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月間韓国音楽(仮) 2308 各曲の紹介-1/2

韓国での会社員生活を始めて以来なかなか”続ける”ことが苦手になってしまったのですが、2020年~2021年10月まで2週単位でアップデートを続けていた”Korean Indie Discovery”という50曲~70曲くらいのプレイリストがありました。その時は自分が伝えるべきジャンルを”インディ”という言葉で括って、新曲群を常に紹介していたのですが、再びそれに近いプレイリストを、月単位で始めたいと思います。

今回もK-POP以外の韓国大衆音楽のかっこいい新曲たちが中心になると思いますが(とはいえ制限は設けていないのでK-POPは時々入ると思います)、始める理由は単純です。(1) K-POP以外のジャンルがやはりまだK-POPほど情報が多いとは言えないこと、(2) なんとなくそのアーティストを知っている人でも韓国語ということで、そのアーティストや曲についての情報に接することにどうしてもハードルが生じてしまうから。後者に関しては曲の背景や、アーティストの韓国でのポジションなどの情報、関連リンクがあるだけでも、韓国音楽シーンについて見える景色がずっと変わっていくと思うのです。

毎月40曲前後をプレイリストにして、次回以降は50%~60%くらいを新曲に入れ替えて更新したいと思います。Spotifyのプレイリストにしていますので、是非こちらを聴きながら、読んでいただければと思います。紹介文は雑誌や新聞のディスク紹介の原稿のような構成で簡単にのみ、作っています。

今回は8月21日現在を基準に、かっこいいと思えた新曲たち、韓国では名のあるアーティストたちの新曲を紹介していきます。今回に限り全部新曲になってしまって、紹介文を書くのが大変なので、記事は2回に分けて、21曲ずつアップします。4つにチャプターを分けています。


韓国インディで今一番ホットな存在=Silica Gel、Se So Neonがカムバック!

1/40 Silica Gel 
2/40 Se So Neon

(1)Silica Gelは2015年にデビューした4人組オルタナティブ・ロック・バンド(デビュー当時は7人)。その独特の音楽性、ヴィジュアルやファッションも巻き込んだ活動スタイルでインディ・シーンや評論家たちからは熱狂的な支持を得ていましたが(彼らのファンダムの名前は”自警団”といいます)、昨年夏のシングル「No Pain」をきっかけに一気にブレイク。現在は2500人キャパのライブハウスさえ即完させるほどで、韓国全体を見てもいま一番勢いのあるバンドです。
この新曲は春に発表されたEP『Machine Boy』の延長上にあるコンセプト。3曲入りシングルのタイトル曲で、一曲目”T”は『Machine Boy』にも収録されています。Se So Neonキャリアのかなり初期から親交のあるファン・ソユンとついに共演。タイミングはSilica Gelの人気拡大の勢いが留まるところを知らないいまだからこそ完璧ではないでしょうか!ただ私的にはこの曲のポイントは、以前彼らにインタビューしたときに、彼らのディスコグラフィにはなかったファンキーで柔らかいサウンド、そしてジミー・ペイジみたいに見せたいと言っていたギタリスト、キム・チュンチュによる後半のギターソロ。彼はいまや韓国インディを代表するギタリストの一人ですが、”Desert Eagle”のソロ、”No Pain”のギター・リフといい、韓国のギターキッズに影響大なのでは?とさえ思えるのです。Silica Gelについては過去のインタビュー記事や私もたくさんライブ映像をTweetしたりしているのでそちらも是非。

「ずっとおかしなやつらでいたい」“オルタナティブ”を提示するバンド、シリカ・ゲルが語る活動再開後の新曲と韓国インディ・シーン | TURN (turntokyo.com)

(2)この夏の韓国最大のロック・フェス、Incheon Pentaport Rock Festivalではヘッドライナー前のスロットで充実のパフォーマンスを繰り広げるなど、ジャンルを超えて支持を拡げ続けているバンド、Se So Neonはなんと新曲が1年半ぶり。この曲から”Pirate Project”というプロジェクトを始めましたが、それに相応しい出航の不安と希望が行き来する歌詞とサウンドになっています。壮大なムードの曲ですが、先ほどのSilica Gelのキム・ハンジュが作曲・編曲をともに行っています。ちなみにハンジュはデビューEP『여름깃 (Summer Plumage)』の時から編曲のサポートを共にしている仲です。
MVは昨年サマーソニックで来日した際に横浜で撮影されています。日本の堀田英仁監督が手掛けていますが、その背景はKstyleに紹介されていました。今年のSe Seo Neonの韓国での単独公演でもゲスト出演するなど、こちらもマネージメント通して交流のあるAwichがきっかけになっているようです。長らく制作中のフルアルバムは現在のところ2024年中発表予定とのこと。またSe So Neonは11月にも再び来日公演の予定がありますね。

3/40 Tuesday Beach Club "Lean"

(3)このTuesday Beach Clubと言うバンドは、学生時代からの友人たちで結成され、昨年初めのデビュー・シングル以来急速にインディシーンの中で人気を得ているバンドの1組で、昨年は韓国でも多数の新人特集記事やEBS・スペース共感の”ハロールーキー”決戦進出など注目を浴びていました。バンド名の通り、週末の騒がしい雰囲気ではなく、静かなちょっともの寂しい海辺の雰囲気に合ったサウンドが特徴のバンドでしたが、この曲では力のこもった壮大なものにスケールアップ、”次”を見せてくれています。曲調が変わっても、メロディ・ライン、独特の淡い音色の表現などこのバンドらしい美しい世界観は相変わらず!ちなみにドラムのペ・ドヒョプはTuesday Beach Club以外にも多数のHANRORO、Shin Youmeなどアーティストのセッション・ドラマーとしても活躍中。

4/40 TOMYO ”Sshootamoviewithu”
5/40 
Offing ”Titled”
6/40 
verycoybunny ”I Think I Like You”

(4)TOMYO(トミヨと読ませています)、(5)verycoybunny、(6)Offing(オフィン)まで海外のインディ・ロック・シーンとの共振を強く感じさせるサウンドの3組。Offingは以前一度、The Volunteersのオープニングで見れました。

7/40 Budung ”happybirthdaytoyou!”

(7)センチメンタルなメロディ・ライン、悲しみを抱えながら強く進もうというボーカルでインディ・シーンで強い支持を得ているシンガーソングライター、Budungのバースデイ・シングル。Budung史上最高に爽快なロック・ソングにびっくりです。何度か彼女のライブを見ているのでリンクを貼っておきます(Tweet)。またこちらは私の最愛の曲"All My Sadness 나의 모든 슬픔이 私のすべての悲しみが"の歌詞・日本語訳です。

8/40 Park Soeun 박소은 パク・ソウン"2017"
9/40 
Kisnue "Days of Dreaming"

”釜山インディ”のアイコンたちのリリース・ラッシュ

10/40 Bosudongcooler ”Betty”
11/40 
hathaw9y ”1392010”
12/40 Say Sue Me ”Mind is Light”

ここからは近年注目度の高い釜山インディの3組。(10)まずは近年Big ThiefやFeistからの影響を公言していた作品群が素晴らしかったボスドンクーラー。ただ、この新曲は打って変わって、ギタリストのグ・スルハンがボーカルを担当をリードする、爽やかなチューンに。(11)続いてメンバーもファン層も若々しい3人組hathaw9y(ハサウェイ)のフルアルバムからタイトル曲を、(12)もはや貫禄のあるセイスーミー。このバンドの新曲には余裕すら感じられました。
この3組に加えて、ポストパンク・バンド、Soumbalgwang、ブリティッシュなLeaves BlackWe're Kitae元Soumbalgwangのベーシスト、ギテが率いる)、Say Sue MeのベースがリーダーをつとめるYajasuらまで2021年ごろから釜山インディに注目が集まっています。Say Sue Meへの昨年のインタビューでもそういう話になりましたが、釜山インディはいずれもソウルの流行からは離れて、独自に海外のインディ・シーンを巧みに昇華しているのが特徴。SoumbalgwangとBosudongcoolerの傑作アルバムがどちらも2021年末に出たときに確信がついたので、記事にしたかったのですがね。。。

世界から注目を浴びるワンマン・シューゲイズ・バンドたち

13/40 Brokenteeh "초록달 (once in a green moon)"
14/40 
nokjo "초록달 (once in a green room)"
15/40 Wapddi "나는 아직도 갇혀있다! 僕はまだ閉じ込められている!"

(13)(14)日本にもファンが多いワンマン・シューゲイズ・バンド、Parannnoul。実は彼の周りには同じように、”ライブハウスでファンたちに演奏を見せるよりも、部屋の片隅で黙々と曲を作っている”というイメージのワンマン・ミュージシャンが何組かいるのですが、その代表格の一人が同じくシューゲイズ・アーティスト、99年生まれキム・ミンハのソロ・プロジェクト、Brokenteeth。彼もまたRYMのようなインターネットのコミュニティで圧倒的な評価を得ています。この曲は年始に発表されたアルバム『추락은 천천히 How to Sink Slowly』(Parannoulの新作と並べて聴いてほしい快作!)に収録予定だったというインスト曲。その曲をBrokenteethと一緒に最近は대림여인숙 Daerim Yeoinsook (ソウルの南西部、大林・デリムという街があるのですが、そこの旅人宿という意味になりますが、ちなみに旅人宿というのは韓国の宿泊施設の中では最低級)というクルー?を組んでいるアーティスト、nokjoが一緒に完成させたらしいです。次の同名曲もそのnokjo名義で、こちらはnokjoのボーカルが入っていて、逆にBrokenteethが編曲を一緒にしてあげた形。ともかくこの2人は盟友です。

(15)
続いてのWapddiもまた一人ハードコア/シューゲイズ・ミュージシャンの一人。彼もまた作曲から録音まで全てこなしています。この「私はいまも閉じ込められている!」を収録したEPの紹介文に「こういう話は会話のテーマで持ち出すと、人がきまり悪く思うだろうから、歌にして目立たないように歌いました。幼い頃の記憶にいまも追い回されて苦しみながら生きている人々を応援します」とあるように、どこか絶望で溢れながらも、同じ境遇にいる人たちを奮い立たせようというエネルギーがあります。

ちなみにParannnoulから、Brokenteeth、Wapddiに加え、Asian Glow、Della Zyr、Fin Fiorまで含めたワンマン・ミュージシャンたちは2022年8月にDIGITAL DAWNというライブ企画で結集しており、それ以降少しずつオフラインでの活動も増えている印象。ParannnoulやBrokenteethなどグローバルなインターネット音楽ファン・コミュニティから逆輸入され、韓国インディ・シーンで発見されたこの辺りのバンドのライブには、インターネット・コミュニティに潜んでいたリスナーたちが一堂に会したという、独特の雰囲気があります(昔のマルチネ・レコーズのパーティにこういう空気感があったのかな?と思ったりしました)。

韓国ロックを代表するベテランから、新人までその他注目すべきロック新曲群

16/40 Dabda "Flower Tail"
17/40 
Debtors "Why Am I(2023)"
18/40 
Yoon DoHyun 윤도현 "착한 사람 컴플렉스 Good Person Complex"
19/40 Nell "Wanderer"
20/40 87dance "Blue Tokyo 青色東京"
21/40 
Gongchoongeuneul(ゴンチュングヌル) "Bird"

(16) Dabda(ダブダ)は韓国のポストロック/マスロック・シーンの最前線にいるバンド。こちらは新作EP『Yonder』からのタイトル曲(Indienativeでかなりしっかりとした新作紹介の記事がありました)。ライブ活動が活発で、遂に本人たちも実現を願っていた来日公演が実現です。(17)Debtors 채무자들はつい最近、hyukohやチャン・ギハらが所属するレーベル、<DooRooDooRoo Artist Company>と契約したことで注目を浴びている新人バンド。(18)(19)世代を超えて大衆的な知名度を誇り、自身のバンド、YB(ユン・ドヒョン・バンド)もお馴染みのるユン・ドヒョンの新曲、韓国ではいまだにフェスティバルのヘッドライナーの常連、Nellの新曲をそれぞれ。

(20)先月、東京での来日公演も行っていたバンド、87dance(パルチルダンス)の新曲。渋谷のCIRCUSで行われたそのライブの模様や渋谷の街並みで撮影した映像も早速MVに使われています。曲名にも合った爽快で、ファンキーなサマーソング。87danceは1月に発表したアルバム『COLOR PAPER HOTEL』も素晴らしかったので是非。(21)そして、直訳すると、空中影、Gongchoongeuneul(ゴンチュングヌル)の新EPからタイトル曲です。Gongchoonggeuneulは以前、TURNの記事で照会したことがあるので、こちらも確認ください!

ヒップホップ・R&B、ポップ、エレクトロ、フォークなどジャンルが広がる22~42曲目の紹介はこちら。


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