家系にまつわる言い伝え

祖父から聞いた話。

私が小さい頃から、祖父は我が家に関する色々なことを話してくれた。

その中でも、自分の家にまつわる話で口癖のように祖父が話してくれるのが、「家系は江戸時代の飢饉で何度か途絶えそうになったことがあり、その度に遠い親戚、あるいは山伏として修行に出ていてたまたま無事だった人が戻ってきて、家を繋げてきた」という話。

この言い伝えの真偽の程は不明だったが、祖父も幼少の頃に高祖父から教えてもらったとのこと。

こういった具合に、幼少の頃から祖父に自分の家のことを聞かされ続けた結果、いつしか自分のルーツに興味を抱くようになった。

大学生になり、自分のルーツを調べてみようと思い立ち、役所から戸籍を取り寄せたり、本家にある墓石を調べたり、郷土史を読み込んだりした。

ルーツを調べていく中で、どう考えても系図が繋がらず、ここで途絶えかけてるよな…という時代が2ヶ所くらいでてきて、祖父の話してくれたことと繋がった。

その時代はどちらも飢饉でたくさんの死者が出たときだった。

祖父が聞かせてくれた言い伝えと合致した瞬間、全身に鳥肌が立つと同時に、自分が今ここに存在するのは、そうした時代を乗り越えて必死に家系を繋げてきた先祖がいたからだと改めて実感した。

顔も名前も知らない、戒名だけが伝わるような遠い先祖を、身近に感じたときの話。

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