学校休んだら数学全然わからんくなった

学校を休んだら数学が全然わからんくなっていた。期末テストの数学の点数が悪かったので、夏休みに補修を受けることになってしまったので、野球部の夏合宿に皆と同じタイミングで行く事ができず、僕1人だけ学校で補修を受け終わってからバスで乗り継ぎながら十津川にある高校に行く事になった。

補修を受ける生徒は僕含めて数人しかおらず、その数人の中には遊びでバンドを一緒に組んでいた千葉君もいた。バンドで僕はボーカルをやっていて、自作の歌詞を書いて一度だけライブをやった「パッションフルーツボーイズ」という名前で、ビースティーボーイズをもじってつけた名前のつもりだったのですが銀杏ボーイズをもじってつけたんやね、というようなことを音楽練習のスタジオのおじさんに言われて、盲点!恥ずかしい!て思った記憶があります。銀杏ボーイズのコピーバンドをやるのかなとか思われるのも恥ずかく思ってたんですが、そんな事は自分しか気にしておらず、むしろオリジナルの作詞、オリジナルで千葉君に作曲してもらい「壁の中の目が俺を見る」という風な歌詞とセリフ調の歌詞が続いているような、筋肉少女帯に影響を受けたのがすぐにわかる歌詞を歌う方が恥ずかしいかと思う、それとは別に「ハンカチ」を「ハンケチ」と書いた歌詞を同級生の清水という女子に拾われ、返してもらえずジロジロと見て音読された後「筋肉少女帯好きやねんな」と言われたのも恥ずかしかった。筋肉少女帯大好き高校生だった僕は、筋肉少女帯が好きということを他人から見抜かれる事が何よりも恥ずかしかったんです。

補修終わり、千葉君と喋りながら「ほんなら俺これから十津川行くわ」と言って疲れてる風に別れた。なぜかそこに少し優越感があった。千葉君は部活をやっていなかったのですが、僕は部活をやっていて何かに属している、それに従わなければいけない、みたいな事に何か大人の雰囲気を感じ、気持ちの良さを感じていたように思う。浅はかな感覚。僕の学校のあった奈良市、から十津川村に行く、というのははっきりと言ってかなり遠い。今調べてみると、まず電車で奈良から五条という駅まで1時間30分ほど乗る。五条からバスに乗るのですが、これが2時間40分乗らなければいけない。このバスがめちゃめちゃ長い。途中67回停まる。これをずっと揺られながら最終的には目的の十津川村につくのですが、このバスの車内が今思うと、高校時代過ごした時間の中でもかなり上位に入るほど楽しかった。バスに2時間40分揺られながら、ぼんやりと将来のことについて考えたりしていた。小説家になると思ってた。

そうして十津川につき、山の中にある十津川高校との合同練習が終わり、その日は貸切の民宿に泊まった。貸切といっても部員全員で12人くらいで、小さな民宿だったけどめちゃめちゃ楽しかった。夜はぼたん鍋を食べた。部活動を通して、僕はゆるやかにおかしくなっていた。チームで練習して、みんなで合宿に行って、個人というより全体で動いている、俺は一つの集団の中の生き物という感覚が気持ちよかった。集団で食べるぼたん鍋のあまりの一体感に、泣きそうになっていた。普段練習などはサボったりしていたのに、感動を貪り食っている太った高校生だった。その日の夜、僕だけが監督の部屋で夏休みの宿題をやり終えるのをずっと見てもらった後、皆が寝てる中、起きて待ってくれていたすみかわくんと布団の中で携帯のワンセグでマヨブラジオをこっそり観ている時に、これは、最高の思い出になる、と現在体験中にも関わらず確信していた!

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