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書物の転形期:和本から洋装本へ

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このエッセイでは日本で洋装本が登場してから定着するまでの時期、すなわち十九世紀後半から二十世紀初頭までを対象として、書物の技術と当時の新聞広告や目録の記述などとを照らし合わせつつ…
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2022年2月の記事一覧

書物の転形期16 パターソンの洋式製本伝習1:居留地の製本師1

香港の洋式製本師 1872年9月20日、印書局が設立された。現在の国立印刷局のルーツの一つである。そして翌1873年5月29日に英領カナダ人W. F. パターソンが製本師として雇用された。  前章で述べたように、居留地ではすでに洋式製本が行われていた。印書局がそれらの工房や製本師に頼らなかった理由については後に検討するとして、まずは当時の居留地における製本師事情を確認しておきたい。  1840年代に開港した中国には日本より一足早く洋式製本術が伝播していた。居留地や租界の製