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笹井宏之賞落選展 青塚なやむ

それはラムネ色 青塚なやむ

天の川模したゼリーを掬うたびへなへろになる紙のスプーン

郵便のマークにさっと描き足して笑顔になる はじめての魔法

金色の満ちて蛹のはちきれそう昆虫館の裏に控えて

踊り場に差し込むひかりメトロノームをメトロって呼ぶ吹奏楽部

ホルン吹く吹き出し口に手を入れる ごめんそんなことも知らなくて

リトマス紙みたいに青いポロシャツでフラスコに花生けて暮らそう

生理って気づかないからお湯はりが終わったときの曲で教えて

見学のプールサイドで知りあって日焼け止め倒れて笑いあう

額縁に鉋をかけてキャンバスに儒艮を生んだ彼女が部長

自画像の首の影にはむらさきをかさねカルキのにおいたつ髪

アトリエの二階開放されていてエアコンに飛び散ってる絵の具

夕焼けが近づいてくる古着屋のキャンディマシン現役でいて

提供もエンドクレジットも見たい衣裳協力原宿シカゴ

ボランティアして飲みものを永久にもらえるシステムに生かされる

グリーンのフェンスの菱形をぬけて飛び立つ渡り鳥じゃなくても

オンラインライブの床にみえそうにみえないように曲の一覧

邦画には字幕のつかぬこと多くバイクの音がかき消す台詞

レタースケール内勤にもう飽きていてこの封筒は小鳥の重さ

アニメ化と文字の大きく雨に濡れ漫画雑誌は小さな地層

マグカップをペン立てにしてカッターと秋の陽の立つデザイン事務所

モンブラン選る指揮者への差し入れに鷹か鳶かなにかが空へ

皿で切る右手そのあと左手で食べたアップルパイ、忘れない

コピーしたばかりの紙があたたかいようにあなたの最期の温度

梨剝いて姫フォークも出してくれるそのやさしさを継承するよ

有休はじゃあなと言わず消えてゆく助けたかったひともたくさん

つんと鼻の奥の痛みにちょっと泣く 冬の空気とフルーツサンド

ボウリング終えて降りつづいて時雨い・ろ・は・すのもも飲みつつ駅へ

校門のまえに聖書の配られて朝の読書のそれぞれの手に

クリスマス自分のものでない針を刺されはりねずみのピンクッション

スカートの裏地もちゃんとつくるから帰ってきたら採寸させて

頼りなく軽くニードルスレイダーその横顔に海をみせたい

たい焼きの羽根で飛べない僕たちは鴨川沿いを歩いてゆける

このひとは信頼できる期待してバニラエッセンスを舐めたひと

窓際にミモザとリサとガスパール 歯医者でスリッパに履き替える

きみの書く癖の数字が歌いだすノートぱららと風が吹いたら

ミジンコを拡大コピーしたような浜に干あがる修正テープ

まっしろな文鳥きっとつらなった六角形の陽射しのにおい

雨のあと貼りつく桜ひとひらを剝がさぬように自転車を漕ぐ

食パンをシンクで食べる蜂蜜はのせたそばから滴る光

子の傘はボタンひとつでひらかれて親子そろって水玉を着る

Tシャツの刺繍の糸のぴょんと出てキウイフルーツ買いにいこうか

エコバッグにスマホと財布だけ入れる 知ってた?あめんぼが飛ぶことを

居酒屋は睫毛の影が濃くみえる梅酒ロックじゃなくバラードで

一万円札を逆さまに飾るバックヤードに枯れる胡蝶蘭

雨樋が余って流し素麺の竹の代わりに 楽しき大人

床で食べるピザはおいしい水道屋の磁石の並んでる冷蔵庫

CDを持ってる曲がラジオから聴こえ、こういうよろこびでいい

冷房を朝までつける贅沢はホテルに泊まるときに叶える

海の日に水入れ換えていきいきとアベニーパファーのうるるとさらら

透きとおる血管それはラムネ色きみの手首を摑んで守る


笹井宏之賞に応募した50首を公開することにしました。

5月から応募作を創りはじめて、7月に応募しました。

俳句とは違うことができて大きな可能性を感じた2ヶ月間でした。

短歌はまだよくわからなくて、はじめて連作を創って少しわかったような気がしたけど、やっぱり遠くて難しいなと思います。

ちなみにペンネームの青塚なやむという名前で応募しています。愛知県にある木田駅の次の駅名の青塚、ともみを五十音で一文字ずつずらして、なやむが由来です。

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