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「卵黄」による「食物蛋白誘発胃腸症」(消化管アレルギー)

「卵黄」を食べた後に「嘔吐を繰り返す」赤ちゃんは、「卵黄による食物蛋白誘発胃腸症(消化管アレルギー)」の可能性があります。 卵黄の消化管アレルギーは、卵白が原因で起こる普通の鶏卵アレルギー(即時型アレルギー)とは違うタイプのアレルギーで、「嘔吐や下痢などの消化器の症状だけ」で、じんましんや咳などは出ません(稀に発熱を呈する赤ちゃんは居ます)。

*もちろん、超重症な卵白アレルギーのお子さんが、卵黄を食べた際に卵黄に混入した僅かな卵白で症状を起こすことはありますので、卵黄を食べて吐いた=卵黄の食物蛋白誘発胃腸症ではありません。また、稀に「卵白」でも食物蛋白誘発胃腸症を呈するお子さんがいらっしゃっいますので要注意です。

卵黄の食物蛋白誘発胃腸症は、卵黄を食べて「2-4時間後」に嘔吐することが多く(赤ちゃんによっては5-6時間後あるいはそれ以上時間が経ってからのこともある)、通常のアレルギーでは「2時間以内」が多く、症状が出る時間帯が少し異なります。ややこしいことに、最初は食べれていても「何回目に食べてから」嘔吐するようになることもあれば、「これまで食べれていた量」でも嘔吐するようになる場合もあります

当初は小児科に受診されても、認知度の問題もあり、かかりつけの先生が食物アレルギー自体を疑われない場合もあります。「卵黄を食べると吐く」ことが何回かあり、「卵黄以外の食物の時は吐かない」となると可能性が高まります(まれに複数の食材に対して蛋白誘発胃腸症がある場合があります)。通常の食物アレルギー(即時型アレルギー)の際に検査することが多い「特異的IgE抗体」は通常卵黄も卵白も「陰性」で、現状ではこのアレルギーは血液検査では診断出来ません。確定診断は食物経口負荷試験となります。

診断となれば一定期間の「卵黄の除去」となることが多いかと思います。食べられる量の卵黄は食べていても良いと思われますが、多くのお子さんで僅かな卵黄でも症状が出るようになり、完全除去にせざるを得なくなることが多いかと思います。卵白自体も食べられれば食べても良いかとは思われますが、そもそも卵白の即時型アレルギーが否定出来ているかどうか、一部のお子さんでは卵白でも症状が出てくることもあり、食べて良いかどうかは主治医の先生とよくご相談されると良いかと思います。

静岡県立こども病院のサイトには『予後についてはまだ十分な情報がありません。早ければ1歳で治癒することもあり、3歳までには多くの患者が治癒するようです』と書かれておりました(現在サイトは閉鎖されております)。僕の外来の患者さんでも同様の傾向です。時期をみて食物経口負荷試験を行い、治っているかどうか確認します。

疑わしい場合はかかりつけの先生、もしくはお近くの小児アレルギーの専門医にご相談下さい。

ちなみに、成人の「卵黄」に対する食物アレルギーにおいては、「Bird-egg症候群」と呼ばれる異なるアレルギーもあります。「卵黄」、特に「生卵や不十分な加熱の卵黄」で症状が出やすいです。たまに鶏肉でも症状が出る方が居ます。鳥の飼育歴があることが多く、 「セキセインコ」の報告が多く、その他、カナリヤ、オウム、インコ、 ハト、ニワトリなどの報告があります。

「鳥の羽毛や糞などに含まれるタンパク質」に感作され(気道からの感作と考えられている)、そのタンパク質に似ている「卵黄」のタンパク質にも勘違いして反応(交差反応)して、アレルギー症状を起こすというメカニズムと考えられております。

また、通常の鶏卵アレルギー、卵白のアレルギーについては、こちらもの参考にしてください↓


【参考】Bird-egg症候群,アレルギー学会誌 2021.70巻8号 ,980-981
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/70/8/70_980/_pdf

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