客単価1500円の居酒屋が4000円超に変わるまで
今回は改善の秘策『大阪の笑い』を如何に利用したのかをご紹介します。
場所は横浜市東神奈川。お好み焼きの「おおきに」さんです。
「改善のポイントは、大阪のお笑い ですね」
「大阪の笑いって、具体的にいうと?」
「外観はこってこての大阪のお好み焼きでっせーって感じにします」
「でっせー、ですか」
「メニュー名も大げさにして全て値段を明記して、外壁に並べましょう」
「値段が解れば入りやすい」
「赤い暖簾にスタイリッシュなロゴを入れて人目を引きましょう」
「ロゴを使うんですね」
「例えば、大阪のシンボル通天閣の守護神『ビリケン』さんを店内に飾って、お賽銭箱を置きます」
「足の裏をさすると御利益があるってやつですよね」
「ご主人は大阪に行って、ハリセンやタイガースグッズなど、関東人に解りやすい小物を仕入れてください」
「え?関東人に解りやすい大阪の?」
「そうです。大阪人の作るお店じゃなく、関東人がもつ大阪の偏見を含て、関東人が解りやすい「こってこてのイメージ」を展開するんです」
「おお、関東人は面白ろがりますね」
「壁にメニューも貼ります。説明は大阪弁です。イラストも入れたりします。メニューだけじゃなく、大阪弁で書いた笑える格言も貼りましょう」
「なんか、ワクワクしてきました。お客さんが笑う顔が浮かびます」
「奥の座敷の壁には笑っちゃう写真を加工して飾りましょう」
「やりすぎて大阪の人に怒られませんかねぇ」
「いえいえ、大阪の人が呆れるくらい遠慮なくいじり倒しましょう。来られるお客様は関東人なんですから」
「そうですね。遠慮してつまらないものより、徹底して楽しいほうがお客さんもうれしいですよね」
「関東に関東なりの大阪を作るんです。このお店オリジナルの関東人に解りやすい大阪です」
「期待します」
「こりゃすごいですね。相田みつおのパロディですか」
「このての筆字は何か為になることを書いてるだろうなと思いますが、大阪のイメージで、とことんボケるがコンセプトです。このパターンをあちこちの壁に貼って、気に入ったお客さんは、他のも見たいので、また来て違うテーブルに座るんです。料理が美味しいからこそ、出来る付加価値のプラスです」
「なるほど。わかりました。この線で大阪グッズを買い集めて来ます」
「笑いは付加価値の一つです。ほかに縁起・学びなどがあります」
「為になります」
「小物も揃えたし、筆書きも楽しいものが目を引くし、これでお客さん増えそうですね」
「そうですね。ですが、魅力はお笑いだけじゃありません。やるべきことはあと二つ」
「こんなに魅力的なのに?まだやることあるんですか」
「お客さんをシフトします。安い店を利用する人から価値の解る人へのシフトです」
「とうとうやるんですね」
「狙う人はお小遣い制では無い人。管理職なら部下を伴って来てくれます。独身の人もある程度余裕があります」
「毎日来て長居する単価の安い固定のお客さんから、気軽に楽しんでくれる流動的なお客さんに移行するってことなんですね」
「そのためにはお客さんの人数を増やさないといけません。月に数回来てくれる高単価のお客さんの層を増やすんです。そのためには宣伝が必要です。このお店があるのは、人の流れがある通りから50M離れたビルの中ですから」
「JRと京急の駅に挟まれて人通りが多くて良い立地だと思いますよ」
「ですが、こんなに面白い場所だって知っている人は歩く人の3%もいません」
「まぁ、そうですね」
「だから、何らかの認知行動を起こさないと、せっかくの魅力が広まりません」
「そうか、いくら良いものを作っても、知られなければ無いも同じってこと…ですよね。手段は?」
「チラシ撒きって最近難しいので、有料ですが駅貼りポスターやパンフレット置きを利用しましょう」
「5時から6時まで、ビール半額タイムも設けます」
「さぁ、これで新しいお客さんが入る仕掛けが出来ました。では最後の仕上げ」
「最後の仕上げ?」
「この店で一番の特等席は料理の工程を見ることができるカウンター席です。このカウンターの付加価値を最大に引き出します」
「一番安いお客さんが座っていたカウンターを?」
「そうです。お寺でいえばご本尊、神社でいえば本殿のような位置付けにします」
「なるほど」
「そして、最後にお客様に対する『感謝の気持ち』を掲げます。その言葉をスタッフの皆さんで共有してください」
「ふんふん。おおきにって笑顔で言うねんで。お客さんにきっとエエことありますようにって言うねんで。戎さんにお参りするような気持で言うねんで…。心します」
写真資料
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