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さくら餅と、桜酒… 96/100

あー 今年も咲いたな…

もう、どれだけ、
こうして花見をしてるんだろ

毎年、この桜を観ながら
さくら餅を食べるのが
私の楽しみだ

やっぱり、粒あんが旨いな…

そして、日本酒に
桜の花びらを浮かべた、桜酒🌸

普段は、日本酒なんて呑まないのに
なぜか、この時は
桜酒を呑む…

いや、呑まなくては、ならない


『毎年、すまないな…』

いや、いいんだよ、
一年に一度くらい…

『本当は、おまえ、呑めないのだろ?』

あ、ああ、まあね
あんたのためなら
多少はね…


私の中に
いつの間にか棲みついた、男

姿は見えないが
桜の咲く、この季節だけ
声が聴こえてくる

ねぇ
結局さ
どうして、さくら餅と桜酒なの?
あんたは…
甘いもの、好きじゃないような気がするんだ

『…わかるか』


うん、なんとなく…

『妻が…好きだったんだ
 毎年、この桜を観ながら
 さくら餅を食べるのを
 楽しみにしていた…』

あぁ、なるほどね

あんたは、
その隣で
桜酒を呑むのが…

好きだったんだね


『ありがとう…
 妻もきっと、喜んでいるよ』

良かった…
私に出来るのは
これくらいしかないからね

なぜこの男が
私の中に住み着いたかは謎だけど…

とりあえず
妻思いの、いい夫なのは素晴らしい

こんなことで、彼が喜ぶなら
協力してあげよう

庭の満開の桜を観ながら、
私は今年も、
さくら餅を食べながら桜酒を呑む

乾杯!

『乾杯』

いつか…
私がそっちに行ったら

花見しながら
一緒に桜酒で乾杯しようね

あんたがイイ男だったら、
惚れちゃうかもしれないけど

それまでは、
こうして毎年、

一人で
花見、するからさ…








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