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原因がはっきりしない「じんましん」(特発性じんましん)

じんましんで病院に来られる患者さんの「7割は、特定の引き金(誘因)の無い、いわば原因のはっきりしないじんましん」です。じんましんが出ると食物アレルギーがご心配になって受診される方が少なくありません。今回はその「原因がはっきりしないじんましん」についてです。


じんましんとは?

じんましんは、突然かゆみを伴い、皮ふの一部が赤く腫れて盛り上がるものです。一個一個のじんましんは、数時間、長くても1日以内には、何も跡を残さずに消えます。逆に言うと、すぐ消えるような盛り上がった発疹はまずじんましんと言えます。次々にじんましんが出ては消え、場所を変えながら何日も続くことがあります(移動しているように見えます)

(参考)「じんましん」と「湿疹」の違い↓


お子さんや大人に関わらず、じんましんが出ることはあり、10人に1人くらい、一生に一度はじんましんを経験するといわれております。急性に数日で治る方も多いのですが、頻繁に出る、長く続く方も居ます。

じんましんの種類

じんましんは、大きく分けると誘発出来るじんましんと、誘発する原因が不明のじんましんとに分類出来ます。この原因不明のじんましんを「特発性じんましん」と呼びます。

誘発の出来るじんましんには、食物、動物、薬剤、などがありますが、実際には、誘因があるじんましんは「5%」しかありません。じんましんが出ると、食物アレルギーを心配される方が多いのですが、食物アレルギー以外のじんましんの方が、圧倒的に多くなっております。寒冷じんましんなどを入れても、誘発可能なじんましんは「3割程度」しかありません。つまり、7割もの患者さんは、誘因が明らかではありません。それでいて、毎日のようにじんましんが出るお子さんも居ます。

誘発可能なじんましんは、その原因を見つけて、接触や刺激を避ければ、じんましんは出ません(原因の食物を避ける、イヌやネコを避ける、など)

じんましんが出たら食物アレルギー?

食物アレルギーかどうかは、「食べた食材に原因があるかどうか」、で決まります。食物アレルギーは食べたタンパク質の量により症状が出ないこともありますので、「初めて食べた食材がある」、あるいは、過去に食べたことはあるが「今回は以前より多く食べた=過去最大量食べた」、という場合には食物アレルギーの可能性があります

具体的にそのような食材が無ければ、食物アレルギーの可能性は低くなります

「食事以外の原因」では、新しくペットを飼い出した、引っ越しをした、洗濯洗剤を変えた、などの、毎日の刺激となるような「環境の変化」において思い当たる特定の誘因が無いかどうかということになります。大人の方だと、薬や健康食品を飲み始めた、アクセサリー付け出した、入れ歯にした、などのこともあります。

時間的には、「殆どが食べて2時間以内」(乳児だと3-4時間以内)ですので、じんましんの出た半日以上前の食事は関係ありません。その他、薬剤、イヌやネコ、などの場合も殆どが、「接触後2時間以内」となります。つまり、じんましんが出た2時間以内に「いつもと違う食材」や「いつもと違う触ったもの」などが無ければ、特定の誘因のあるじんましんである可能性は低いです。

また、食物アレルギーのじんましんの持続時間は、半日程度、一日を超えることはありませんので、「2-3日連続」のじんましんであれば食物アレルギーは考え難いです。さらに、長期間=慢性的になれば、なおさら、食物アレルギーは考え難いです。

特に思い当たる原因が無ければ、検査の必要はありません(じんましんの原因では無いのに陽性となることも少なくありませんので、むしろ検査を採らない方が良いと考えております)

「食物アレルギーの診断」については、こちらも参考にしてください↓

誘因の無いじんましん

誘因が明らかでない特発性のじんましんは、風邪などでまさに「たまたま」(一生に一回だけ)出る場合もありますが、繰り返す場合、多くの方はいわゆる「じんましん体質」です。今後も特定の原因が無くじんましんが出る可能性があろうかと思います。

特発性のじんましんの症状は、あくまで「じんましんだけ」です。咳き込みや嘔吐など、じんましん以外の症状がある場合は、「何らかの引き金がある」と考えて、原因をしっかり検討した方が良いです。

家族に同じようなじんましんを持つ方が、結構な割合(3-4割)で居ます。家族に同じような方が居ると、家族と同じということで、ご心配も減るでしょう。特発性じんましんは、多くの場合、「風邪や疲れ、入浴などの刺激」にて、じんましんが悪化(悪化因子、トドメ的な感じ)します。

特発性じんましんの治療

特発性じんましんの治療は、抗ヒスタミン剤の内服となります。じんましんの程度により、内服を続ける期間が変わったり、内服薬の種類が変わったりします。出来るだけ、過敏状態を抑え、じんましんの無い状態を長く保てると良いかと思います。ぜひ、病院でご相談ください。

(参考)蕁麻疹 いつになったら治るでしょう?(日本皮膚科学会)https://www.dermatol.or.jp/qa/qa9/q16.html

『慢性に経過する蕁麻疹の多くは、症状の有無に関わらず、長期にわたり薬を飲み続ける必要があります。しかしそのようにしてうまく症状をコントロールしていくと、ほとんどの場合は少しずつ薬の量を減らすことができ、やがては薬を中止できるようになります』

また、病院にかかるときに症状が出ていなくても受診をためらう必要はありません。可能であれば、病院の先生に見せるため、じんましんの写真を数枚、時間をおいて撮っておくと参考になります。


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