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誰がなぜグリーニアムを支払うのか?分解の試み

2024年10月公表のドイツ連邦銀行ワーキングペーパー。原題は「Who pays the greenium and why? A decomposition」で、著者はDaniel Fricke Christoph Meinerding。 以下はその要旨。 (拙訳) グリーンボンドと、これに対応する債券の利回り格差(グリーニアム)の平均値は、3ベーシスポイントである。我々は、債券の保有者構造からグリーニアムを分解し、投資ファンド・銀行・保険会社がそのほとんどを支払っているこ

    • 台湾をめぐって生じうる武力衝突の経済的影響

      2024年10月公表のセントルイス連銀ワーキングペーパー。原題は「The economic effects of a potential armed conflict over Taiwan」で、著者はChristopher J. Neely。 以下はその要旨。 (拙訳) 本稿は、歴史的な事例を紐解きつつ、中国が台湾を侵略または封鎖する場合に、米国および世界にもたらされうる経済的な影響を検証した。こうした衝突は、資産市場における安全への逃避を生じさせるほか、貿易の甚大な寸断

      • 貿易の分断、インフレ圧力、金融政策

        2024年10月公表のBISワーキングペーパー。原題は「Trade fragmentation, inflationary pressures and monetary policy」で、著者はSilvana Tenreyro, Ludovica Ambrosino and Jenny Chan。 以下はその要旨。 (拙訳) 貿易の分断はどのようにインフレ圧力に影響するのか?インフレ率を目標の保つために金融政策に求められるのは何か?こうした問いに答えるため、我々は異質性のあ

        • 人工知能と大量保有データ:中央銀行にとっての機械

          2024年10月公表のBISワーキングペーパー。原題は「Artificial intelligence and big holdings data: Opportunities for central banks」で、著者はXavier Gabaix, Ralph S J Koijen, Robert Richmond and Motohiro Yogo。 以下はその要旨。 (拙訳) 資産需要システムは金融資産に対する投資家の需要と企業による証券の供給とを特定する。我々は、

        誰がなぜグリーニアムを支払うのか?分解の試み

          金融政策の波及効果と需要のリアロケーション

          2024年10月公表のカナダ銀行ワーキングペーパー。原題は「Monetary Policy Transmission amid Demand Reallocations」で、著者はJulien Bengui, Lu Han, Gaelan MacKenzie。 以下はその要旨。 (拙訳) パンデミック初期にみられた財支出とサービス支出の割合の大幅な振れは、インフレ率の急騰につながり、金融政策にとっての新たな課題を投げかけた。我々は、雇用の上方調整に係る摩擦を特徴とした複数セ

          金融政策の波及効果と需要のリアロケーション

          金融政策の非対称な波及効果:サプライチェーン、信用ネットワーク、変動制への恐怖の役割

          2024年10月公表のECBワーキングペーパー。原題は「Asymmetric monetary policy spillovers: the role of supply chains, credit networks and fear of floating」で、著者はJakub Mistak, F. Gulcin Ozkan。 以下はその要旨。 (拙訳) 本稿では、世界金融危機以降にみられたいくつかの事例をもとに、Fedの金融引き締めと金融緩和のグローバルな波及効果に関

          金融政策の非対称な波及効果:サプライチェーン、信用ネットワーク、変動制への恐怖の役割

          家計の信念と行動に対してインフレ期待が持つ因果効果

          2024年10月に開催されたオーストラリア準備銀行の年次カンファレンスで発表されたペーパー。原題は「THE CAUSAL EFFECTS OF INFLATION EXPECTATIONS ON HOUSEHOLDS’ BELIEFS AND ACTIONS」で、著者はOlivier Coibion Yuriy Gorodnichenko。 以下はその要旨。 (拙訳) 我々は、家計の決定に対してインフレ期待が持つ因果効果を研究するためにRCTがどのように用いられうるか議論す

          家計の信念と行動に対してインフレ期待が持つ因果効果

          中央銀行に対する信頼

          2024年10月に開催されたオーストラリア準備銀行の年次カンファレンスで発表されたペーパー(ドラフト段階)。原題は「Trust in Central Banks」で、著者はMichael Ehrmann。 以下はその要旨。 (拙訳) 中央銀行への信頼は金融政策を成功裏に遂行するうえで極めて重要な要素である。しかし、近年では、多くの中央銀行の信頼性が低下している。例えば、パンデミック後のインフレ率急騰や、中央銀行による物価予測の大きな誤差、あるいはフォワードガイダンスからの出

          中央銀行に対する信頼

          中央銀行のコミュニケーションの20年、そして将来への教訓

          2024年10月に開催されたオーストラリア準備銀行の年次カンファレンスで発表されたペーパー。原題は「20 years of central bank communications, and lessons for the future」で、著者はTiff Macklem and Jill Vardy。 以下はその要旨。 (拙訳) 中央銀行のコミュニケーションは、金融政策の目的の達成に向けて透明性・公開性が大いに強化されるにつれ、この20年間で本質的な変化を遂げてきた。中央銀

          中央銀行のコミュニケーションの20年、そして将来への教訓

          家計の超過貯蓄と金融政策のトランスミッション

          2024年10月公表のFRB国際金融ディスカッションペーパー。原題は「Household Excess Savings and the Transmission of Monetary Policy」で、著者はThiago R.T. Ferreira, Nils Gornemann, and Julio L. Ortiz。 以下はその要旨。 (拙訳) コロナを経て、多くの先進国の家計貯蓄はトレンドを上回る水準にまで上昇した。家計貯蓄の総消費との関係を考慮すると、こうした「超

          家計の超過貯蓄と金融政策のトランスミッション

          銀行の地理的多様化と調達の安定性

          2024年10月公表のBISワーキングペーパー。原題は「Bank geographic diversification and funding stability」で、著者はSebastian Doerr。 以下はその要旨。 (拙訳) 近年の銀行の混乱は、銀行による支店網と預金獲得行動に改めて注目を集めさせた。本稿では、銀行の預金ベースの地理的な多様化が資金調達の安定性を高めるという新たなエビデンスを提供する。私は、地理的な多様性が高い銀行ほど、支店ごとの預金成長率の散らば

          銀行の地理的多様化と調達の安定性

          ECBの金融政策を識別するための統計的アプローチ

          2024年10月公表のECBワーキングペーパー。原題は「A statistical approach to identifying ECB monetary policy」で、著者はYıldız Akkaya, Lea Bitter, Claus Brand, Luís Fonseca。 以下はその要旨。 (拙訳) 我々は、金融政策に係るアナウンスを受けた高頻度の資産価格変動から、金融政策に係る指標を構築し、資産価格が特定の次元に集中することや、その分布の尖度が高いことを主

          ECBの金融政策を識別するための統計的アプローチ

          政府保証貸出とポピュリズム

          2024年10月公表のECBワーキングペーパー。原題は「Government-guaranteed credit and populism」で、著者はErnest Dautović, Robin Hsieh。 (拙訳) 政治的なポピュリズムとその金融面の要因は捉えどころがないものと言われている。我々は、コロナ禍において借入環境が唐突に・不均等な形で変化したことと、フランスにおける過去に類を見ない政府保証貸出プログラムを題材に、流動性支援が政治的志向に影響するかを研究した。企

          政府保証貸出とポピュリズム

          ニュースの選択と家計のインフレ期待

          2024年10月公表のサンフランシスコ連銀ワーキングペーパー。原題は「News Selection and Household Inflation Expectations」で、著者はAdam Shapiro, Daniel Wilson。 以下はその要旨。 (拙訳) 我々は、選択的な報道のカバレッジがインフレに関するニュースへの家計の反応にどのように影響を与えるかに着目して、システマチックな報道の家計のインフレ期待に対する効果を検証した。経済に関するすべての動向をモニタリ

          ニュースの選択と家計のインフレ期待

          家計はどのようにインフレと賃金の期待を形成するのか?

          2024年10月公表のオーストラリア準備銀行リサーチディスカッションペーパー。原題は「How Do Households Form Inflation and Wage Expectations?」で、著者はAnthony Brassil, Yahdullah Haidari, Jonathan Hambur, Gulnara Nolan and Callum Ryan。 以下はその要旨。 (拙訳) このペーパーは、一般的なデータセットとフレームワークを用いた家計の賃金・イ

          家計はどのようにインフレと賃金の期待を形成するのか?

          ネットゼロへの道:資金フローの研究

          2024年10月公表のBISワーキングペーパー。原題は「The road to net zero: a fund flow investigation」で、著者はLouisa Chen and Koji Takahashi。 以下はその要旨。 (拙訳) 本稿では、2006年から2022年の間に人々が気候変動への関心を高めたことに対して、米国のグリーンエネルギー・ブラウンエネルギー株に投資を行うミューチュアルファンドとETFがどのように反応したかを分析する。我々は、グリーンな

          ネットゼロへの道:資金フローの研究