羽黒山磨崖仏~霊山の麓の十三仏~
前回の和田大仏に続き、今回も福島県の磨崖仏を紹介したい。
福島県岩瀬郡天栄村に、羽黒山磨崖仏はぐろやままがいぶつがある。羽黒山の名が示すとおり、山頂に羽黒山の分社を祀る古くは山伏の祈祷場で、里人から神聖な山として崇められていたという。また、この羽黒山は歌舞伎の「娘道成寺」に登場する僧・安珍が修行した山と伝わる。
磨崖仏はお墓の一角にあるため、拝観の際は墓地であることをわきまえた節度ある行動をお願いしたい。
駐車場はないため、墓地の前に車を停め参拝した。Googleマップ上では山中に表示されているが、実際は墓地のなかにある。墓地の前には見事な石塔がある。
磨崖仏へは案内板の後ろの石段を登っていく。
羽黒山磨崖仏は、13体の仏像が横に並んで浮き彫りにされている。この十三仏は江戸時代に曹洞宗の高山寺と大方寺の檀家が、合同で先祖代々の追善供養を行い彫刻したもので、磨崖仏の横と下部分に95人の檀家の名が刻まれている。
十三仏とは、室町時代になってから日本で考えられた冥界の審理に関わる13の仏のことで、13回の追善供養(初七日〜三十三回忌)をそれぞれ司る仏でもある。羽黒山磨崖仏には、初七日の不動明王から33回忌の虚空蔵菩薩までが刻まれている。
50㎝程度の浮き彫りになった石仏で、大変素朴な味わいの石仏である。
また、この磨崖仏と一緒に元禄11(1698)年銘がある五輪塔の磨崖が2基刻まれている。
この磨崖仏が彫られている自然石には、ほぞ穴や溝跡が残されており、以前は彫刻の摩滅を防ぐために覆いが取り付けられていたと考えられる。
【所在地】福島県岩瀬郡天栄村大里神ノ前80-1
【駐車場】なし(お墓入口に停める)