地震の動画とか、火事の動画とか」というようなセリフがありましたが、「特定の地震」「特定の火事」を連想させるということで、こちらもリライトすることになりました。
たしか「喧嘩の動画」に変えたはず。
あれ? でもこのワード、放送されてたっけな?
もしかしたらカットが入ってたかも…。忘れちゃいました。

小島さんはスマホのモック(模型)を取り扱うわけですが、彼はなんか不器用でねぇ(笑)!。
稽古中、「どう見てもスマホを操作してるように見えないです。操作しているフリをしている男にしか見えないです(笑)」と指摘したことを覚えています。
ちょっとしたことですけど、こういう細部のリアリティこそ重要だと思っています。

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匿名劇壇で上演した『大暴力』の本編中の6作品をYouTubeで公開しています。

グレショーのことを書くと、Aぇ! groupのファンの方々があまりにも反応してくださるので、ここぞとばかりに劇団員の松原が作ってくれました。
感謝。

先に見てもヨシ、後で見比べるもヨシだと思います。

ただまあ…尺の都合上とかで、上演はしたけど放送ではバッサリカットとかも多分ありえるので、そんときゃ許してくださいね。
(『友達はどこだ!』とか結構怪しい気がするけどな…)

余談ですが、そういう編集もすごいしやすい作品のスタイルだろうと思って、「テキトーに切り刻んじゃって結構なんで、うまいことやってください!」と、ディレクターさんに伝えました。
セリフとセリフの間に、若干のジャンプカットを入れてるっぽいところもありましたよね。
ので、これはあくまでもテレビ用。

いつか劇団の、席を立ちたくても立ちにくい、お尻が痛くなる小劇場の拘束感も、また楽しみに来てみてください。

ではまた来週。

(了)

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