高校3年生たちから学んだこと
先日、演劇科の3年生たちに向けた最後の授業が終わった。
高校3年生の彼らにとって、祝祭的に機能するのは「卒業公演」という3年間の集大成イベントだ。ただ、これは昨年の6月に幕を閉じている。
卒業公演の終了後は、進路がどうだ受験だどうだと忙しくしていたことだろう。
なので、夏休み後の授業については、良く言えばウイニングラン、悪く言えば消化試合的な雰囲気で進行していった。
(実際、「卒業公演」という大仕事を成し遂げた彼らに教えることなど、ほとんどない。)
とはいえ、いよいよ最後の授業。
なにか総まとめのようなことを言語化しておいたほうがいいだろうなと考えながら向かったが、僕なんかよりも彼らのほうがよっぽど「最後の授業」を一枚上手に演出。
終了のチャイムが鳴ると、サプライズ。卒業公演で歌った曲をワンコーラス歌唱して、各先生へ一人ひとりがメッセージを書いたお手紙を頂戴した。
いやはや、頭が下がるし、身に余る。
僕も初めてこの高校に来て、初めて教えた1年間なので、比較検討ができているわけじゃないが、肌感として「おそらく今回の期の子たちがとりわけ優秀ではあるんだろうな」と感じていたが、間違っていない気がする。
ちょっと穿った言い方になるが、「巧みにイイ子」なのだ。
「素直でイイ子」じゃない。技巧派のイイ子。
ただし、演じているとか、「フリをしている」とか、そういうニュアンスではない。
律している。わきまえている。心得ている。そんな感じ。
僕が大学3年生くらいでできるようになった振る舞いを、すでに体得している感じ。
今振り返っても、高校3年生の頃の僕は絶対にこんなんじゃなかった。
もっとこう、うん、端的に、子どもだった。
そんな彼らだったからこそ、非常に失礼な言い方だが、『【ドキッ♡】初めての教育!~最後の幕が閉じるまで~【演劇科編】」をプレイするチュートリアルとして、とてもやりやすいキャラクターたちだったなと思う。
(ほんまに言い方終わってるけども)
彼らじゃなければ、初回プレイでバッドエンドもあり得た。うん、結構、本当に。
1年間、教える立場として過ごさせていただき、僕もたくさんの学びを得た。
得たはず。
得て、次に活かしていかなければ、彼らに向ける顔がない。
ので、言語化しておこうと思った。箇条書きで。
■高校3年生たちから学んだこと
☑笑顔でいることは大切
なんかマジでみんなよう笑ってた。何がおもろいんか意味わからんときもあったけど、笑ってる人を見て嫌な気持ちにはならない。笑ってたほうがええんやな。
☑人の目を見て話そう
俺マジで人の目を見て話すのが大嫌いやけど、絶対に見たほうがええに決まってるわなってことを学んだ。知ってたけど、改めて。
☑質問させろ
双方向性のある時間を過ごしたほうがよくて、一方通行で終わらないほうがいい。
☑基本抱え込む
ヘルプをすぐに出せる生徒なんて珍しくて、基本溺れてても自力解決を試みてることがほとんどなので、溺れてるときはビート板的なモノを投げてあげたほうがいい。
☑不服も隠す
異議申し立てをする生徒も稀で、基本的には不服も不平も不満も表に出てこない。逆に出てくるレベルのそういうのは愛想笑いしてたら大丈夫。出てこない系のそれがまずい。
☑ときにはパッション
僕は言語化の鬼で、なにかと「言葉」に頼ってしまうが、けっこう声量とかジェスチャーとか言い方とか、パッション系のアプローチも大切。それしか通じないこともある。
☑褒めたいときは褒める
「お、ええやん」という褒め要素が見つかったときは、忘れないうちに褒めておいたほうがいい。けっこう生徒の心に刻まれるっぽい。
☑叱りたいときは言葉を選ぶ
褒め言葉の比にならないくらい、否定的な言葉のほうが刻まれる。要注意。
☑教育計画を共有する
どこに向かって走っているか、何のためにこの時間を過ごしているかをすり合わせて授業をしたほうがいい。数学みたいに「これが何の役に立つの?」的な空気になる。
☑冗談は通じない
世代差も大きく、立場の差も圧倒的なので、基本的に冗談は通じない。ハラスメント的な観点はもちろんだが、「俺20か国語喋れるねん」というような単なるウソも、別に信じる。誰も「んなわけないやろ!」とは言わない。要注意。
☑「じゃあお前はできんのかよ」
生徒は口に出さないだけで、ずっと「じゃあお前はできんのかよ」と思っている。できると豪語して一切やらないか、「俺にできないからこそ、みんなにはできてほしい」というような詭弁を用意しておくべき。
☑帰り道には気をつけろ
どこで生徒に見られているか分からない。変なことをするときは、キョロキョロしてからするようにする。(もしくは、しない)
☑結局は得意分野に回帰する
できていないことをできるように訓練する時間も重要だが、最終的にはできていること、本人が得意としていることに回帰して、やらせてあげたほうがいい。結果、伸びる。
☑自分も楽しむ
卒業公演の部分稽古を、一番前の席で見て、本当に食らったし、感動した。そういう体験を積極的に食らいに行く。高みの見物をしてるだけじゃ、カス認定されて終わり。
***
さて、次は2年生が卒業公演に向けて走り出す。
たくさん教えて、教わりたい。
演劇をつくろう。そんなふうにして生きていこう。
(了)
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